
気温35度以上の猛暑日はもちろん、そうでなくても、高温の場所で長時間作業をしていると熱中症になることがあります。
めまいがする、動けなくなるといった熱中症の症状が仕事中にあった場合、労災として認定してもらえるのか、仕事を休んでいる間の補償は受け取れるかなど、心配に思われる方もいるでしょう。
当コラムでは、業務中に熱中症になった際、労災認定を受けられるのか、認定基準や認定までの手続きの流れについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。また、熱中症による体調不良などで受けた損害を、会社に対して請求できるかどうかについても紹介していきます。
労災被害でお悩みの方へ
- 会社から慰謝料が
- もらえるかもしれません
- 会社から慰謝料がもらえるかもしれません
- 対象かどうかの確認だけでも構いません。
まずはお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせだけでは費用は発生しません。安心してお問い合わせください。
- 初回相談料
- 60分無料
- 着手金
- 無料
- 報酬金
- 完全成功報酬
※労災保険への不服申立てを行う場合、訴訟等に移行した場合は別途着手金をいただくことがあります。
※事案の内容によっては上記以外の弁護士費用をご案内することもございます。
1、職場で熱中症になったら、労災認定される?
業務が原因で熱中症にかかった場合は、労働基準監督署の労災認定を受けられることがあります。そもそもどのような症状が出ることを「熱中症」と呼ぶのか、また熱中症として労災認定されたケースについて紹介しましょう。
-
(1)熱中症はどのような状態を指す?
熱中症とは、身体内の重要な臓器が高温に晒(さら)されることなどにより、発症する健康障害です。熱失神・熱けいれん・熱疲労・熱射病なども含まれます。
熱中症の具体的な症状はさまざまで、一例として以下のような症状が挙げられます。重症度は4段階に分類されており、Ⅳ度がもっとも重症です。
分類 熱中症の症状 Ⅰ度 - めまい、立ちくらみ
- 筋肉痛、筋肉の硬直(熱けいれん)
Ⅱ度 - 頭痛、嘔吐(おうと)、倦怠(けんたい)感、虚脱感
Ⅲ度 - 意識障害、肝・腎機能障害、血液凝固異常のいずれか
Ⅳ度 - 深部体温40.0℃以上かつ意識レベル(GCS)≦8
職場において高温下で作業を行った結果、上記のような症状が生じた場合には、労災認定を受けられる可能性があります。なお、実際に熱中症で労災認定を受けるために確認すべき基準については、2章で詳しく解説します。 -
(2)熱中症で労災認定された事例
熱中症について労災認定がなされた事例を2つ紹介します。
①倉庫内での荷降ろし作業を行った後、熱中症による多臓器不全で死亡した事例
被災労働者は物流倉庫内で荷物を下ろす作業を午前8時から午前11時まで行い、休憩をとりました。
休憩室から出ようとした際に歩行できなくなり、救急搬送の後に死亡が確認されました。死因は熱中症による多臓器不全でした。
上記の熱中症が発生した原因として、以下の3点が指摘されています。
- 被災労働者は体調不良による休職から復帰した直後であり、暑熱順化が図られていなかった。
- 暑さ指数(WBGT値)の測定が行われていなかった。
- 熱中症を予防するための労働衛生教育が不十分だった。
②交通警備員が熱中症により意識不明となって死亡した事例
被災労働者は交通警備員として、道路補修工事現場の近くで交通誘導業務を行っていました。
適宜水分補給をしていましたが、日陰で休憩を取り始めてから程なくして嘔吐(おうと)し、鼻血を出して意識不明の状態になってしまいました。その後、死亡が確認されました。
上記の熱中症が発生した原因として、以下の4点が指摘されています。- 暑さ指数(WBGT値)の測定が行われていなかった。
- 体温や体重の変化など、被災労働者の身体の状況を確認していなかった。
- 勤務間隔が空いていたにもかかわらず、計画的な暑熱順化の期間が設定されていなかった。
- 氷、冷たいおしぼり、水風呂など、身体を適度に冷やすことのできる物品や設備を設けていなかった。
2、熱中症で労災認定を受けるための基準
仕事が原因で熱中症になったときは、労働基準監督署より労災保険給付を受けることが可能です。労働基準監督署が労災保険給付を決定することは、「労災認定」と呼びます。
以下で、労働基準監督署が労災認定を行う際に用いる基準を紹介しましょう。
-
(1)業務遂行性と業務起因性
業務上の原因によって、労働者がけがをしたり、病気にかかったりすることを「業務災害」と呼びます。仕事中に熱中症になったら、業務災害として労災認定を受けられる可能性があります。
業務災害として認められるためには、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの要件を満たさなければなりません。それぞれの要件について解説しましょう。
①業務遂行性
使用者(会社など)の支配下にある状態で、ケガや病気の原因が発生すると認められる要件です。
