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労働災害(労災)コラム

労災の休業補償給付の計算式・ほかに支給されうる労災保険給付を紹介

更新:2026年01月22日
公開:2022年09月01日
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労災の休業補償給付の計算式・ほかに支給されうる労災保険給付を紹介

業務中・通勤中にケガをしたり、病気になったりして仕事を休んだら、労災保険から休業補償給付を受けることができます。

その際、いくらくらいの給付を受け取れるか知っておくと、休業中のお金の不安を和らげることができるでしょう。ただし、給付を受け取るには条件を満たす必要があるため、自分のケースで該当するか確認をすべきです。

この記事では、労災の被害に遭ったときに受給できる休業補償の支給条件や計算方法、そのほかに受け取れる給付などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

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1、休業補償給付の計算式と計算例

業務中や通勤中に労災被害に遭い、仕事を休まなくてはならなくなった労働者は、労働基準監督署に対して休業(補償)等給付を請求できます。「休業補償等給付」は、業務中の労災被害への補償を指し、「休業等給付」は、通勤中の労災被害への補償を指しますが、本コラムでは便宜上「休業補償給付」と表記して紹介していきます。

まずは、休業補償給付を受け取るための条件、計算式および計算例を紹介します。

  1. (1)休業補償給付を受け取るための条件

    休業補償給付は、下記①および②の条件をいずれも満たす方が受給できます。

    ① 業務災害または通勤災害のいずれかに該当すること

    <業務災害の要件>
    業務遂行性と業務起因性の両方が認められること
    • (a)業務遂行性
      使用者の支配下にある状態で労災が発生したこと
    • (b)業務起因性
      業務と労災の間に、社会通念上相当な因果関係があること

    <通勤災害の要件>
    下記4つの要件をいずれも満たすこと
    • (a)労災が以下のいずれかの移動中に発生したこと
      ・住居と就業場所の間の移動
      ・就業場所からほかの就業場所への移動
      ・単身赴任先住居と帰省先住居の間の移動
    • (b)労災が業務と密接な関連のある移動中に発生したこと
    • (c)労災が合理的な経路および方法による移動中に発生したこと
    • (d)移動が業務の性質を有しないこと

    ② 労災が原因で、4日以上仕事を休んだこと


    通勤災害の要件のうち(b)については、会社帰りに友人と飲み会へ行くため、遠回りをして事故に遭った場合などが通勤災害として認められません。また(c)については、自家用車通勤が会社で禁止されているのに、車で通勤して事故に遭った場合などが認められないので、注意しましょう。

  2. (2)休業補償給付の計算式

    休業補償給付には、「休業(補償)等給付」と「休業特別支給金」の2つがあり、受給要件を満たす場合は、その両方を受け取ることができます

    「休業(補償)等給付」と「休業特別支給金」の計算式は、それぞれ以下のとおりです。

    休業(補償)等給付=給付基礎日額の60%×休業日数
    休業特別支給金=給付基礎日額の20%×休業日数
    ※休業1~3日目は、休業日数に算入しません。


    「給付基礎日額」とは、原則として、労働基準法の平均賃金に相当する額を指します。平均賃金は、以下の計算式により求めることが可能です。

    平均賃金(=給付基礎日額)
    =労災事故の発生日(※1・2)の直前3か月間に被災労働者に対して支払われた賃金(賞与や臨時に支払われる賃金を除く)の総額÷その期間の日数
    ※1 疾病の場合は、医師の診断により疾病の発生が確定した日。
    ※2 賃金締切日が定められているときは、その直前の賃金締切日。
  3. (3)休業補償給付の具体的な計算例

    上記の計算式を前提として、実際に休業補償給付の金額を計算してみましょう。

    <設例1>
    • 2025年4月15日に労災事故により負傷し、10日間休業
    • 賃金締切日は毎月末日
    • 被災者の同年1月、2月、3月の賃金は、それぞれ28万円、30万円、32万円

    給付基礎日額
    =(28万円+30万円+32万円)÷90日
    =90万円÷90日
    =1万円

    休業(補償)等給付
    =1万円×60%×7日
    =4万2000円

    休業特別支援金
    =1万円×20%×7日
    =1万4000円

    受け取れる休業補償給付は合計5万6000円


    設例1では、賃金締切日が毎月末日に設定されています。
    平均賃金(=給付基礎日額)の計算対象期間は、負傷した月の前3か月間に当たる「2025年1月・2月・3月」となります。この3か月間に支払いを受けた賃金総額は「28万円、30万円、32万円の合計90万円」、期間の日数は「90日」です。
    したがって、平均賃金(=給付基礎日額)は「1万円(=90万円÷90日)」となります。

    休業日数は10日間ですが、最初の3日間は休業補償給付の対象外ですしたがって、休業補償給付の支給対象期間は「7日間」です

    <設例2>
    • 2025年7月15日に労災によるうつ病の診断が確定し、50日間休業
    • 賃金締切日は毎月末日
    • 被災者の同年4月、5月、6月の賃金は、それぞれ55万円、65万円、62万円

