業務中の事故によってけがを負い、治療を続けても障害が残ってしまうことがあります。このような場合、労災保険では「障害補償給付」を受けることができます。
その際に必要となるのが、労災10号様式(障害補償給付支給請求書)です。ただし、10号様式には本人だけでなく会社や医師が記入する欄もありますので、正しく記載しなければ労災保険給付が受けられないリスクがあります。また、提出先や申請期限など、重要なポイントもありますので正確な知識を身につけておくことが大切です。
今回は、労災10号様式の基本、申請の流れ、記入欄ごとの記載者、提出先・期限などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
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1、労災の10号様式とは?
労災事故によってけがや病気を負った場合、労災保険からさまざまな給付を受けることができますが、その際に利用する書類のひとつが「労災10号様式」です。まずは、この書類の役割とどのような場面で使用されるのかを確認しておきましょう。
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(1)労災の10号様式は障害が残ったときに使用する給付請求書
労災の10号様式とは、業務中の事故や業務が原因となるけがや病気によって障害が残った場合に、障害補償給付を請求するための書類です。
労災によるけがや病気の治療を続けてもこれ以上の改善が見込めない状態(症状固定)となり、身体に障害が残った場合には、その障害の程度に応じて労災保険から給付を受けることができます。この給付を請求する際に使用するのが、労災10号様式です。
なお、10号様式は業務災害に使用する書類ですので、通勤中の事故など通勤災害の場合の障害給付には「16号の7様式」を使用します。事故の原因が業務災害か通勤災害かによって、使用する様式が異なる点に注意が必要です。 -
(2)障害補償給付とはそもそも何か?
労災保険には、被災した労働者の生活を保障するため、さまざまな種類の給付が用意されています。主な給付には次のようなものがあります。
① 療養(補償)給付
労災によるけがや病気の治療費を労災保険が負担する制度
② 休業(補償)給付
労災によって働けなくなった期間の収入を補償する制度
③ 傷病(補償)年金
長期間にわたり治療が続く重い傷病の場合に支給される年金
④ 障害(補償)給付
治療後に障害が残った場合に支給される給付
⑤ 遺族(補償)給付
労災事故により労働者が死亡した場合に遺族へ支給される給付
このうち、障害(補償)給付とは、労災によるけがや病気の治療が終了したあとに、身体に障害が残った場合に支給される労災保険の給付制度です。
なお、障害(補償)給付は、障害等級(1級〜14級)に応じて、年金または一時金として支給されます。
2、労災10号様式の申請の流れ
労災10号様式は、事故が発生してすぐに提出する書類ではありません。一般的には、治療を続けた結果、症状が固定し、障害が残ったと判断された段階で申請するものです。以下では、労災10号様式の申請までの基本的な流れと、提出先や申請期限について説明します。
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(1)申請の全体フロー
労災10号様式による申請は、以下のような流れで進みます。
① 受傷(労災事故の発生)
労災保険は、業務中や通勤中の事故やけが・病気が対象となります。たとえば、機械事故によるけが、転落事故、重い荷物の運搬による腰痛などが典型的な労災事故です。
このような事故が発生した場合は、会社へ報告し、治療のため病院を受診します。
② 治療
労災として認められた場合、原則として治療費は、療養(補償)給付によって労災保険から支払われます。また、けがや病気によって働けない場合は、休業(補償)給付を受けることができます。
この段階では、まだ後遺障害の申請は行いません。まずは治療を続け、症状の回復を目指します。
③ 症状固定
治療を続けても、これ以上症状の改善が見込めない状態になることがあります。この状態を「症状固定」といいます。症状固定と診断されると、労災の治療は原則として終了します。
そして、症状固定時点で身体に障害が残っている場合には、障害補償給付の対象となる可能性がありますので、次の請求手続きに進みます。
④ 請求(10号様式の提出)
症状固定後、後遺障害が残っている場合には、労災10号様式を使用して障害補償給付の請求を行います。
申請書には、本人の記入欄のほか、会社の証明欄や医師が作成する診断書などがあり、必要事項を記入したうえで労働基準監督署へ提出します。