仕事中のほか、事業所内での休憩中やトイレに行っている間に熱中症を発症した場合も、業務遂行性が認められる可能性があります。
また、休憩で一時的に事業所を離れている間に熱中症を発症した場合も、事業所内で高温に晒(さら)されたことが原因である場合には、業務遂行性が認められる余地があります。
②業務起因性
業務が原因でケガや病気にかかった事実があると認められる要件です。
熱中症については、次の項目で解説する「一般的認定要件」と「医学的診断要件」に従って業務起因性の有無が判断されます。 -
(2)一般的認定要件と医学的診断要件
熱中症については、その原因が業務によって生じたのか、それとも業務外で発生したのかが分かりにくく、業務起因性の有無の判断が難しいケースも少なくありません。
そのため、先述のとおり、「一般的認定要件」と「医学的診断要件」の2つの観点から判断します。①一般的認定要件
熱中症を含む、労災全般に共通する業務起因性の認定要件です。以下の3つの要件を満たす必要があります。
(a)業務上の突発的な原因、またはその発生状態を時間的、場所的に明確にし得る原因が存在すること
(b)疾病の性質、強度、これが身体に作用した部位、原因の発生から発病までの時間的間隔などから、原因と疾病との間に因果関係が認められること
(c)業務に起因しないほかの原因により、発病または増悪したものでないこと
②医学的診断要件
熱中症を発症していると医学的に判断するための要件です。以下の3つの観点から総合的に判断されます。
(a)作業条件および温湿度条件などの把握
(b)一般症状の視診(けいれん、意識障害等)や、体温の測定
(c)作業中に発生した頭蓋内出血、脳貧血、てんかんなどによる意識障害との鑑別診断
3、熱中症で労災認定を受けるための申請方法
業務が原因で熱中症になったら、労災認定を受けるため、以下の対応を行いましょう。労災認定を受けられるかどうか判断に迷ったら、弁護士に相談するのがおすすめです。
-
(1)勤務先への報告
まずは、熱中症になった可能性があることを勤務先に報告しましょう。体調が優れず、すぐに報告することが難しい場合は、体調が落ち着いた段階で報告します。
労働基準監督署に労災認定の請求を行うには、原則として勤務先に「事業主の証明」などを記載してもらわなければなりません。熱中症になったことを早い段階で報告できると、会社からスムーズに協力を得やすくなります。 -
(2)医療機関の受診
熱中症になったら、速やかに医療機関を受診しましょう。
治療を受けずに放置していると、自覚がないうちに脳や内臓が傷つき、深刻な健康障害を負うことになりかねません。少しでも熱中症の兆候を感じたら、医療機関を受診してください。
熱中症になってすぐに医療機関を受診すると、業務と熱中症の因果関係を医師が判断しやすくなり、スムーズに労災認定を受けられる可能性が高まります。 -
(3)労働基準監督署に対する請求
熱中症で労災認定を受けるために、労働基準監督署に対して請求書などの書類を提出しましょう。
請求書の様式は、以下のように労災保険給付の種類ごとに用意されています。労働基準監督署の窓口で交付を受けられるほか、厚生労働省のウェブサイトからもダウンロード可能です。
労災保険給付の種類 概要 様式 療養(補償)等給付 熱中症を治療するために支払った費用の補償 労災病院または労災保険指定医療機関で治療を受ける場合:第5号
※医療機関に提出すれば、治療を無償で受けられる
上記以外の医療機関で治療を受ける場合:第7号
※いったん費用を自己負担し、後日労働基準監督署に提出する休業(補償)等給付 熱中症の影響で仕事を休んだ場合に、得られなかった収入の補償 第8号(業務災害)または第16号の6(通勤災害) 障害(補償)等給付 熱中症の後遺障害が残って労働能力が失われた場合に、将来にわたって減少する収入の補償 第10号 介護(補償)等給付 熱中症によって要介護状態となった場合に、将来にわたってかかる介護費用の補償 第16号の2の2 遺族(補償)等給付 熱中症によって死亡した場合に、遺族の生活保障の目的で行われる給付 第12号 葬祭料等(葬祭給付) 熱中症によって死亡した場合にかかる葬儀費用の補償 第16号(業務災害)または第16号の10(通勤災害)
参考:「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」(厚生労働省)
4、会社に慰謝料を請求する方法
先述のとおり、業務が原因で熱中症になったら、労災保険給付を受けることができます。さらに、会社の使用者責任や安全配慮義務違反が認められる場合には、会社に対して損害賠償の請求も可能です。
-
(1)熱中症で請求できる損害賠償の種類
業務を原因とする熱中症で、会社に対して請求できる損害賠償の項目としては、以下の例が挙げられます。
