業務上の原因によるけがや病気を理由に仕事を休み、一定の要件を満たす場合は、労災保険の「休業補償給付」を受給できます。
休業補償給付を受給するためには、労働基準監督署に「第8号様式」の請求書を提出しなければなりません。会社の協力を得ることが望ましいですが、協力が得られない場合、当事者からの申請でも労働基準監督署は受理してくれます。労災申請に当たって分からないことや不安があるときは、弁護士に相談してください。
本記事では、労災保険の休業補償給付を請求する際に提出する「第8号様式」について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
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1、労災の第8号様式に関する基礎知識
業務上の原因によってけがをし、または病気にかかった人は「労災保険給付」を受給できます。
労災保険給付の請求に当たっては、給付の種類に応じた様式の請求書を労働基準監督署などへ提出しなければなりません。
「第8号様式」は、仕事を休んだ場合に受給できる「休業補償給付」を請求する際に提出します。
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(1)労災の第8号様式(休業補償給付支給請求書)とは
労災(労働災害)に関する「第8号様式」は、労災保険給付の一つである「休業補償給付」を請求する際に用いる様式です。
休業補償給付として支給されるのは、給付基礎日額の60%に相当する「休業補償給付」です。これに加えて、労災保険の特別支給制度により、給付基礎日額の20%に相当する「休業特別支給金」も支給されます。
第8号様式では、これらをまとめて請求することができます。
※給付基礎日額とは、労災保険の給付額を計算する基準となる1日あたりの賃金額です。原則として、事故前3カ月間の賃金を基に算定されます。 -
(2)第8号様式を提出すべき対象者
第8号様式は、休業補償給付を請求するときに提出します。休業補償給付を受給できるのは、以下の①~④の要件をすべて満たす人です。
① 業務災害に当たる
「業務災害」とは、労働者が業務上の原因によってけがをし、病気にかかり、または死亡したことを意味します。
具体的には「業務遂行性」と「業務起因性」の要件をいずれも満たしていなければなりません。
- 業務遂行性:事業主の支配下においてけがや病気などが発生したこと(仕事中に起きた事故かどうか)
- 業務起因性:けがや病気などと業務の間に、一定の因果関係があること(仕事が原因といえるかどうか)
② 業務災害が原因で労働することができない
「労働することができない」場合には、労働そのものが不可能なほど健康状態が悪い場合に加えて、入院や通院をするために仕事を休まざるを得ない場合なども含まれます。
③ 賃金を受けていない
休業日について賃金を受けている場合は、その日は休業補償給付の対象外となります。
ただし、支払われた賃金額が平均賃金の60%未満の場合には、支払われた賃金額との差額が支給されます。
④ 4日以上仕事を休んだ
休業補償給付は、休業開始から最初の3日間(待期期間)は支給されず、4日目以降の休業日について支給されます。
なお、待期期間には有給休暇を取得した日も含めることができます。
なお、通勤中のけがなど(=通勤災害)が原因で仕事を休んだ場合にも、労災保険給付の一つである「休業等給付」を請求できます。
ただし通勤災害の場合は、第8号様式ではなく「第16号の6様式」を用いる点にご注意ください。
2、労災の第8号様式の書き方と提出方法
休業補償給付の請求は、会社が代行してくれることもありますが、会社の協力が得られないケースも散見されます。その場合は、労働者自身で第8号様式に記入して請求を行いましょう。
自力で休業補償給付を請求しようとする被災労働者の方に向けて、労災の第8号様式の書き方や提出方法を解説します。
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(1)第8号様式の入手方法
第8号様式は、労働基準監督署の窓口に行けば入手できます。
労働基準監督署は全国各地に設置されていますが、提出先となる事業場を管轄する労働基準監督署に行ってみましょう。労働基準監督署の場所は、厚生労働省のウェブサイトから検索できます。
参考:「全国労働基準監督署の所在案内」(厚生労働省)
また、第8号様式は厚生労働省のウェブサイト上からダウンロードすることもできます。PDFに直接入力して印刷するか、または印刷した後に手書きで記入してください。
