労災によるケガや病気で療養を続けている中、会社から突然「打切補償を支払う」と告げられ、今後の治療費や生活費、雇用関係について不安や戸惑いを感じていませんか。
打切補償は、業務上のケガや病気について療養開始後3年を経過しても治らない場合に、会社が平均賃金1200日分を支払う制度です。その意味や影響を十分に理解しないまま判断してしまうと、後になって不利益を受けるおそれもあります。まずは正確な知識を身につけた上で、ご自身の状況に応じて適切な選択をできるようにしましょう。
今回は、労災被災者の方に向けて、打切補償の基本的な仕組みや支払われる条件、金額の考え方に加え、受け取る際に注意すべきポイントや今後の選択肢について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
労災被害に遭われた方は
ベリーベストにご相談ください
会社から慰謝料をもらえる
可能性があります
- 電話でお問い合わせ
- 平日 9:30~21:00/土日祝 9:30~18:00
- 0120-83-2030
- 初回無料
- 平日 9:30~21:00/土日祝 9:30~18:00
-
メールフォームは24時間受付中
- メールでお問い合わせ
-
- ご相談の流れ
お問い合わせ後、まずはオペレーターが対応します。問い合わせのみでは費用は発生しませんのでお気軽にお問い合わせください。
1、打切補償とは? 長期療養中の労働者に支払われる補償制度
打切補償は、業務上のケガや病気による療養が長期化した場合に関わる重要な制度です。まずは、その基本的な仕組みと、労災被災者にどのような影響があるのかを確認していきましょう。
-
(1)打切補償とは長期療養が続く労働者に一括補償を行う仕組み
打切補償とは、業務上のケガや病気について療養開始後3年を経過しても治らない場合に、会社が平均賃金1200日分を支払う制度です。
業務上のケガや病気で療養のために休業している期間と、その後30日間は、原則として会社は解雇することができません。これは、労災被災者が療養を続けながら、雇用を守るための重要なルールです。
ただし、会社が労働基準法に基づく打切補償を支払った場合には、労働基準法上の災害補償を行わなくてもよいとされ、上記の解雇制限も解除され、以下で述べる要件を満たす場合には解雇が可能となります。
そのため、打切補償は、単にまとまった金銭を受け取る制度ではなく、今後の働き方や生活に影響を与える重要な意味を持つ点に注意が必要です。 -
(2)労災保険との関係
労災保険からは、療養補償給付、休業補償給付、傷病補償年金などが支給されることがありますが、これらは国の制度として運用されています。一方で、打切補償は、会社が法律上の義務として支払うものであり、性質が異なります。
そのため、打切補償の話が出たからといって、直ちに労災保険の給付が終了するわけではありません。治療の必要性や休業の状況などに応じて、労災保険からの給付を引き続き受けられる場合もあります。
ただし、療養開始から3年が経過し、傷病補償年金が支給されている場合、または、療養開始後3年を経過した日以後に傷病補償年金を受けることになった場合には、法律上は打切補償を支払ったものとみなされます。したがって、「会社から打切補償を受け取っていないから解雇制限は続く」とは限らない点に注意が必要です。
2、打切補償が支払われる条件と金額
打切補償は、労災による療養が続いていれば、どのような場合でも支払われるものではありません。ここでは、支給の前提となる条件と具体的な金額・計算方法を説明します。
-
(1)打切補償の条件
打切補償が支払われるためには、主に以下の3つの条件を満たす必要があります。
① 業務上の負傷・疾病であること
打切補償の対象となるのは、業務上の負傷または疾病です。たとえば、業務中の事故によるケガや危険な作業環境による疾病、長時間労働が原因となった健康被害などが考えられます。
一方で、私的な原因によるケガや病気については、打切補償の対象にはなりません。
② 療養開始から3年が経過しても治らないこと
業務上のケガや病気について、療養を開始してから3年が経過しても治らない場合という条件も満たす必要があります。
症状が継続している状態であることが前提となるため、途中で治癒が終了した場合は該当しません。
