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労働災害(労災)コラム

腱鞘炎で労災認定を受けるポイントと補償内容、申請手続きを解説

更新:2026年05月27日
公開:2026年05月27日
  • 労災
  • 腱鞘炎
腱鞘炎で労災認定を受けるポイントと補償内容、申請手続きを解説

デスクワークなどを続けていると、指の腱鞘炎を発症することがあります。

腱鞘炎は、業務に起因するものであれば労災認定(労災保険給付)の対象となりますが、業務起因性の立証は容易でないため、十分な事前準備が必要不可欠です。

なお、労災認定を受けられたとしても、労災保険給付だけでは補償に十分な額ではない場合があります。そのため、弁護士のサポートを受けながら、勤務先(会社など)に対する損害賠償請求も併せて行いましょう。

本記事では、腱鞘炎になったときに労災認定を受けるためのポイント、主な労災保険給付の内容、労災申請の手続きなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

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1、腱鞘炎は労災認定の対象になるが、認定は容易ではない

デスクワークなどの業務が原因で腱鞘炎になった場合、労災認定を受けられることがあります。ただし、腱鞘炎は業務外でも発症することがあるので、労災認定を受けることは決して容易ではありません

  1. (1)腱鞘炎(上肢障害)の労災認定基準

    腱鞘炎は「上肢障害」と呼ばれる疾病の一種です。上肢障害とは、外傷、病気、または過度な負担のかかる業務遂行がなされることによって、次の部位(「上肢等」といいます。)に発生した運動器の障害をいいます。

    • 後頭部
    • 頸部
    • 肩甲帯
    • 上腕
    • 前腕


    腱鞘炎を含む上肢障害については、次の3つの要件をすべて満たし、医学上療養が必要な場合に労災認定を受けることができます

    • ① 上肢等に負担のかかる作業を主とする業務に相当期間従事した後に発症したものであること。
    • ② 発症前に過重な業務に就労したこと。
    • ③ 過重な業務への就労と発症までの経過が、医学上妥当なものと認められること。
  2. (2)腱鞘炎の労災認定が難しい理由

    腱鞘炎は業務外の原因によっても発症することがあります。業務外の原因によって発症した腱鞘炎については、労災認定を受けることができません。

    労災認定の申請に当たっては、腱鞘炎が私生活や持病(既往症)ではなく、業務が原因で発症したこと(=業務起因性)を立証する必要があります。職場で実際にどのような作業を行っていたのか、どのくらい働いていたのかなどを示すことが求められますが、それは必ずしも容易ではありません。

2、腱鞘炎が労災と認められるケース|認定を受けるためのポイントも解説

上肢障害の労災認定基準に従い、どのようなケースであれば腱鞘炎について労災認定を受けることができるのか、認定を受けるためには何をすればよいのかを解説します。

  1. (1)腱鞘炎の労災認定を受けられるケース

    上肢障害が労災認定の対象となるのは、「上肢等に負担のかかる作業」によって発症した場合です

    「上肢等に負担のかかる作業」とは、主に次のいずれかに該当する、上肢等を過度に使用する必要のある作業をいいます。

    ・上肢の反復動作の多い作業
    (例)PCによるキーボード入力、重い物の運搬・積み込み・積み卸し

    ・上肢を上げた状態で行う作業
    (例)天井などに対する作業、流れ作業による塗装・溶接作業

    ・頸部、肩の動きが少なく、姿勢が拘束される作業
    (例)顕微鏡やルーペを使った検査

    ・上肢等の特定の部位に負担のかかる状態で行う作業
    (例)保育、看護、介護作業


    上記の作業に相当期間(一般的には6か月以上が目安とされます)従事したことによって腱鞘炎を発症した場合は、労災認定を受けられることがあります。
    なお、作業負荷の程度が強い場合には、6か月未満であっても認定される可能性があります。

    腱鞘炎について労災認定を受けるためには、その原因となった業務が「過重な業務」に当たることが必要です。「過重な業務」とは、原則として次のいずれかに該当するものをいいます。

    【業務量がほぼ一定である場合】
    • 発症前3か月間にわたり、同一事業場における同種の労働者と比較して、10%以上業務量が増加した。

    【業務量にばらつきがある場合】
    • 1日の業務量が通常の業務量の20%以上増加し、その状態が1か月のうち10日程度あり、その状態が発症前3か月間にわたり続いた。
    • 1日の労働時間の3分の1程度にわたって、業務量が通常の業務量の20%以上増加し、その状態が1か月のうち10日程度あり、その状態が発症前3か月間にわたり続いた。


    ただし、業務量に関する上記の要件を満たさなくても、通常業務によるものを超える負荷が認められ、次の要因が顕著に認められる場合は、その要因も総合評価して労災認定がなされる場合があります。

    • 長時間作業、連続作業
    • 他律的かつ過度な作業ペース
    • 過大な重量負荷、力の発揮
    • 過度の緊張
    • 不適切な作業環境
  2. (2)業務起因性の立証が必要|記録や証拠を確保する

    腱鞘炎について労災認定を受けるには、上記の認定基準を踏まえて、業務によって発症したこと(=業務起因性)を立証する必要があります
    そのためには、次に挙げるような事情を示す客観的な証拠を確保しましょう。

    • 作業の内容
    • 作業時の姿勢
    • 作業が続いていた時間
    • 作業量
    • 残業時間
    • 休日出勤
    など
  3. (3)腱鞘炎を発症したときは、すぐに医療機関を受診すべき