参考;「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」(厚生労働省) -
(2)第8号様式に記載すべき事項
第8号様式の記載事項は、以下のとおりです(番号は様式に付されたもの)。なお、労働保険番号より上の欄は記入しないでください。
② 労働保険番号
労働保険番号とは、会社に割り振られている労災保険の番号です。勤務先、労働保険事務組合、都道府県労働局または労働基準監督署に問い合わせて記入します。
⑤ 労働者の性別
男性なら1、女性なら3と記入します。
⑥ 労働者の生年月日
生年月日を記入します。
※元号は様式に記載されている番号(例:令和=9など)に従って記入します。
⑦ 負傷または発病年月日
業務災害に当たるけがや病気が発生した日を記入します。
⑫ 労働者の氏名・年齢・住所
自分の氏名・年齢・住所を記入します。
⑲ 療養のため労働できなかった期間
業務災害によって休業した期間を記入します。実際に働いた日が間にあっても、最初の休業日から最後の休業日までの通算期間を記入します。
2回目以降の請求では、前回の請求後の期間のみを記入します。
⑳ 賃金を受けなかった日の日数
⑲の期間のうち、実際に休業して賃金を受けなかった日数を記入します。
㉓~㉖ 届け出る口座の情報(※㉑金融機関コードと㉒郵便局コードは記入しない)
休業補償給付の振込先口座を新規に届け出る場合は、その口座の情報を記入します。振込先口座を変更する場合は、変更後の口座の情報を記入します。
上記以外の場合は、記入不要です。
㉗ 事業主の証明
⑦、⑲、⑳および㉜~㊳(支給される年金の種類等を除く)および別紙2の情報が正しいことを、勤務先である事業主が証明する欄です。
通常、勤務先の担当者に記入してもらいますが、協力を得られない場合でも請求自体は可能であるため、空欄で構いません。
㉘~㉛ 診療担当者の証明
業務災害に当たるけがや病気の症状や治療経過などについて、診察を受けている医師に記入してもらいます。
㉜ 労働者の職種
どのような種類の仕事をしているかを端的に記入します。2回目以降の請求では記入不要です。
㉝ 負傷または発病の時刻
業務災害に当たるけがや病気が生じた大まかな時刻を記入します。2回目以降の請求では記入不要です。
㉞ 平均賃金
別紙1(後述)の算定結果に基づき、平均賃金の額を記入します。2回目以降の請求では記入不要です。
㉟ 所定労働時間
勤務先における通常の労働時間を記入します。2回目以降の請求では記入不要です。
㊲ 災害の原因、発生状況および発生当日の就労・療養状況
業務災害に当たるけがや病気が生じた経緯を詳しく記入します。2回目以降の請求では記入不要です。
(例)〇〇工場内の〇〇製造ラインにおいて、〇〇加工機を操作中、材料の位置を調整しようとした際に誤って左手を機械に挟み負傷した。負傷後は休業となり、同日中に〇〇病院を受診した。
㊳ 厚生年金保険等の受給関係
業務災害に当たるけがや病気について障害年金や障害厚生年金が支給される場合に、その情報を記入します。
㊴ その他就業先の有無
兼業していない場合は「無」に丸を付けます。
兼業している場合は「有」に丸を付け、兼業先の数と労災保険への特別加入の状況を記入します。
「㉞平均賃金」は初回の請求に限り記入しますが、その際には「別紙1」に算定内訳を記入して提出する必要があります。
月給制の場合は、別紙1のうち主に以下の事項を記入してください。【別紙1の主な記載事項(月給制の場合)】
(a)雇入年月日
会社に確認して記入します。教えてもらえない場合は、雇用契約書や労働条件通知書などによって確認できる場合があります。
※試用期間がある場合でも、最初に雇われた日を記入します。
(b)常用・日雇の別
「常用」に丸を付けます。
※「常用」とは、期間の定めがあっても継続して雇われている場合をいいます(正社員・契約社員・パートなど)。
※1日ごとに雇われる働き方の場合は「日雇」に丸を付けます。
(c)賃金支給方法
「月給」に丸を付けます。
※日給制の方は「日給」、時給制の方は「時間給」に丸を付けます。
※自分の賃金形態が分からない場合は、給与明細の記載を確認してください。
(d)賃金締切日
「毎月末日締め」「毎月15日締め」など、賃金を計算する区切りの日です。
会社に確認して記入してください。教えてもらえない場合は、雇用契約書や労働条件通知書、就業規則、給与明細などによって確認できる場合があります。
(e)賃金計算期間(A欄)
賃金締切日ごとに区切って記入します。
※月給制の場合は通常1カ月ごとです。
※日給・時給制でも、会社の締切日単位で記入します。
(f)総日数(A欄)
賃金計算期間の総日数を記入します。