③ 会社が平均賃金1200日分を支払うこと
打切補償の金額は、平均賃金の1200日分です。会社がこの金額を支払うことにより、労働基準法上は、その後の災害補償を行わなくてもよいとされています。 -
(2)打切補償の金額はいくら? 計算方法を解説
前述したとおり、打切補償の金額は、法律上、平均賃金の1200日分と定められています。
ここでポイントとなるのは、「平均賃金がいくらになるのか」です。
平均賃金は、原則として、労災事故などの原因が発生した日を基準に、直前3か月間に支払われた賃金総額(賞与は含まれません)を、その期間の総日数で割って算出されます。
たとえば、次のケースで考えてみましょう。- 直近3か月の賃金総額:90万円
- 期間の日数:90日
この場合、平均賃金は「90万円÷90日=1万円」です。
したがって、打切補償の金額は、「1万円×1200日=1200万円」となります。
ただし、実際の平均賃金の算定では、残業代や各種手当を含めるかどうか、算定期間から控除される期間がないかなどを確認する必要があります。
提示された金額を確認する際には、単に総額を見るのではなく、「どの賃金を基準にしているのか」という点まで目を向けることが大切です。特に、残業代や手当が反映されていない場合には、本来の金額より低く算定されている可能性があります。
3、打切補償を受け取ると解雇に? 注意すべきポイント
打切補償は金額だけで判断すべきものではなく、受け取った後の影響まで見据えることが重要です。ここでは、判断にあたって特に注意しておきたいポイントを説明します。
-
(1)会社からの療養・休業補償が終了する
打切補償が支払われると、会社からの補償は一区切りとなります。
これまで受けていた療養中の補償や対応が終了することで、生活の見通しに変化が生じる可能性がありますので、受け取る前に「その後の収入や生活がどうなるか」を具体的にイメージしておくことが大切です。
なお、労災保険からの給付(療養補償給付、休業補償給付など)は、打切補償が支払われたとしても治療の必要性や休業の状況などに応じて、引き続き支給される場合があります。 -
(2)労働基準法上の解雇制限が解除される
労働者が業務上のケガや病気で療養のために休業している期間と、その後30日間は、原則として会社は労働者を解雇できません。
しかし、会社が打切補償を支払った場合には、この労働基準法上の解雇制限は解除されます。
その結果、解雇される可能性が生じることになりますが、ここで重要なのは、打切補償を支払えば無条件で解雇できるわけではないという点です。
解雇が有効と認められるためには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当といえることが必要です。
したがって、「打切補償を受け取った=必ず解雇される」と考える必要はありません。ただし、雇用関係に影響する可能性があるため、会社から提示された書面や説明をよく確認しましょう。 -
(3)退職勧奨に安易に応じない
打切補償の提示とあわせて、会社から退職を勧められることがありますが、退職勧奨はあくまで「会社からの提案」にすぎず、応じる義務はありません。
体調が十分に回復していない中で、今後の生活費や治療費に不安があると、会社の説明を受け入れた方がよいのではないかと感じることもあるでしょう。
しかし、一度退職してしまうと、元の状態に戻すことは簡単ではありません。
そのため、その場で結論を出すのではなく、まずは提示された条件を整理し、納得できない場合は、弁護士などに相談してから判断しましょう。 -
(4)打切補償の受け取りを拒否することもできる
打切補償は、会社から提示されたからといって必ず受け取らなければならないものではありません。
たとえば、次のような場合は、慎重に検討することが大切です。- 提示額が平均賃金1200日分に満たない可能性がある
- 平均賃金の計算方法に疑問がある
- 退職や今後の請求放棄を求められている
- 会社に安全配慮義務違反があり、別途損害賠償請求を検討したい
重要なのは、「提示された条件が自分にとって適切かどうか」という視点で判断することです。一度受け取ると、その後の雇用関係や交渉に影響が出る可能性があるため、現時点だけでなく、将来の見通しも踏まえて検討する必要があります。
-
