工場などに設置されたプレス機に巻き込まれて、手足を切断することになったり、亡くなったりする事故は少なくありません。
仕事中に、プレス機による事故に遭ったら、労災申請をすることで労災保険給付を受給できる可能性があります。
本記事では、プレス機による事故に遭った際に受けられる労災保険給付の内容や、請求の手続き方法、勤務先や元請け会社に対する損害賠償請求などについて、ベリーベスト法律事務所 労災専門チームの弁護士が解説します。
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1、プレス機による事故は労災(労働災害)になる? よくある事例
令和8年3月18日、栃木県内の自動車工場において、50代の男性従業員がプレス機に挟まれている状態で発見されました。男性は病院に搬送されましたが、亡くなったとのことです。
仕事中に、プレス機に挟まれる、巻き込まれるといった事故は、労災認定の対象になることがあります。
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(1)プレス機の事故の典型例は「挟まれる」「巻き込まれる」
プレス機による作業中に発生する労災事故としては、次の例などが挙げられます。
- 手、足、指などがプレス機に挟まれて壊死(えし)し、切断を余儀なくされた。
- プレス機にかけている材料の破片などが高速で飛び出し、近くにいた従業員に衝突した。
- 金型の内部に入った際、スライドが急に加工してきて身体を挟まれた。
- 自動送り装置や搬送ローラーに衣服が引っ掛かり、身体ごと巻き込まれた。
手足や指の切断、失明、身体まひなどの重篤な後遺症や、死亡につながった重大な事故もしばしば発生しています。
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(2)プレス機の事故は労災認定される可能性がある
プレス機による事故は「業務災害」として労災認定の対象になることがあります。
「業務災害」とは、業務上の原因によって労働者の負傷・疾病・障害・死亡が発生することを指します。
「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの要件を満たしていれば、業務災害に当たり、労災保険給付を受給できます。- 業務遂行性:事業主(使用者)の支配・管理下にある状態
- 業務起因性:事業主(使用者)の業務と労働者のケガなどの間に社会通念上相当な因果関係が存在する場合
業務の一環としてプレス機を自分で操作しているとき、もしくは自分以外の従業員が操作するプレス機に巻き込まれる形でケガ・死亡したときは、業務災害として労災保険給付を受けられる可能性が高いでしょう。
2、プレス機の事故で労災申請する方法・補償内容
プレス機による事故が業務災害に当たる場合、被害者は労災保険給付を請求できます。労災保険給付にはさまざまな種類があるので、詳しく見ていきましょう。
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(1)プレス機の事故で受けられる可能性がある給付
プレス機による事故に遭った被災労働者やその遺族が受給できる労災保険給付の種類は、次のとおりです。
労災保険給付の種類 概要 療養補償等給付 - ① 療養の給付:労災病院または労災保険指定医療機関で、ケガの治療を無償で受けることができます。
- ② 療養の費用の支給:労災病院または労災保険指定医療機関以外の医療機関を受診した場合に、支払った治療費の還付を受けられます。
休業補償等給付 事故の影響で休業した場合に、休業4日目以降の給付基礎日額(=原則として平均賃金)の80%相当額を受け取れます。 傷病補償等年金 療養開始から1年6か月経過後も傷病が治らず、傷病による障害の程度が傷病等級(第1級~第3級)に該当する場合に、休業補償等給付から切り替わる形で支給されます。 障害補償等給付 障害(後遺障害)が残った場合に、その内容に応じて認定される障害等級に基づき、年金または一時金が支給されます。 遺族補償等給付 亡くなった被災労働者の遺族の生活を保障するため、年金と一時金が支給されます。別途特別支給金も支給されます。 葬祭料等 亡くなった被災労働者の葬儀費用が補償されます。
介護補償等給付 被災労働者が要介護状態となった場合に、介護費用が補償されます。 -
(2)障害(後遺症)が残ったときに受け取れる補償
プレス機による事故で負ったケガが完治せず、障害が残ったときは、障害等級に応じて次の額の年金または一時金を受け取れます。これらを併せて「障害補償等給付」といいます。
【障害補償等給付】
障害等級は、障害の内容に応じて1級から14級までの14段階で、労働基準監督署が認定します。
参考:「障害等級表」(厚生労働省)障害等級 障害(補償)給付
※給付基礎日額に下
記の日数をかけた額障害特別支給金
(一時金)障害特別年金
※算定基礎日額に下
記の日数をかけた額障害特別一時金
※算定基礎日額に下
