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労働災害(労災)コラム

仕事中に心筋梗塞を発症! 労災の認定基準と障害等級を弁護士が解説

更新:2025年11月20日
公開:2025年11月20日
  • 仕事中
  • 心筋梗塞
  • 労災
仕事中に心筋梗塞を発症! 労災の認定基準と障害等級を弁護士が解説

長時間労働やストレスが原因で、仕事中に心筋梗塞を発症することがあります。心筋梗塞は命に関わる重大な症状で、一命をとりとめたとしても重篤な障害が残り、その後の仕事や生活にも大きな影響を及ぼすことがあるため、注意が必要です。

業務を原因として発症した心筋梗塞は、労災保険の対象となり、労災認定を受けられれば、症状に応じた適切な補償が支払われます。適切な障害等級認定を受けるためにも、労災の障害認定基準や障害等級の基礎知識を身につけておきましょう。

本コラムは、仕事中の心筋梗塞で倒れたときの労災認定基準と障害等級について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

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1、仕事中に心筋梗塞が発症する4つの主な原因

心筋梗塞は、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が詰まることで、心筋が壊死してしまう重篤な病気です。突然発症し、命に関わる危険性もあるため、迅速な処置が求められます。

心筋梗塞を引き起こすリスク要因は多岐にわたりますが、働く人が業務上特に注意すべきものとしては、以下のような要因が挙げられます

  • 高血圧や脂質の過剰摂取等生活習慣病による動脈硬化
  • 喫煙や飲酒などの習慣
  • ストレスや長時間労働による過労
  • 夜勤やシフト制勤務による慢性的な睡眠不足


このように、心筋梗塞は個人の体質や生活習慣に加え、業務による過重な負担やストレスが大きな要因となることがあるため、注意が必要です。

業務が原因で仕事中に心筋梗塞を発症したと疑われる場合には、労災認定の対象となる可能性があります。

2、仕事中の心筋梗塞による労災の認定基準とは

心筋梗塞が業務災害として労災認定を受けるためには、「業務による明らかな過重負荷」を受けたことにより発症したとして、心筋梗塞の発症と業務との間に因果関係がなければなりません。具体的には、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  1. (1)【認定要件1】長時間の過重業務

    発症前のおおむね6か月間を評価期間とし、疲労の蓄積の程度、特に過重な業務か否か、過重負荷の有無を客観的かつ総合的に判断して「長時間の荷重業務」の認定がなされます。
    過重負荷の有無の判断に際しては、疲労の蓄積の観点から、労働時間のほか、労働時間以外の負荷要因について十分に検討する必要があります。

    労働時間については、
    ① 1か月あたりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合には、業務と発症との関連性が弱いと評価され、
    ② 45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価されます。
    また、③ 発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価されます。

    労働時間以外の負荷要因としては、拘束時間が長い・休日がない連続勤務等勤務時間の不規則性や、出張が多いなど事業場外における移動を伴う業務、温度環境や騒音などの作業環境、パワハラやセクハラなどの心理的負荷があります。
    これらを総合的に考慮して「長期間の荷重業務」該当性が判断されます。

  2. (2)【認定要件2】短期間の過重業務

    発症直前のおおむね1週間以内を評価期間とし、過重負荷の有無の判断に当たっては、前述の労働時間のほか、労働時間以外の負荷要因についての検討が必要となります。

    労働時間については、
    ① 発症直前から前日までの間、特に過度の長時間労働があった、
    ② 発症前おおむね1週間連続して、深夜残業など過度の長時間労働があった等の場合には、業務と発症との関連性が強いと評価されます。

    なお、労働時間だけでなく、前述の労働時間以外の負荷要因を総合的に考慮して、業務と発症との関連性が強いと言えるか判断されます。

  3. (3)【認定要件3】異常な出来事

    発症直前から前日までの間に突発的な異常事態が発生し、著しい身体的、精神的負荷が加わり、その影響で心筋梗塞を発症した場合も、労災の対象となります。

    たとえば、下記のように、通常では想定しにくい「異常な出来事」が心筋梗塞の誘因となったと認められる場合です。

    • 業務中に重大な事故や災害に巻き込まれた
    • 著しい身体的、精神的負荷のかかる事故処理や救助活動に携わった
    • 水分補給ができない状態で炎天下での作業をした