(5)内容を理解できないまま書類にサインをしない
打切補償の場面では、会社から書面への署名を求められることがあります。
これらの書面には、補償金額だけでなく、次のような内容が含まれている場合があります。- 退職に合意する内容
- 今後会社に対して追加の請求を行わない内容
- 労災事故に関する問題が完全に解決したことを確認する内容
こうした条項の意味を十分に理解しないまま署名してしまうと、後から会社の安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求などをしようとしても、会社から「すでに解決済みである」と主張される可能性があります。
内容を理解できない書面には、その場で署名・押印しないようにしましょう。不明点がある場合は、書面を持ち帰って確認し、弁護士に相談してから判断することが大切です。
労災被害に遭われた方は
ベリーベストにご相談ください
会社から慰謝料をもらえる
可能性があります
- 電話でお問い合わせ
- 平日 9:30~21:00/土日祝 9:30~18:00
- 0120-83-2030
- 初回無料
- 平日 9:30~21:00/土日祝 9:30~18:00
-
メールフォームは24時間受付中
- メールでお問い合わせ
-
- ご相談の流れ
お問い合わせ後、まずはオペレーターが対応します。問い合わせのみでは費用は発生しませんのでお気軽にお問い合わせください。
4、会社に安全配慮義務違反がある場合は損害賠償請求できる可能性も
打切補償が提示された場合でも、それだけで十分な補償がなされているとは限りません。会社に安全配慮義務違反が認められる場合には、打切補償とは別に、会社へ損害賠償請求できる可能性があります。
-
(1)安全配慮義務とは
安全配慮義務とは、会社が労働者の生命や身体などの安全を確保しながら働けるよう、必要な配慮をする義務のことです。
具体的には、危険な作業を伴う業務であれば適切な安全対策を講じること、過重な労働によって健康被害が生じないよう労働時間や業務量を管理することなどが求められます。
この義務は、単に形式的にルールを設ければよいというものではなく、実際の現場において危険を防ぐ体制が整っていたか、労働者の健康を守るための対応が取られていたかが問われます。 -
(2)労災事故で会社の責任が問われるケース
労災事故が発生した場合、事故の原因や背景によっては会社の安全配慮義務違反が認められる可能性があります。
たとえば、次のようなケースです。- 長時間労働が続いていたにもかかわらず、会社が労働時間や健康状態を適切に管理していなかった
- 危険な作業環境があることを会社が把握していたにもかかわらず、必要な改善をしていなかった
- 機械や設備の安全対策が不十分だった
- 安全教育や指導が不十分で、事故を防ぐ体制が整っていなかった
- 人員不足や過重な業務量を放置し、事故が起きやすい状況になっていた
このような事情がある場合、単なる偶然の事故ではなく、会社の管理体制に問題があったと評価される可能性があります。
-
(3)労災保険や打切補償だけでは十分な補償とはいえない
労災保険や打切補償は、労災被災者の治療費や休業中の収入を一定程度補う制度ですが、すべての損害を補償するものではありません。
たとえば、会社に安全配慮義務違反がある場合には、次のような損害について、会社に損害賠償請求できる可能性があります。- 精神的苦痛に対する慰謝料
- 後遺障害による将来の収入減(逸失利益)
- 労災保険では補いきれない休業損害
- 入通院に伴う付き添い費や交通費などの損害
打切補償が提示されている場合でも、それが最終的な解決になるとは限りません。ご自身の状況に照らして、会社から提示された金額や書面の内容に疑問がある場合は、合意する前に弁護士へ相談しましょう。
5、打切補償の提示を受けたときに弁護士に相談するメリット
打切補償は、今後の生活や働き方にも影響を及ぼす可能性がありますので、会社から打切補償を提示されたときは、弁護士に相談することをおすすめします。
-
(1)補償内容が適切か確認できる
会社から提示された打切補償の金額が、法的に見て適切なものかどうかは、専門的な知識がなければ判断が難しい部分です。
平均賃金の算定方法や前提となる条件に誤りがあると、本来受け取れるはずの金額よりも低く提示されている可能性もあります。