記の日数をかけた額第1級 313日分(年金) 342万円 313日分 - 第2級 277日分(年金) 320万円 277日分 - 第3級 245日分(年金) 300万円 245日分 - 第4級 213日分(年金) 264万円 213日分 - 第5級 184日分(年金) 225万円 184日分 - 第6級 156日分(年金) 192万円 156日分 - 第7級 131日分(年金) 159万円 131日分 - 第8級 503日分(一時金) 65万円 - 503日分 第9級 391日分(一時金) 50万円 - 391日分 第10級 302日分(一時金) 39万円 - 302日分 第11級 223日分(一時金) 29万円 - 223日分 第12級 156日分(一時金) 20万円 - 156日分 第13級 101日分(一時金) 14万円 - 101日分 第14級 56日分(一時金) 8万円 - 56日分 - ※給付基礎日額:原則として、労働基準法に基づく平均賃金
- ※算定基礎日額:賞与などの総額を日割りしたもの
また、プレス機による事故で負った障害によって要介護状態となったときは、次の額の「介護補償等給付」が支給されます。
【介護補償等給付】親族または友人・知人の介護を受けていない 親族または友人・知人の介護を受けている 常時介護 その月に介護の費用として支出した額(ただし、上限は18万6050円) 月額8万5490円
※介護の費用を支出しており、その額が8万5490円を上回る場合は、その額(ただし、上限は18万6050円)随時介護 その月に介護の費用として支出した額(ただし、上限は9万2980円) 月額4万2700円
※介護の費用を支出しており、その額が4万2700円を上回る場合は、その額(ただし、上限は9万2980円) -
(3)プレス機の事故でご家族を亡くした方が受け取れる補償
プレス機による事故で被災労働者が亡くなったときは、生計を維持されていた配偶者や子などの親族が、次の額の年金と一時金を受け取れます。これらを併せて「遺族補償等給付」といいます。
【遺族補償等給付】受給資格のある遺族の数 遺族補償等年金
※給付基礎日額に下記の日数をかけた額遺族特別支給金(一時金) 遺族特別年金
※算定基礎日額に下記の日数をかけた額1人 153日分
※受給する遺族が55歳以上の妻、または一定の障害状態にある妻の場合は175日分300万円 153日分
※受給する遺族が55歳以上の妻、または一定の障害状態にある妻の場合は175日分2人 201日分 201日分 3人 223日分 223日分 4人 245日分 245日分 - ※給付基礎日額:原則として、労働基準法に基づく平均賃金
- ※算定基礎日額:賞与などの総額を日割りしたもの
- ※遺族補償等給付の受給資格者がいないときなど一定の場合は、そのほかの親族(配偶者や子など)のうち最先順位者が「遺族補償等一時金」を受け取れます。
さらに、被災労働者の遺族は「葬祭料等」を受給できます。
受給権者は葬祭を行うにふさわしい遺族で、金額は次のとおりです。【葬祭料等】
31万5000円に給付基礎日額の30日分を加えた額
※ただし、上記の額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分 -
(4)労災申請の流れ
労災保険給付の請求先および提出すべき書類は、次のとおりです。請求書は提出先の窓口か、厚生労働省のウェブサイトで入手できます。
労災保険給付の種類 請求先 提出すべき書類 療養補償等給付 - 労災病院または労災保険指定医療機関を受診した場合:その医療機関
- そのほかの医療機関を受診した場合:事業場の所在地を管轄する労働基準監督署
- 労災病院または労災保険指定医療機関を受診した場合:療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)
- そのほかの医療機関を受診した場合:療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)
- 治療費や薬代の領収書
休業補償等給付 事業場の所在地を管轄する労働基準監督署 - 休業補償給付支給請求書(様式第8号)
- 賃金台帳
- 出勤簿の写し
- 障害年金を受給している場合は、その支給額の証明書
障害補償等給付 - 障害補償給付支給請求書(様式第10号)
- 労働者災害補償保険
- 診断書
- 検査結果などの資料
傷病補償等年金 - 傷病の状態等に関する報告書(様式第16号の2)
遺族補償等給付 - 遺族補償年金支給請求書(様式第12号)死亡診断書
- 戸籍謄本、抄本
- 生計維持関係を証明する資料(住民票の写し、民生委員の証明等)
- ほかの年金を受けている場合は、その証明書類
葬祭料等 - 葬祭料または複数事業労働者葬祭給付請求書(様式第16号)死亡の事実および死亡年月日を証明できる書類
介護補償等給付 - 介護補償給付・介護給付支給請求書(様式第16号の2の2)
- 診断書
- 介護費用の証明書、領収書
3、労災保険の給付でカバーできない補償はどうなる?