3、仕事中の心筋梗塞で認定される可能性がある障害等級

心筋梗塞によって一定の障害が残ってしまった場合、障害の程度に応じた障害等級認定を受けることが可能です。3章では、仕事中の心筋梗塞で認定される可能性がある障害等級を3つ、説明します。

  1. (1)第7級5号|胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

    心筋梗塞を発症すると、その後危険な不整脈を起こすことがあるため、それを防ぐために「除細動器」と呼ばれる医療機器を体内に植え込むことがあります。
    このような処置を行った場合には、第7級5号という障害等級が認定されます。

  2. (2)第9級7号の3|胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

    ① 心機能が低下した場合
    心筋梗塞を発症したことでの心機能低下による運動耐容能の低下の程度によって、等級認定が行われます。
    具体的には、おおむね6METs(メッツ)を超える強度の身体活動が制限される場合、心機能の低下による運動耐容能の低下が中程度であると評価され、第9級7号の3という障害等級が認定されます。
    なお、「6METs(メッツ)を超える強度」は、平地を急いで歩くまたは健康な人と同じ速度で階段を上るという身体活動が制限される場合のことです。

    ② ペースメーカーを植え込んだ場合
    体内に「ペースメーカー」と呼ばれる医療機器が植え込まれることがあります。これは、心筋梗塞後の心臓の動きを正常に保つことが目的です。
    このような処置を行った場合、第9級7号の3という障害等級が認定されます。

    ③ 房室弁または大動脈弁を置換した場合
    心筋梗塞後に房室弁または大動脈弁の置換を行った場合、血栓の発生を予防するために継続的に抗凝固療法(血液を固まりにくくさせる薬の服用)が必要になることがあります。
    このような治療法を行うことになった場合、第9級7号の3という障害等級が認定されます。
  3. (3)第11級9号|胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

    ① 心機能が低下した場合
    おおむね8METs(メッツ)を超える強度の身体活動が制限される場合、心機能の低下による運動耐容能の低下が軽度であると評価され、第11級9号という障害等級が認定されます。
    なお、「8METs(メッツ)を超える強度」は、平地を急いで歩くまたは健康な人と同じ速度で階段を上ることはできるものの、それ以上の激しい身体活動が制限される場合のことです。

    ② 房室弁または大動脈弁を置換した場合
    房室弁または大動脈弁を置換したものの、継続的な抗凝結薬療法を行う必要がない場合、第11級9号という障害等級が認定されます。

    ③ 大動脈に解離を残すもの
    大動脈に偽腔開存型の解離を残す場合、第11級9号という障害等級が認定されます。

4、仕事中に心筋梗塞が発症したら、会社に損害賠償請求できる?

仕事中に心筋梗塞を発症し、労災認定を受けたとしても、それだけでは十分な補償とはいえません。状況によっては、会社に対して損害賠償を請求することも検討する必要があります。

  1. (1)労災保険だけでは十分な補償とはいえない

    仕事中に心筋梗塞を発症した場合、まず検討すべきは労災保険の給付です。労働災害と認定されれば、医療費や休業中の補償、後遺障害に対する給付などが支給されます。

    ただし、労災保険による補償はあくまで最低限の生活保障を目的とする制度です。そのため、実際に被ったすべての損害をカバーできるとは限りません。

    たとえば、以下のような損害については、労災給付のみでは不十分な場合があります

    • 精神的苦痛に対する慰謝料
    • 将来の収入減に対する逸失利益
    • 家族の生活保障に対する補償


    こうした損害に対応するため、会社に対して損害賠償請求を行うことが選択肢となるケースもあるわけです。

  2. (2)会社に損害賠償請求をするには一定の要件を満たす必要がある

    労災認定を受けられたとしても、常に会社への損害賠償請求が認められるわけではありません。会社に対して損害賠償請求をするには、法的に一定の要件を満たしていることが必要です。