弁護士に相談することで、提示内容の妥当性を客観的に確認し、法的に問題がないかを検討できます。 -
(2)会社に安全配慮義務違反がないか確認できる
労災事故の背景に会社側の責任があるかどうかは、個人で判断するのが難しいケースも少なくありません。
弁護士に相談すれば、次のような事情を整理した上で、会社の安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求が可能かを検討できます。- 事故が発生した状況
- 作業環境や設備の安全性
- 安全教育や作業手順の周知状況
- 労働時間や業務量の管理状況
- 会社の安全管理体制
これらを確認することで、打切補償だけで終わらせるべきか、それ以外の対応を検討すべきかの判断材料が得られます。
-
(3)損害賠償請求を進めるべきか見通しを立てられる
会社に安全配慮義務違反がある場合、打切補償とは別に、会社へ損害賠償請求できる可能性があります。
ただし、どの程度の金額が見込まれるのかは、個別の事情によって大きく異なります。
弁護士に相談することで、次のような点を確認できます。- 慰謝料や逸失利益などを請求できる可能性があるか
- 打切補償や労災保険の給付との関係をどう考えるか
- 会社との交渉や裁判をどのように進めるか
-
(4)示談交渉や訴訟を任せられる
打切補償や損害賠償請求について会社と話し合う際には、法的な根拠を踏まえて主張する必要があります。
特に、会社が責任を否定している場合や、提示された合意書の内容に問題がある場合には、労働者ご自身で対応することが負担になるケースも少なくありません。
弁護士に依頼すれば、代理人として交渉や手続きを任せることができます。
また、会社から提示された条件に対して、必要に応じて修正案を示したり、損害賠償請求の根拠を整理して交渉したりすることも可能です。
また、会社とのやり取りを弁護士に任せることで、治療や生活の立て直しに専念できることもメリットです。
6、まとめ
打切補償とは、業務上のケガや病気について療養開始後3年を経過しても治らない場合に、会社が平均賃金の1200日分を支払う制度です。
会社から打切補償を提示された場合は、提示額が適切か、労災保険の給付に影響があるか、解雇や退職合意につながる内容が含まれていないかを確認する必要があります。
また、事故の背景に会社の安全配慮義務違反がある場合には、打切補償とは別に損害賠償請求が可能な場合もあります。
合意書や示談書に署名・押印すると、後から請求をすることが難しくなるおそれもありますので、内容に疑問がある場合は、合意する前に弁護士へ相談しましょう。
ベリーベスト法律事務所では、労災事故に関するご相談を初回無料で受け付けています。会社から打切補償を提示され、今後の補償や雇用関係に不安がある方は、合意する前に、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
労災被害に遭われた方は
ベリーベストにご相談ください
会社から慰謝料をもらえる
可能性があります
- 電話でお問い合わせ
- 平日 9:30~21:00/土日祝 9:30~18:00
- 0120-83-2030
- 初回相談無料
- 平日 9:30~21:00/土日祝 9:30~18:00
-
メールフォームは24時間受付中
- メールでお問い合わせ
-
- ご相談の流れ
お問い合わせ後、まずはオペレーターが対応します。問い合わせのみでは費用は発生しませんのでお気軽にお問い合わせください。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
同じカテゴリのコラム
-
工場などに設置されたプレス機に巻き込まれて、手足を切断することになったり、亡くなったりする事故は少なくありません。仕事中に、プレス機による事故に遭ったら、労災…
-
労災(労働災害)によってけがをし、または病気になった労働者(従業員)は、労働者災害補償保険法(労災保険法)に基づき、労災保険から補償を受けることができます。労…
-
労働者が、業務上や通勤途中の事故が原因でケガを負ったり、病気になったりすることを労働災害(労災)と呼びます。労災の被害に遭った方は、適切な手続きをすることで、…