その後、労働基準監督署が調査を行い、障害等級の認定が行われ、等級に応じた給付が支給されることになります。
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(2)提出先|労働基準監督署
労災10号様式の提出先は、労働基準監督署です。具体的には、事業場を管轄する労働基準監督署に提出します。
会社を通して提出する場合もありますが、労働者本人が直接提出することも可能です。 -
(3)申請期限|5年の時効
労災の障害補償給付には時効があります。障害補償給付の請求権は、症状固定日の翌日から5年で時効により消滅します。
そのため、症状固定となったあとは、できるだけ早く申請の準備を進めることが重要です。
3、申請書記入には、原則、医師と会社の協力が必要
労災10号様式は、被災した労働者が単独で作成できる書類ではありません。申請書には、本人の記入欄のほか、会社が証明する欄(事業主証明)や医師が作成する診断書部分があり、原則としてそれぞれの協力が必要になります。
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(1)本人が記入する欄
労災10号様式のうち、本人が記入する必要がある欄は、主に被災労働者の基本情報や給付の支払いに関する情報などです。申請の基礎となる重要な情報になりますので、誤りがないよう正確に記入するようにしましょう。
具体的には、次のような項目を記入します。- 労働保険番号
- 年金証書の番号
- 労働者の氏名、生年月日、住所、職種、所属事業場名称・所在地
- 治癒(症状固定)年月日(医師の診断書を参照して記入)
- 添付する書類その他の資料名
- 年金の払い渡しを受けることを希望する金融機関または郵便局
- 請求人(申請人)の住所、氏名、個人番号
- 振り込みを希望する金融機関の名称、預金の種類および口座番号
- その他就業先の有無
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(2)会社に証明してもらう欄
労災10号様式には、会社が記入する「事業主証明欄」があります。この部分については、原則として会社に対応してもらう必要がありますので、会社の担当者に申請書を渡して、記入・証明をお願いするようにしてください。
- 負傷または発病年月日
- 災害の原因および発生状況
- 平均賃金
- 特別給与の総額(年額)
- 厚生年金保険等の受給関係
なお、事業主には、労災手続きに関して必要な証明を行う協力義務が法令上課されています。
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(3)医師に作成してもらう診断書部分
労災10号様式は、障害が残ってしまった場合の補償を請求する書類になりますので、障害の有無および程度を医師に証明してもらう必要があります。そのため、主治医に「労働者災害補償保険診断書」を渡して、必要事項を記入してもらうようにしてください。
なお、診断書の作成には、文書作成料(診断書作成費用)がかかるのが一般的です。費用は、医療機関によって異なりますが、数千円から1万円程度かかることもあります。この診断書作成費用については、別途労災保険に請求できる場合があります。 -
(4)会社が証明を拒否した場合の対処法
会社によっては、労災申請に協力せず、事業主証明を拒否するケースもあります。しかし、そのような場合でも、労災申請ができなくなるわけではありません。
労災保険の申請は、労働者本人が直接労働基準監督署へ行うことも可能です。そのため、会社が証明を拒否した場合でも、事業主証明がない状態で労働基準監督署へ提出することができます。その際には、会社が証明を拒否した理由を記載した書面(理由書など)を添付するのが実務上一般的です。
会社が協力しないからといって申請をあきらめる必要はありません。労災申請に関してトラブルが生じている場合には、労働基準監督署に相談するか、弁護士などの専門家へ相談することも検討するとよいでしょう。
4、労災にあったら、弁護士に相談すべき理由
労災事故の補償は、労災保険だけでは不十分であるケースも多いため、労災事故にあったときは、将来の損害賠償請求を見越して早めに弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)労災保険給付以外に会社への損害賠償が可能であるか判断できる
会社が安全配慮義務を怠ったことにより労災事故が発生した場合や、会社の別の従業員の過失により労災事故が発生したような場合には、会社に対して損害賠償請求ができる可能性があります。