    給付基礎日額
    =(55万円+65万円+62万円)÷91日
    =182万円÷91日
    =2万円

    休業(補償)等給付
    =2万円×60%×47日
    =56万4000円

    休業特別支援金
    =2万円×20%×47日
    =18万8000円

    受け取れる休業補償給付は合計75万2000円


    設例2は、賃金締切日が毎月末日に設定されています。
    平均賃金(=給付基礎日額)の計算対象期間は、うつ病の診断が確定した月の前3か月間に当たる「2025年4月・5月・6月」となります。この3か月間に支払いを受けた賃金総額は「55万円、65万円、62万円の合計182万円」、期間の日数は「91日」です。
    したがって、平均賃金(=給付基礎日額)は「2万円(=182万円÷91日)」となります。

    休業日数は50日間ですが、最初の3日間は休業補償給付の対象外ですしたがって、休業補償給付の支給対象期間は「47日間」です

    <設例3>
    • 2025年8月15日に労災事故により負傷し、70日間休業
    • 賃金締切日は毎月20日
    • 4月21日~7月20日までの賃金総額は273万円

    給付基礎日額
    =273万円÷91日
    =3万円

    休業(補償)等給付
    =3万円×60%×67日
    =120万6000円

    休業特別支援金
    =3万円×20%×67日
    =40万2000円

    受け取れる休業補償給付は合計160万8000円


    設例3は、賃金締切日が毎月20日に設定されています。
    平均賃金(=給付基礎日額)の計算対象期間は、負傷日の直前の賃金締切日からさかのぼって3か月間に当たる「2025年4月21日~7月20日」となります。この3か月間に支払いを受けた賃金総額は「273万円」、期間の日数は「91日」です。
    したがって、平均賃金(=給付基礎日額)は「3万円(=273万円÷91日)」となります。

    休業日数は70日間ですが、最初の3日間は休業補償給付の対象外ですしたがって、休業補償給付の支給対象期間は「67日間」です

2、休業補償給付を請求する流れ

休業補償給付の請求は、労働基準監督署に対して行います。請求の流れは以下のとおりです。

  1. (1)請求書の作成|事業主・診療担当者による証明の取得

    まずは以下の請求書を作成する必要があります。

    • 業務災害で必要な請求書:様式第8号
    • 通勤災害で必要な請求書:様式第16号の6


    いずれの様式も、労働基準監督署の窓口または厚生労働省のウェブサイトで取得可能です。厚生労働省の資料には、記載例が掲載されています。

    参考:「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」(厚生労働省)
    参考:「休業(補償)等給付・傷病(補償)等年金の請求手続」(厚生労働省)

    休業補償給付の請求書には、事業主の証明および診療担当者の証明を記載する欄が設けられています。

    事業主の証明は、勤務先の会社が記載します。会社に記載を依頼しましょう。
    ただし、記載を拒否されたなどの理由で、事業主の証明が取得できなくても、休業補償給付の請求は可能です労働基準監督署の窓口に相談してみましょう

    診療担当者の証明は、医師・歯科医師・柔道整復師などが記載します。通院先の担当医などに記載を依頼しましょう。

  2. (2)労働基準監督署に対する請求書の提出

    休業補償給付の請求書の提出先は、勤務先の会社の所在地を管轄する労働基準監督署です。窓口に持参するか、郵送で請求書を提出しましょう。

    労働基準監督署の所在地は、厚生労働省のウェブサイトに掲載されています。

    参考:「全国労働基準監督署の所在案内」(厚生労働省)

  3. (3)労働基準監督署による調査・支給決定・給付金の振り込み

    請求書を受理した労働基準監督署は、休業補償給付の要件を満たしているか調査を行います。請求書の記載内容の確認に加えて、勤務先の会社や診療担当者に対するヒアリングが行われることもあります。

    調査の結果、要件を満たしていることが確認できると、労働基準監督署が休業補償給付の支給を決定します。支給決定後、請求書で指定した口座に給付金が振り込まれる仕組みです。

3、休業補償給付以外にも支給される可能性がある給付の種類

労災被害に遭った方は、休業補償給付以外にも労災保険給付を受け取れることがあります。支給される可能性がある給付の種類や、健康保険の傷病手当金が労災で受け取れるかについてご紹介します。

  1. (1)休業補償給付以外の労災保険給付一覧

    休業補償給付以外に、被災労働者が受け取れる可能性がある労災保険給付は以下のとおりです。

    労災保険給付の種類 概要
    療養(補償)等給付 労災病院・労災保険指定医療機関・労災保険指定薬局に支払う費用が無料になる、またはそのほかの医療機関・薬局に支払った費用の還付を受けられる
    傷病(補償)等年金 傷病等級第3級以上のケガや病気が1年6か月以上治らない場合に、年金と一時金を受け取れる
    障害(補償)等給付 後遺障害が残った場合に、障害等級に応じた給付を受けられる
    介護(補償)等給付 障害(補償)等給付又は傷病(補償)等年金の受給者のうち、「常時介護」「随時介護」に該当する場合に、給付が受けられる
    遺族(補償)等給付 被災労働者が亡くなった場合に、遺族が給付を受けられる
    葬祭料等(葬祭給付) 被災労働者が亡くなった場合に、葬儀費用が補償される

    各種労災保険給付の請求書様式は、労働基準監督署の窓口または厚生労働省のウェブサイトで取得できます。請求方法についてより詳しく知りたい方は、労働基準監督署の窓口または弁護士にご相談ください。

    参考:「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」(厚生労働省)

  2. (2)労災で健康保険の傷病手当金は受け取れる?