    具体的には、下記のとおり、安全配慮義務違反または使用者責任が認められることが損害賠償請求の要件となります

    ① 安全配慮義務違反
    会社は、従業員が安全・健康に働けるよう配慮する法的義務(安全配慮義務)を負っています。この義務に違反していた場合、会社に損害賠償責任が発生する可能性があるでしょう。
    たとえば、下記のような事実があれば、安全配慮義務違反と判断されることがあります。
    • 長時間労働や過重な業務を慢性的に強いていた
    • ストレスの高い職場環境を放置していた
    • 適切な健康診断やフォローを怠っていた

    ② 使用者責任
    上司が過剰な長時間労働を指示した、不適切な環境で働かされたなどの原因で心筋梗塞が発症した場合、雇用主である会社も使用者責任を問われる可能性があります。

5、心筋梗塞による労災問題について弁護士に依頼するメリット

仕事中に心筋梗塞を発症した場合、労災保険による補償の申請や、必要に応じて会社への損害賠償請求などの対応が求められます。これらの手続きは専門性が高く、適切に進めるためには弁護士への依頼が有効です。

  1. (1)障害等級認定の申請手続きのサポートが受けられる

    心筋梗塞により障害が残った場合、障害等級の認定を受けることで、労災保険から一定の給付が受けられます。しかし、等級認定は、単に医師の診断書を提出すれば通るものではなく、症状や労務能力への影響を具体的に示す資料や主張が重要です。

    弁護士に依頼することで、医師との連携や必要な書類の整備、的確な主張の整理をサポートしてもらえますので、適正な等級認定を受けられる可能性が高くなります
    また、誤った申請内容や不十分な資料により低い等級しか認定されなかった場合でも、弁護士のサポートがあれば不服申し立ても適切に対応することが可能です。

  2. (2)損害賠償請求をする際の代理人として会社と交渉ができる

    労災とは別に、会社に対して損害賠償請求を行う場合、会社との交渉が避けられません。

    特に、下記においては、高度な法的知識と交渉力が必要になります。

    • 長時間労働や過重な業務の証明
    • 会社の安全配慮義務違反の立証
    • 損害額(逸失利益・慰謝料など)の算定


    労働問題の知見豊富な弁護士であれば、会社との交渉の代理人として、粘り強く主張・立証を行い、適正な補償を求めることが可能です。相手方が企業であるため、個人で交渉を進めるのは心理的にも大きな負担になりますが、弁護士が間に入ることで精神的負担も大きく軽減されます。

  3. (3)労働審判や訴訟などの法的手段にも対応できる

    損害賠償請求を行っても、会社が責任を否定する、もしくは低額の補償しか提示しない場合、最終的には労働審判や訴訟による解決が必要になることもあります。

    こうした手続きは専門的な知識が不可欠であり、証拠の提出や主張の構成、裁判所とのやり取りなど、個人で対応するのは非常に困難です。
    弁護士に依頼することで、裁判に向けた万全な準備と的確な対応を行うことができ、納得のいく解決を目指すことができます

6、まとめ

仕事中に心筋梗塞を発症した場合、それが過重労働や強いストレスなど業務との関連性が認められれば、労災保険による補償が受けられる可能性があります。さらに、重度の障害が残った場合には、障害等級認定を受けることで、追加の補償を得ることも可能です。

ただし、労災認定を受けるためには、複雑な手続きや証拠の提出が必要であり、適切な対応をしなければ、本来受け取れるべき補償を逃してしまうリスクもあります。
さらに、労災保険だけではカバーしきれない損害については、会社に対して損害賠償請求を行う必要があるケースもあるため、より一層専門的な対応が求められるといえるでしょう。

このような法的対応を円滑かつ適切に進めるためには、弁護士のサポートが不可欠です。仕事中に心筋梗塞を発症してしまった方やそのご家族の方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。労災や労働問題の経験・知見豊富な弁護士が、納得のいく結果となるように尽力いたします。

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この記事の監修者
外口 孝久
外口 孝久
プロフィール
外口 孝久
プロフィール
ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士
所属 : 第一東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 49321

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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