    腱鞘炎を発症したときは、すぐに医療機関を受診することが大切です。発症直後であれば、症状の経過や発症時期について医師の所見を得やすくなります。

    仕事のし過ぎで腱鞘炎になったと感じたら、労災認定の申請を見据えて、速やかに医療機関を受診してください。

3、腱鞘炎が労災認定されたときに受けられる主な補償内容

腱鞘炎について労災認定がなされると、各種の労災保険給付を受けることができます。労災保険給付は必ずしも補償に十分な額とは限りませんので、労災保険給付で補償されない損害については、勤務先に対する損害賠償請求を検討することになります。

もっとも、損害賠償請求が認められるためには、勤務先に安全配慮義務違反などの法的責任が認められる必要があります。

  1. (1)労災保険給付|治療費・休業補償・障害補償給付など

    労災保険給付は、労災(労働災害)による損害を補償するため、労災保険から支払われるものです。腱鞘炎について労災認定を受けたときは、主に次の労災保険給付を受給できます。

    労災保険給付の種類 概要
    療養補償等給付 次のいずれかの給付を受けられます。
    • ① 労災病院または労災保険指定医療機関等において、所定の手続きを行うことにより無償で治療を受けることができます。
    • ② 上記以外の医療機関で治療を受けた際に支払った費用が還付されます。
    休業補償等給付 労災による休業の4日目以降につき、給付基礎日額(原則として平均賃金)の60%が支給されます。これに加えて、特別支給金として、給付基礎日額の20%相当額が支給されるため、実質的には80%相当額が補償されます。
    障害補償等給付 労災によって身体に一定の障害が残った場合に、その障害等級に応じて年金または一時金が支給されます。
  2. (2)勤務先に対する損害賠償請求|労災保険給付との違いは?

    労災保険給付は、被災労働者が受けた損害全額を補填するものではありません

    たとえば、精神的損害の慰謝料は支払われず、休業損害も80%相当額しか補償されないなどの制限があります。

    被災労働者が受けた損害のうち、労災保険給付によって補償されない部分については、勤務先に対する損害賠償を検討しましょう。

    たとえば、腱鞘炎の発症について、勤務先が過重な業務を認識しながら適切な対策を講じなかったなど、安全配慮義務違反が認められる場合には、損害賠償請求が認められる可能性があります。

    弁護士に相談して、十分な準備を整えたうえで損害賠償請求を行ってください

4、腱鞘炎で労災申請をする手続きの流れ

腱鞘炎について労災認定を申請する手続きの流れは、大まかに次のとおりです。

  1. (1)医療機関を受診する

    腱鞘炎を自覚したら、速やかに医療機関を受診して治療を受けましょう。

    労災病院・労災保険指定医療機関で所定の手続きを行うことにより、原則として自己負担なく治療を受けることができます。その他の医療機関で治療を受ける場合はいったん自己負担で治療費を支払い、後日、労働基準監督署に申請して還付を受けます。

  2. (2)勤務先に労災として報告する

    医師の診断を受けた後、勤務先の人事部などに診断書を提出して労災の報告を行いましょう。通常は、労災認定の申請に協力してもらえます。

    勤務先の協力を得られないときは、労働基準監督署または弁護士に相談してください

  3. (3)労災申請の書類を準備し、労働基準監督署に提出する

    労災申請に当たっては、請求する労災保険給付の種類に応じた請求書と添付書類が必要です。

    労働基準監督署の窓口に相談するか、または厚生労働省ウェブサイトに掲載された手引きを参照して、必要な書類を準備しましょう。提出先は、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署です。

    参考:「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」(厚生労働省)

  4. (4)労働基準監督署が審査を行い、支給決定を経て給付が開始される

    労災申請を受けた労働基準監督署は、労災認定基準を満たしているかどうかなどを審査します。労災に該当すると判断した場合は、労働基準監督署が支給決定を行い、その後に間もなく労災保険給付が開始されます。

5、労災の損害賠償を請求するなら、弁護士のサポートが欠かせない

勤務先に対して労災の損害賠償を請求する際には、弁護士のサポートが欠かせません

  1. (1)労災の損害賠償請求について、弁護士ができるサポート

    ベリーベスト法律事務所では、労災事故による被害を回復するため、次の2つのサポートを行っています。

    ① 障害補償等給付申請のサポート
    労災によるけがが完治せず後遺症が生じた場合に、労働基準監督署に対する障害補償等給付の申請をサポートします。詳しくは「障害補償給付申請のサポート」のページをご確認ください。

    ② 損害賠償請求のサポート
    労災保険では補償されない損害につき、勤務先に対する損害賠償の請求をサポートします。「労働災害(労災)の解決事例」のページでは、当事務所が対応してきた事例を公開していますので、ご参考ください。
  2. (2)ベリーベスト法律事務所が選ばれる理由

    ベリーベスト法律事務所の労働災害専門チームは、業務が原因でけがや病気を発症した被災労働者の方を丁寧にサポートいたします。これまで1万5000件を超える労災問題を解決しており(2011年1月~2026年2月)、実績とノウハウは十分です。

    初回相談は60分無料で、全国75拠点に設けているオフィス(※2026年2月時点)のほか、電話やオンラインでご相談いただくこともできます。

    労災による損害を回復するためには、弁護士へのご相談が大きな一歩となります。ぜひお気軽にベリーベスト法律事務所へご相談ください。

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この記事の監修者
外口 孝久
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プロフィール
外口 孝久
プロフィール
ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士
所属 : 第一東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 49321

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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