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労働災害(労災)コラム

労働者災害補償保険法とは? 対象となる労働者や労働災害について解説

更新:2022年12月19日
公開:2022年12月19日
  • 労働者災害補償保険法
労働者災害補償保険法とは? 対象となる労働者や労働災害について解説

「労災」や「労災保険」という言葉を知っている労働者の方も多いと思いますが、その内容を正しく理解している方は、少ないかもしれません。

労災保険は「労働者災害補償保険法」によって定められている制度です。労災保険制度を理解するためには、労働者災害補償保険法の正確な知識と理解が不可欠となります。

本コラムでは、労働者災害補償保険法の概要や労災制度について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、労働者災害補償保険法とは?

労働者災害補償保険法とは、労災保険制度について定めた法律です。労働者の業務災害および通勤災害に対して、迅速かつ公正な保護をするための保険給付や、被災労働者およびその遺族の援護などを行うことによって、労働者の福祉の増進に寄与しようとすることを目的としています。
労災保険制度は、原則として労働者を使用しているすべての事業に強制的に適用されます。労働者を保護するための制度のため、会社が労災保険の保険料を支払っていなかったとしても、労働者は労災保険制度によって保護を受けることができます。

2、労働者災害補償保険法の対象となるのは? すべての労働者が対象?

労働者災害補償保険法の適用対象となるのは、どの範囲の労働者なのでしょうか。

  1. (1)労働者災害補償保険法の適用労働者の範囲

    労働者災害補償保険法は、賃金が支払われる労働者であれば適用されます。そのため、正社員だけでなく、アルバイト、パートタイマー、契約社員、派遣社員、日雇い労働者であっても労働者災害補償保険法が適用されることになります。

  2. (2)労働者以外でも特別加入制度によって労災保険が適用

    特別加入制度とは、業務実態や災害発生状況からみて、雇用されている労働者に準じて保護することがふさわしいとみなされる人に対して、一定の要件のもとに特別に労災保険への加入を認めている制度をいいます。
    対象となるのは、次のような業務に従事している方です。

    • 中小事業主等
    • 一人親方や自営業者
    • 特定作業従事者
    • 海外派遣者


    なお、令和3年からは、上記に加え、芸能関係とアニメーション制作作業従事者、柔道整復師、創業支援等に基づき事業を行う方も対象に含まれます。

3、労働者災害補償保険法における『災害』とは?

労働者災害補償保険法では、どのような場合を労災保険の対象としているのでしょうか。労働者災害補償保険法が適用される『災害』について説明します。

  1. (1)労働者災害補償保険法の災害

    労働者災害補償保険法における災害とは、いわゆる労働災害のことをいい、仕事中や通勤途中の事由により負傷、疾病、障害、死亡した場合のことをさします。

    労働者災害補償保険法の対象となる災害かどうかは、「業務遂行性」と「業務起因性」という二つの要件によって判断します。
    業務遂行性」とは、労働契約に基づいて労働者が使用者の支配下にあることをいい、
    業務起因性」とは、業務と負傷などとの間に因果関係があることをいいます。
    これらの要件は個別の事案ごとに判断され、労働基準監督署長が認定します。

  2. (2)労働災害の種類

    労働災害には、「業務災害」と「通勤災害」の二種類が存在します。

    ① 業務災害
    業務災害とは、労働者が業務中の事由が原因となって、負傷、疾病、障害、死亡した場合をいいます。たとえば、就業時間中に機械の操作を誤って指を切断してしまった場合や、棚の資料をとろうとして椅子から転倒してケガをしたといった場合が、業務災害の典型的なケースです。

    就業時間中は、事業者による支配下による災害といえますので、特別の事情がない限り業務災害といえます。また、休憩時間中であっても会社の施設や設備が原因となって負傷した場合については、業務に内在する危険が現実化したといえますので、これについても業務災害と認められます。
    ただし、就業時間中であっても、私的な行為や業務とは無関係な事由によって負傷した場合には、業務災害とは認められません。

    ② 通勤災害
    通勤災害とは、労働者が通勤途中の事由が原因となって、負傷、疾病、障害、死亡した場合をいいます。通勤災害と認められるためには、労働者が勤務のため、次のような移動を合理的な経路および方法によって行ったうえで発生した災害といえることが必要になります。

    • 住居と勤務場所との間の往復
    • 勤務場所から他の勤務先への移動
    • 住居と勤務場所の往復に先行もしくは後続する住居間の移動


    たとえば、仕事帰りに同僚と居酒屋に寄って、その帰りに事故にあった場合は、合理的な経路を逸脱しているといえますので、通勤災害とは認められません。ただし、帰宅途中に食料品や日用品の買い物のためにお店に寄ったなど、その行為がやむを得ない最小限度のものと認められる場合、合理的な経路に戻った後に発生した事故に関しては通勤災害として認められる可能性があります。

