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給付内容と申請方法を確認しましょう
― 得られる補償給付と加害者への損害賠償請求について ―
労働災害(労災)に遭い、労災保険制度を利用する場合、それぞれの給付に対応した書面を作成し(書式は、労働基準監督署や厚生労働省ホームページで入手できます)、資料とともに所轄の労働基準監督署に提出して、判断を待つことになります。
ここでは、労災保険を使用して治療を続けている方に向けて、治療を終えた後にどうしていくべきかについてご案内します。
治療を尽くしても完治しなかった場合
傷病が発生した後は、基本的には完治するまで治療を続けていくことになりますが、必ずしもすべての傷病が完治するわけではありません。そして、傷病の内容や重さにもよりますが、たとえ完治していなかったとしても、数年以内には治療が一区切りとなる(労災保険が治療費を負担してくれなくなる)ケースがほとんどです。
この段階で症状が残っていても、それ以上は、療養補償給付を受けることができません。そこで、下記のような給付を請求していくことになります。
1. 障害補償給付
治療を尽くしたにもかかわらず特定の症状が残ってしまった場合には、「後遺障害」と認定され、別途、給付を受けられる可能性があります。
治療が一区切りになった(診断書に「症状固定」「治癒」などと記載されます)と判断された翌日から5年以内に、医師の作成した診断書とともに、「障害(補償)給付支給請求書 障害特別支給金 障害特別年金 障害特別一時金 支給申請書 業務災害用(様式第10号)/通勤災害用(様式第16号の7)」を所轄の労働基準監督署に提出してください。
なお、使用者などの不法行為責任を追及して慰謝料等も請求していく場合には、上記5年よりも前に時効が成立してしまう可能性があります。そのため、治療が一区切りとなったら、なるべく早期に書面を提出しておく必要があります。
2. 介護保障給付
また、残ってしまった症状が重く、介護が必要になってしまう方もいます。
具体的には、下記を要件として、介護費用についても給付を受けることができます。
- 障害(補償)年金または傷病(補償)年金の第1級または第2級で高次脳機能障害、身体性機能障害などの障害を残し、常時あるいは随時介護を要する状態にあること
- 民間の有料介護サービスや親族等から現に介護を受けていること
- 病院等に入院していないこと
- 介護老人保健施設などに入院していないこと
要件に該当する場合は、介護を受けた月の翌月の1日から2年以内に、「介護補償給付・介護給付支給請求書(様式第16号2の2)」、「介護に要した費用の額の証明書」、「診断書」をそれぞれ所轄の労働基準監督署に提出してください。一度提出すれば終わりではなく請求は毎月行うことが原則ですが、3ヶ月分までまとめて請求することができます。
3. 傷病(補償)年金
労働災害によるケガや病気の治療が長引いて、療養を開始してから1年6ヶ月を経過しても治癒(症状固定)しておらず、障害の程度が重い場合には傷病(補償)年金を受け取ることができます。
もっとも、この傷病(補償)年金は、被災者本人の請求などにより支給するものではなく、労働基準監督署長の決定に基づき支給されるものですので、特段の手続きは不要です。
労働者が死亡した場合
労働災害が大きなもので、労働者が亡くなってしまうこともあります。
その場合にも、労働者の遺族として求めることができる給付があります。
1. 葬祭料
遺族、または葬祭を行うにふさわしい者(たとえば、被災労働者に家族がない場合の会社など)が葬祭(お葬式など)を行った場合、一定の範囲で葬祭料が給付されます。
労働者が死亡した日の翌日から2年以内に、医療機関作成の「死亡診断書」や、「死体検案書」など、被災労働者が死亡した事実とその年月日を確認できる書類とともに、「葬祭料請求書 業務災害用(様式第16号)」などを所轄の労働基準監督署に提出してください(後述の遺族補償給付とともに給付を求める場合、重複する資料は不要です)。
2. 遺族(補償)給付
死亡した労働者の遺族が今後の生活に困ってしまうことを防ぐため、その労働者の収入によって生活を維持していた特定の遺族(原則として妻が受給します。他には、55歳以上の夫、障害のある夫・子・両親なども受給できる可能性がありますが、妻よりも優先順位が低くなります)は、労災保険から、遺族補償給付を受けることができます。
受給資格がありそうな場合には、死亡した日の翌日から5年以内に「遺族補償年金支給請求書・遺族特別支給金支給申請書・遺族特別年金支給申請書 業務災害用(様式第12号)」、「遺族補償一時金支給請求書 業務災害用(様式第15号)」と、2年以内に「遺族補償年金 遺族年金 前払一時金請求書(年金申請様式第1号)」を所轄の労働基準監督署に提出してください(通勤災害の場合は、別の書式が用意されています)。
加害者への請求
各給付についての請求手続は以上のとおりですが、慰謝料など労災保険でカバーされない費目については、別途、加害者や勤務先(使用者)などに対して民法上の請求を行う必要があります。
民法上の請求においては、労働災害・傷病が発生する原因となった同僚や使用者の責任を明らかにしなければなりません(例えば、「工事現場で働いていたところ、同僚がクレーンの操作を誤ったことでケガをさせられた(同僚に対する責任)」とか、「製造工場の機械の安全装置が壊れたまま放置されていたことで、指を巻き込んで失ってしまった(使用者に対する責任)」など)。
特に、労働者自身の行動をきっかけに労働災害が発生したケースで使用者の責任を認めさせるには、現場がどのような状況にあったのかを前提として、使用者がより安全に配慮していれば労働災害が発生しなかったはずである、と立証する必要があります。
しかしながら、使用者側から「適切な配慮を行っていた」「当該労働者だけが危険な行動をしていて勝手に怪我をした」などと反論がなされる中、「災害が発生しなかったはず」という仮定を立証するのは簡単ではありません。
ケガの程度によっては、労災保険から支払われることのない慰謝料等の額が数千万円になることもありますが、これが使用者側から支払われることはまずありませんので、同僚のミスや使用者側の不完全な安全管理で労働災害が発生したと考えられる場合には、必ず弁護士に相談してください。
加害者・使用者に慰謝料等の請求を行う法律構成だけでなく、加害者・使用者と労働者のどちらにどれくらいの責任があるのかという過失相殺の問題もありますから、加害者・使用者が争ってくる場合、適切な補償を勝ち取るためには弁護士の介入が不可欠です。
労働災害に遭ってしまい、今後について不安がある方や、しっかりと補償を受けたい方は、ぜひ一度、労災案件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。