労災保険給付は、プレス機による事故に巻き込まれた被害者の損害すべてを補償するものではありません。労災保険給付では補償されない損害については、勤務先や元請け会社に対する損害賠償請求を検討してください。
-
(1)慰謝料などは労災保険の支給対象外
プレス機による事故に遭った方は、ケガ・障害・死亡などによる精神的な苦痛が生じます。しかし、精神的苦痛に関する慰謝料は、労災保険では補償されません。
また、休業による損害や障害による逸失利益も一部しか補償されないなど、労災保険による補償には限界があります。 -
(2)労災申請とは別で損害賠償を請求できる
労災保険ではカバーされない損害は、会社に対して損害賠償を請求できることがあります。
会社の「安全配慮義務違反」や「使用者責任」が認められるときは、損害賠償を請求可能です。・安全配慮義務違反
会社は、労働者が生命や身体の安全を確保しつつ労働できるように、必要な配慮をしなければなりません(労働契約法第5条)。
上記の配慮を怠ったためにプレス機による事故で労災が生じたときは、会社は安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を負います(民法415条、民法709条)。
・使用者責任
別の労働者の注意義務違反が原因でプレス機による事故で労災が生じたときは、使用者である会社が損害賠償責任を負います(民法第715条第1項)。
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4、労災で損害賠償請求するなら、弁護士へ相談を
会社に対して、プレス機による事故などの労災の損害賠償を請求する際には、弁護士のサポートを受けるのが安心です。弁護士に依頼する主なメリットを3つ紹介します。
-
(1)適切な賠償額を計算できる
弁護士は、法的な観点から事故の状況や損害の内容を分析し、適正額の損害賠償を請求することができます。
相手方から示談を持ちかけられた場合には、金額の妥当性などを検証してアドバイスすることが可能です。 -
(2)会社との交渉・裁判手続きを代行できる
会社との示談交渉や裁判手続きも、弁護士が代行できます。
弁護士が専門的知見を生かして対応することによって、適正額の賠償を受けられる可能性が高まるとともに、労力やストレスも大幅に軽減されます。 -
(3)障害が残ったときの申請サポートを行える
ベリーベスト法律事務所では、障害補償等給付の請求のサポートも行っております。
弁護士は、ケガの治療経過や障害の状態などについて、医師とコミュニケーションをとり、診断書の記載内容を、適切な障害等級で認定されるよう調整を求めるなどの対応を行います。
労災について十分な補償を受けるためには、弁護士のサポートが役立ちます。ぜひベリーベスト法律事務所にご相談ください。
5、まとめ
仕事中にプレス機による事故に巻き込まれたときは、労災保険給付を請求するとともに、会社に対する損害賠償請求も検討しましょう。弁護士のサポートが、十分な補償を受けることにつながります。
ベリーベスト法律事務所は、労災に関するご相談を随時受け付けております。ご自身やご家族がプレス機による事故に遭ってしまった際も、お気軽にご相談ください。
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交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
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