※実際に働いた日数ではなく、暦上の日数です。
(例)5月1日~5月31日なら「31日」
(g)賃金
賃金計算期間に対応する賃金として支払われたものを、基本給、残業代、各種手当など内訳別にすべて記入し、その合計額も記入します。給与明細を見ながら正確に記入してください。
B欄の下部にある「総計」の欄にも記入してください(A欄のみの場合は、A欄の「計」と「総計」が同額になります)。
(h)平均賃金・最低保障平均賃金
様式の指示に従って平均賃金の額を計算し、記入します。
※平均賃金は、通常、直前3カ月間の賃金総額をその期間の暦日数で割って計算します。
※平均賃金の計算結果が著しく低い場合には、法律で定められた最低額(最低保障平均賃金)が適用されます。
※労災以外の原因で仕事を休んだ日がある場合
私傷病や欠勤など、労災以外の理由で休んだ日がある場合は、その日数や理由なども記入する必要があります。
また、休業期間に部分算定日が含まれる場合は、請求の都度「別紙2」に賃金を受けなかった日の日数の内訳を記入して提出する必要があります。
「部分算定日」とは、療養のために所定労働時間のうち一部だけ働いた日や、有給休暇などで賃金が支払われた日のことをいいます。 -
(3)第8号様式の提出方法
第8号様式の記入が完了したら、窓口への持参・郵送・電子申請のいずれかの方法により、事業場を管轄する労働基準監督署に提出してください。
電子申請の方法は、厚生労働省のウェブサイトで案内されています。
参考:「労働保険は電子申請」(厚生労働省)
3、労災申請に会社が協力しない場合の対処法
休業補償給付を含む労災保険給付の請求は、会社が代行してくれるケースもある一方で、会社の協力を得られない場合もあります。
しかし、会社が協力しないからといって、労災申請ができなくなるわけではありません。
以下では、具体的な対処法を解説します。
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(1)まずは書面で会社に協力を依頼し、記録を残す
会社から口頭で協力を拒否された場合でも、すぐに諦める必要はありません。
メールや書面で第8号様式への記入を依頼して、そのやり取りを保存しておきましょう。
会社が協力を拒否した事実を客観的に記録しておくことで、後に労働基準監督署へ相談する際の重要な資料になります。 -
(2)労働基準監督署へ相談する
労災保険給付の支給・不支給を判断するのは会社ではなく、労働基準監督署です。会社が「労災ではない」と主張しても、それだけで不支給になるわけではありません。
記録を持参して労働基準監督署に相談すれば、事業主の証明欄が空欄でも受理されることがあります。
ただし、事業主証明欄が空欄の場合は、労働基準監督署が事実関係を調査することになるため、審査に時間がかかる可能性があります。 -
(3)「労災隠し」が疑われる場合は早めに弁護士へ相談する
会社が意図的に申請を妨げている場合、「労災隠し」に当たる可能性があります。労災隠しは、労働安全衛生法などの法令違反が疑われます。
会社との関係が悪化するおそれがあるケースでは、早めに弁護士へ相談することが重要です。
4、労災に関する会社の対応に不満があるときは、弁護士に相談を
弁護士は、会社との和解交渉や労働審判、訴訟などの手続きをサポートいたします。法的根拠に基づく対応によって適正額の損害賠償を受けやすくなるとともに、弁護士が手続きを代理することで、ご本人の負担を軽減できます。
労災の問題は、時間がたつほど証拠の確保が難しくなり、交渉も不利になる傾向があります。
労災に関する会社の対応に不満があるときは、早い段階で弁護士にご相談ください。
適切な対応を取ることが、正当な権利を守ることにつながります。
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5、まとめ
第8号様式は、労災によって仕事を休んでいる間の収入について補償を受けるために必要な書類です。
会社の協力を得られなくても、被災労働者が自ら労働基準監督署へ第8号様式を提出すれば、休業補償給付を受給できます。決して泣き寝入りすることなく、ご自身の正当な権利を主張してください。
第8号様式の記入方法が分からない場合や、会社が非協力的なことに不満がある場合には、弁護士への相談をおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、労災トラブルに関するご相談を随時受け付けておりますので、ぜひお早めにご連絡ください。
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