安全配慮義務とは、会社が労働者の安全や健康を守るために必要な措置を取る義務のことです。たとえば、次のようなケースでは、安全配慮義務違反が問題になることがあります。- 危険な作業環境で十分な安全対策が採られていなかった
- 必要な安全教育が行われていなかった
- 過重労働によって事故が発生した
このような場合、労災保険とは別に、会社へ慰謝料や逸失利益などの損害賠償を請求できる可能性があります。なお、労災保険には慰謝料の給付は含まれていないため、この点でも民事上の請求を検討する意義があります。
弁護士に相談することで、損害賠償請求が可能かどうかを適切に判断してもらうことが可能です。 -
(2)会社への損害賠償請求の手続きを任せることができる
会社に対する損害賠償請求を行う場合には、証拠の収集や法的主張の整理など、専門的な対応が必要になります。
たとえば、事故がどのような状況で発生したのかを示す証拠の収集や、医療記録の確認、損害額の計算、会社との交渉などを行う必要があります。場合によっては、裁判を提起して解決を図ることもあります。
しかし、これらの手続きを被災労働者本人がすべて行うことは、精神的にも時間的にも大きな負担です。特に、けがの治療を続けながら法的手続きを進めることは簡単ではないでしょう。
弁護士は、会社との交渉や裁判手続きを代理できますので、被災労働者は、手続きの負担が軽減され、治療や生活の立て直しに専念しやすくなるでしょう。 -
(3)弁護士が介入することでより多くの賠償金を得られる可能性がある
労災事故では、損害賠償の金額をめぐって会社と争いになることもあります。会社側が提示する賠償額は、必ずしも適正な金額とは限りません。
こうした場合に、弁護士であれば- 後遺障害の評価
- 適正な逸失利益額の算定
- 適正な慰謝料額の算定
- 責任割合
などを専門的な観点から検討できます。
その結果、被災者が受け取ることのできる賠償金が増える可能性があります。ただし、労災保険給付と損害賠償との間では、同一の損害について二重に補償されないよう調整(損益相殺)が行われる点には注意が必要です。
適切な補償を受けるためにも、早い段階で弁護士に相談することが重要です。
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5、ベリーベスト法律事務所の強み
労災事故では、後遺障害の認定や損害賠償請求など、専門的な知識が必要になる場面が少なくありません。適切な補償を受けるためには、労災問題に詳しい弁護士へ相談することが重要です。以下では、ベリーベスト法律事務所の主な強みを紹介します。
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(1)障害補償給付申請のサポートができる
労災の障害補償給付を受けるためには、労災10号様式の作成や診断書の準備など、さまざまな手続きが必要になります。また、後遺障害の等級認定は給付額に大きく影響するため、適切な申請を行うことが重要です。
ベリーベスト法律事務所では、労災案件を取り扱う弁護士が、障害補償給付の申請手続きについてサポートしています。申請の流れや必要書類についてアドバイスを受けることで、手続きをスムーズに進めることが可能になります。 -
(2)全国各地に事務所があり、相談しやすい
労災事故の相談は、できるだけ早い段階で行うことが大切です。しかし、近くに法律事務所がない場合やどこに相談すればよいかわからないという方も少なくありません。
ベリーベスト法律事務所は、全国各地に拠点を展開しているため、比較的相談しやすい体制が整っています。お住まいの地域の事務所で相談できるため、労災事故について不安がある場合でも、気軽に弁護士へ相談することができます。 -
(3)労災専門チームがある
労災問題は、労働法や損害賠償などの知識が必要となる分野です。そのため、労災案件の経験がある弁護士へ相談することが重要になります。
ベリーベスト法律事務所には、労災問題を扱う専門チームがあり、これまで多くの労災案件に対応してきた実績があります。専門的な知識と経験をもとに、被災した労働者の状況に応じたサポートを行っています。
労災事故で後遺障害が残った場合や会社とのトラブルが生じている場合には、早めに弁護士へ相談することで、適切な解決につながる可能性があります。まずは、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
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交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
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