損害賠償の項目 概要 通院交通費 熱中症を治療するため通院した際、かかった交通費です。 入院雑費 熱中症を治療するため入院している間、日用品などの購入にかかる費用です。1日当たり1500円程度が認められます。 休業損害 熱中症の影響で仕事を休んだ場合に、減少した収入です。労災保険給付でも一部補償されますが、会社に対してはそれを超える額も請求できます。 逸失利益 熱中症の後遺障害が残って労働能力が失われた場合や、熱中症によって死亡した場合に、将来にわたって減少する収入です。労災保険給付でも一部補償されますが、会社に対してはそれを超える額も請求できます。 慰謝料 熱中症による入通院や残った後遺障害、死亡によって受けた精神的損害の賠償金です。労災保険給付では一切補償されませんが、会社に対しては請求できる場合があります。 -
(2)企業の熱中症対策が義務化! 義務違反がなかったか確認を
令和7年6月1日から改正労働安全衛生規則が施行され、事業者に対して熱中症対策を行うことが義務付けられました。
事業者が熱中症を起こすおそれのある作業を行わせる場合には、以下の対応を行う必要があります。- 「熱中症の自覚症状がある作業者」や「熱中症のおそれがある作業者を見つけた者」がその旨を報告するための体制整備及び関係作業者への周知。
- 熱中症のおそれがある労働者を把握した場合に迅速かつ的確な判断が可能となるよう、
①事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先及び所在地等の関係作業者への周知
②作業離脱、身体冷却、医療機関への搬送等熱中症による重篤化を防止するために必要な措置の実施手順の作成及び関係作業者への周知
いずれも、対象となるのは「WBGT28度以上又は気温31度以上の環境下で、連続1時間以上又は1日4時間を超えて実施が見込まれる作業」です。なお、WBGTは熱中症になる危険度を表す指数で、①湿度、②日射・輻射など周辺の熱環境、③気温の3つを取り入れた指標です。
参考;職場における熱中症対策の強化について(厚生労働省)
勤務先がこれらの対応を怠っていた場合、会社への損害賠償請求が認められる可能性が高まります。損害賠償を請求する際は、会社に義務違反がなかったかどうか、よく確認するようにしましょう。
5、仕事中に熱中症になったら、弁護士に相談を
高温下で長時間作業をしたことなどが原因で熱中症になったら、適正な補償を受けるために弁護士へ相談しましょう。弁護士は、主に以下のサポートを行っています。
-
(1)後遺障害に関する適正な障害等級認定のサポート
熱中症で後遺障害が残ってしまったら、障害補償給付を受けられる可能性があります。
障害補償給付の額は、労働基準監督署が認定する障害等級によって決まります。弁護士は主治医と連携して、適正な障害等級の認定を受けられるよう、請求書や診断書などの準備を行うことが可能です。 -
(2)損害賠償請求の手続きのサポート|和解交渉・労働審判・訴訟など
弁護士は、会社に対する損害賠償請求にも対応できます。
会社との和解交渉や、裁判所で行われる労働審判・訴訟などの対応を、ご本人やご家族が自力で行うのは大変です。これらの対応を弁護士に任せることで、労力やストレスが軽減され、適正額の損害賠償を得られる可能性が高まります。
6、まとめ
高温下で長時間作業するなど、業務上の原因によって熱中症になったら、労災認定を受けられます。さらに、労災認定だけでは補償されない損害についても、会社に対して損害賠償を請求できる可能性があります。特に会社に対する損害賠償請求は、弁護士のサポートを受けることによって成功率が高まります。
ベリーベスト法律事務所は、労災の損害賠償請求に関するご相談を随時受け付けています。ご自身の熱中症が業務によるものかわからない方も、お気軽にご相談ください。
労災被害でお悩みの方へ
- 会社から慰謝料が
- もらえるかもしれません
- 会社から慰謝料がもらえるかもしれません
- 対象かどうかの確認だけでも構いません。
まずはお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせだけでは費用は発生しません。安心してお問い合わせください。
- 初回相談料
- 60分無料
- 着手金
- 無料
- 報酬金
- 完全成功報酬
※労災保険への不服申立てを行う場合、訴訟等に移行した場合は別途着手金をいただくことがあります。
※事案の内容によっては上記以外の弁護士費用をご案内することもございます。

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
同じカテゴリのコラム
-
業務中の出来事が原因で労働者が怪我などを負ってしまった場合には、労災認定を受けることで労災保険からさまざまな補償が支払われます。このような労災のうち、労働者や…
-
労災保険は、労働者を対象とした保険制度ですので、役員や事業主などは労災保険に加入することはできません。しかし、一定の要件を満たす役員や事業主は、特別加入制度に…
-
業務中に機械や器具に挟まれたり巻き込まれたりして、負傷または死亡してしまうケースがあります。このような労働災害の被害にあった場合には、労災保険から補償を受けら…