4、労働者災害補償保険法に基づく給付と申請

労働者災害補償保険法に基づいて労災申請をすると、同法が定める保険給付を受けることができます。

  1. (1)労災保険による給付内容

    労働災害の被害を受け、労災認定を受けた場合には、労災保険から保険給付を受けることができます。

    ① 療養(補償)給付
    業務災害または通勤災害による傷病を療養するために必要な、治療費、入院費用などの費用が給付されます。

    ② 休業(補償)給付
    業務災害または通勤災害による傷病のために労働をすることができず、給料の支払いを受けられないときには、休業4日目から休業1日につき給付基礎日額の60%相当額が給付されます。さらに、特別支給金として、休業4日目から休業1日につき給付基礎日額の20%相当額が給付されますので、合計で80%相当額が給付されることになります。

    ③ 障害(補償)給付
    業務災害または通勤災害による傷病が治った後、障害等級第1級から第7級に該当する障害が残った場合には、障害の程度に応じて年金が給付されます。また、障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残った場合には、障害の程度に応じ一時金が給付されます。

    ④ 遺族(補償)給付
    業務災害または通勤災害によって労働者が死亡した場合には、一定の範囲の遺族に対して年金または一時金が給付されます。

    ⑤ 傷病(補償)年金
    業務災害または通勤災害による傷病が、療養開始後1年6か月を経過しても傷病が治癒せず、傷病による障害の程度が傷病等級に該当する場合には、障害の程度に応じて給付基礎日額の245日分から313日分の年金が給付されます。

    ⑥ 介護(補償)給付
    傷病補償年金または障害補償年金受給者のうち、第1級または第2級の人であって、現に介護を受けている場合には、介護(補償)給付が支給されます。
  2. (2)労働者災害補償保険法に基づく申請方法

    労働者災害補償保険法に基づく給付内容には、前述したとおりさまざまなものがあり、被災労働者に対しては手厚い補償となっています。ただし、労働者災害補償保険法に基づく給付を受けるためには、給付を受ける補償の種類に応じた所定の請求書に必要事項を記入して、労働基準監督署に提出する必要があります。

    労働基準監督署では、請求書の内容をふまえて調査をし、業務災害または通勤災害に該当すると判断した場合には、保険給付が決定されます。
    労働者災害補償保険法に基づく申請は、原則として被災労働者本人が行わなければなりませんが、多くの企業では、労働者の負担軽減の観点から申請手続きの代行をしているので、確認をしてみるとよいでしょう

5、会社から労働者災害補償保険法の適用外といわれた場合

業務上または通勤途中の事由によって負傷などしたため、労災申請をしようとしても会社から「労働者災害補償保険法の適用外」といわれ、必要書類の作成への協力を断られることがあります。このような場合には、どのように対処したらよいのでしょうか。

  1. (1)労災隠しは犯罪

    いわゆる、労災隠しとは、労働災害が発生したにもかかわらず、会社が労働基準監督署に対し労働死者傷病報告を提出しない、虚偽内容を記載するなどして労働災害発生の事実を隠そうとする行為のことをいいます。
    労災隠しは、労働安全衛生法第100条に違反する行為であるため、労災隠しをした事業者に対しては、50万円以下の罰金が科されます(労働安全衛生法 第120条 第5号)。

    このように労災隠しは犯罪であるにもかかわらず、労災保険の保険料が上がることや労災調査による違反発覚をおそれて、意図的に労災隠しがなされることがあります。しかし、労働者災害補償保険法による労災保険制度は、労働者保護のための制度ですので、労働者の側から会社に対して強く対応を求めていくことが大切です。

  2. (2)労働基準監督署へ相談

    労災申請は、会社の協力がなければできないと誤解している労働者の方もいますが、労災申請は、会社を経由することなく、労働者が直接労働基準監督署に申請することも可能です。

    会社に労災申請を求めても積極的に協力してくれないという場合には、労働者ご自身で申請をしてみましょう。労働基準監督署で申請に必要な書類の取得と記入方法の指導を受けることができます。不明な点などがある場合は質問することもできるので、会社の協力を待たずに対応進めることをおすすめします。
    また、社会保険労務士のなかには、労災の申請を代行している事務所もあるので、相談してみるのも一案です。

6、まとめ

労働者災害補償保険法に基づく労災保険制度は、被災労働者にとって非常に大切な補償です。労働災害にあった場合には、所定の手続きを踏み、必ず保険給付を受けるようにしましょう。
なお、労災保険による給付だけでは十分な補償とはいえませんので、慰謝料等の不足する部分については、弁護士によるサポートのもと会社に対して損害賠償請求することも検討できます
会社に対して損害賠償請求をしたいと考えている労働者の方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

※記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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