    一般的なケガや病気の治療で使える健康保険では、休業期間の収入を補償する目的で「傷病手当金」が設けられています。

    労災保険の休業補償給付 健康保険の傷病手当金
    目的 ケガや病気による休業期間の収入の補償 ケガや病気による休業期間の収入の補償
    対象 業務上の原因により、または通勤中に生じたケガや病気 労災保険が適用されないケガや病気

    休業補償給付も傷病手当金も目的は同じですが、対象にすみ分けがなされており、二重取りすることはできません
    業務災害や通勤災害に当たる場合は休業補償給付のみ、それ以外は傷病手当金のみを受給できます。

    ただし、休業補償給付の日額が傷病手当金の日額よりも低いときは、差額分に限り、健康保険の傷病手当金を受け取ることが可能です。

4、休業補償給付が不足する分は、損害賠償を請求できる

休業補償給付だけでは、労災によって失われた収入の一部しか補償されません。また、慰謝料は補償の対象外とされているなど、労災保険給付だけでは実際の損害に対する補償として不十分な点が多々あります。

労災保険給付だけでは足りない場合は、会社に対する損害賠償請求を検討しましょう。労災が発生した原因について会社に責任がある場合には、損害賠償請求が認められる可能性があります。

  1. (1)会社に対する損害賠償請求の手順

    労災で会社に損害賠償を請求する場合、以下の流れで手続きを行います。なお、労働審判を省略して訴訟を提起するケースもあります。

    ① 交渉
    会社に対して法的な主張を直接伝え、任意に損害賠償金を支払うことを求めます。
    交渉で会社より支払いを得られれば、最も早期に解決ができるのでメリットは大きいですが、あくまでも任意の支払いを求めるにすぎませんので、お互いの折り合いがつかなければ、いつまでも解決ができないことになってしまいます。また、会社の回答次第では、請求側が大幅な譲歩をしなければ、解決できないケースもあります。

    ② 労働審判
    裁判所で開催される非公開の紛争解決手続きです。裁判官・労働審判員によって、訴訟の場合のある程度の見通しを踏まえた解決に向けた仲裁を受けられるほか、期日が原則3回以内とされているため、訴訟よりも迅速に、公正な形で紛争解決を実現できるメリットがあります。しかし、どちらか一方が審判に納得しなければ訴訟手続きに移行することになり、結局は解決ができずに訴訟になってしまう恐れもある手続きです。

    ③ 訴訟
    裁判所の公開法廷において、証拠を用いて会社に対する請求の根拠を立証することを主とする手続です。訴訟は、証明に関してより厳格な判断がされる手続きであり、かつ時間がかかるという難点がある反面、判決によって紛争を確定的に解決できる強力な手続きです。
  2. (2)会社とスムーズに交渉するために、弁護士へ相談を

    労災で会社に対して損害賠償請求を検討している方は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
    弁護士に相談することの主なメリットを紹介しましょう。

    • 損害賠償の適正額を計算できる
    • 会社との交渉を適切に進めることができる
    • 労働審判や訴訟などの複雑な手続きに対応できる
    • 納得できる額の損害賠償を得られる可能性が高い
    • 労力やストレスが軽減される
    など


    自分ひとりで会社と交渉を行うのは、相当に負担が重いことです。弁護士に依頼することで、適正額の損害賠償金額を計算し、交渉や裁判手続きのサポートを受けられるので、精神的なストレスが軽減されます

    納得いく損害賠償を受け取るためには、労働災害の解決実績がある弁護士への相談を検討しましょう。
    ベリーベスト法律事務所には、労災トラブルの解決実績がある弁護士が所属しています。初回相談は60分無料のため、まずはお気軽にご相談ください。

5、まとめ

労災による負傷・疾病が原因で会社を休んだら、休業4日目以降、労災保険から休業補償給付を受けることができます。しかし、休業補償給付をはじめとした労災保険給付だけでは、労災による損害の全額が補償されないことも少なくありません。

補償が足りずお困りの方や、会社に対して何らかの請求ができないかとお考えの方は、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。弁護士がご事情を詳しくお伺いし、対応策を親身にアドバイスいたします。

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この記事の監修者
外口 孝久
外口 孝久
プロフィール
外口 孝久
プロフィール
ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士
所属 : 第一東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 49321

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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