ベリーベスト法律事務所

労災認定されなかった・労災申請をしていない方

時効等に注意して申請しましょう
― 各種労災給付について ―

疑問

労災申請をしたものの労働基準監督署に労災認定がされなかった場合には、労災認定を諦めるしかないのでしょうか。また、労災申請をまだしていない方が注意するべき点はどこでしょうか。

このページでは、労災認定がされなかった場合の対応方法や労災申請をしていない方が注意すべき点について解説をしたいと思います。

労災認定されなかった場合の対応方法

認定されなかった

労災申請をしたものの労災認定がされず、結果に不服がある場合には、労働基準監督署の決定に対して不服申立てを行うことができます。具体的な不服申立手続は、以下のとおりです。

審査請求-労働基準監督署長の決定に不服がある場合-

処分を知った日の翌日から3ヶ月以内(平成28年3月31日以前に通知を受け取った場合は60日以内)に労働者災害補償保険審査官(以下「審査官」といいます)に対して審査請求を行うことができます。

審査請求をした日から3ヶ月を経過しても決定がないときは、労働保険審査会に再審査請求が可能です。

→審査官は、原処分を取り消す決定(不服が認められた場合)または審査請求を棄却する決定をします。

審査官の決定に不服がある場合

審査官が審査請求に対する結論として作成した決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2ヶ月以内(平成28年3月31日以前に通知を受け取った場合は60日以内)にする労働保険審査会(以下「審査会」といいます)に対して再審査請求を行うことができます。

再審査請求をした日から3ヶ月を経過しても裁決がないとき、著しい損害を避けるため緊急の必要があるときなど正当な理由があるときは、原処分の取消訴訟の提起が可能です。

→審査会は、原処分を取り消す裁決(不服が認められた場合)または再審査請求を棄却する裁決をします。

審査会の裁決に不服がある場合

裁決があったことを知った日から6ヶ月以内に、地方裁判所に対し、原処分の取消訴訟又は裁決の取消訴訟を提起することもできます。

労災申請をしていない場合の注意点

仕事や通勤が原因で負傷した場合や亡くなられてしまったときであっても、労働者やその遺族の方が長期間労災申請をしていないと、時効により労災保険の給付が受けられないことがあります。時効については、各給付ごとに以下のように定められています。

①療養(補償)給付

労災

「療養の給付」とは、労災病院や指定医療機関・薬局等(以下「指定医療機関等」といいます)で、無料で治療や薬剤の支給を受けることをいいます。

この「療養の給付」は、指定医療機関等に直接支払われる現物給付であることから、請求権の時効はあまり問題となりません。

他方で、「療養の費用の支給」というものがあります。「療養の費用の支給」とは、指定医療機関等以外の医療機関で療養を受けた場合に、その療養にかかった費用の支給を受けることをいいます(要するに、一度自分で治療費を立て替えて、後で労災保険から立替分を受給する場合です)。この「療養の費用の支給」に関する請求権は、費用の支出が確定した日の翌日から2年を経過すると、時効により請求権が消滅してしまいます。

②休業(補償)給付

休業(補償)給付は、療養のために労働することができないために賃金を受けない日ごとに請求権が発生します。その翌日から2年を経過すると、時効により請求権が消滅してしまいます。

③障害(補償)給付

障害(補償)給付は、傷病が治った日の翌日から5年を経過すると、時効により請求権が消滅してしまいます。なお、「傷病が治った」とは、ケガが完全に治った状態のみを指すのではなく、「傷病の状態が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態(いわゆる「症状固定」)」も指しますので、注意が必要です。

④遺族(補償)給付

遺族(補償)給付は、被災労働者が亡くなった日の翌日から5年を経過すると、時効により請求権が消滅してしまいます。

⑤葬祭料(葬祭給付)

葬祭料(葬祭給付)は、被災労働者が亡くなった日の翌日から2年を経過すると、時効により請求権が消滅してしまいます。

⑥介護(補償)給付

介護(補償)給付は、介護を受けた日の翌月の1日から2年を経過すると、時効により請求権が消滅してしまいます。

⑦二次健康診断等給付

二次健康診断等給付の請求は、一次健康診断の受診日から3ヶ月以内に行う必要があります。ただし、次のようなやむを得ない事情がある場合には、3ヶ月を過ぎてからの請求も認められます。

  1. 天災地変により請求を行うことができない場合
  2. 一次健康診断を行った医療機関の都合などにより、一次健康診断の結果の通知が著しく遅れたとき

なお、二次健康診断等給付においても、上記の期間制限とは別に時効も問題となります。一次健康診断の結果を知り得る日の翌日から2年を経過すると、時効により請求権が消滅してしまいます。

まとめ

電話

労災認定がされなかった場合の対応方法や労災申請をしていない方が注意すべき点について解説をしました。

審査請求や各種労災給付の請求には期間制限や時効等の問題があります。労災認定の結果に不満がある方や労災給付の請求をしていない方は、これらの点に注意して、できる限り早期に対応するようにしてください。

なお、具体的な対応方法については、労働基準監督署の窓口に相談してみてください。書類の記入の仕方や、どのような添付書類を用意すればいいかなど、丁寧に教えてくれるはずです。

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