ベリーベスト法律事務所
労働災害(労災)コラム

労災でのケガの療養中に休みすぎと言われた! 会社に対して求められることは?

更新:2023年10月10日
公開:2023年10月10日
  • 労災
  • 休みすぎ
労災でのケガの療養中に休みすぎと言われた! 会社に対して求められることは?

労災による怪我や病気により、仕事を休むことになったときは、労災保険から休業(補償)給付により休業中の賃金が補填されます。これにより、労災でのケガの療養中も経済的な不安なく、治療に専念することができます。

しかし、労災でのケガの療養期間が長くなると会社からは「休みすぎ」と言われてしまうケースもあるようです。このような場合、会社から解雇されるのではないかと不安になる方もいるかもしれません。

今回は、労災でのケガの療養中に休みすぎと言われたときの対応や、労災の原因が会社にある場合にすべきことについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、労働災害による療養中に休みすぎと言われたらすべきこと

労災によるケガの療養中に会社から休みすぎと言われたときは、どのような対応をすればよいのでしょうか。

  1. (1)療養中はいつまで休んでよいのか

    労災により怪我や病気になった場合には、療養のために会社を休むことができます。そして、労災でのケガの療養中は、労災保険から休業(補償)給付というお金が支払われますので、経済的な不安なく療養に専念することができます。

    療養中としていつまで休めるのかは、休業(補償)給付がいつまで支払われるかに関係してきますが、休業(補償)給付が支払われる期間については、上限はなく、被災労働者の傷病が治癒するまで支払われます

    したがって、傷病が治癒して、仕事に復帰できる状態になるまでは、仕事を休んで療養に専念することができます。

  2. (2)療養中の休業は欠勤扱いになるのか

    仕事中の出来事が原因となって、労働者が怪我や病気になることを「業務災害」といいます。

    業務災害により、労働者が休業した場合には、使用者には、以下のような義務が課されます。

    • 療養補償、休業補償、障害補償などの補償を行うこと
    • 年次有給休暇を付与する際の出勤率の算定について、出勤したものと扱うこと


    したがって、業務災害であった場合には、有給休暇の出勤率算定においては欠勤ではなく、出勤扱いになります(労働基準法39条10項)。

    ただし、賞与の支払いに関しては、会社が自由に決めることができますので、療養中の休業を欠勤扱いにすることも認められています。

  3. (3)会社から出勤や退職を求められたときできる対応

    労災による休業期間が長くなると会社からは「仕事ができないなら辞めてもらいたい」などと退職を求められることがあります。

    しかし、労働基準法では、業務災害により労働者が休業している間およびその後30日間の解雇が禁止されています(労働基準法19条1項)。そのため、休業中に退職を求められた場合には、応じる義務はないですし、労働基準法の規定を根拠に、解雇はできないこととなっています

    また、会社から出勤を求められたとしても、怪我や病気が治癒していない状況であれば、療養の必要性があることを理由に出勤を拒むこともできます。

2、療養休業中に労災保険から補填されるお金

労災による療養休業中には、労災保険からどのようなお金が支払われるのでしょうか。

  1. (1)療養休業中には休業(補償)給付が支払われる

    労災により会社を休んでいる間は、労災保険から休業(補償)給付が支払われます。ただし、休業(補償)給付は、仕事を休んだ日から支払われるのではなく、休業4日目から支払われるという点に注意が必要です。

    また、休業(補償)給付として支払われる金額は、特別支給金を含めると給付基礎日額の80%の金額になります。そのため、仕事を休んでいたとしても80%の収入が補償されるといえますので、ある程度経済的な不安なく療養に専念することができるでしょう。

    なお、給付基礎日額とは、原則として労災発生日以前の3か月の賃金総額をその期間の総日数で除した金額になります。

  2. (2)労災保険から支払われるその他の補償

    休業(補償)給付以外にも労災保険からは、以下のような補償が支払われます。

    ① 療養(補償)給付
    療養(補償)給付により、労災指定病院を受診すれば、窓口での医療費の負担なく治療を受けることができます。労災指定病院以外では、一旦窓口で医療費の負担をしなければなりませんが、後日申請することで支払った医療費の還付を受けることができます。

    ② 傷病(補償)年金
    労災による傷病の治療を開始してから1年6か月を経過しても、傷病が治らず、傷病等級1~3級に該当する場合には、休業(補償)給付に代えて傷病(補償)年金が支払われます。

    ③ 障害(補償)給付
    労災による傷病が治癒し、身体に一定の障害が残った場合には、障害(補償)給付が支払われます。障害(補償)給付の内容としては、障害等級1~7級に該当する場合には障害(補償)年金が、障害等級8~14級に該当する場合には障害(補償)一時金が支払われます。

    ④ 遺族(補償)給付
    労災により労働者が死亡した場合には、一定の範囲の遺族に対して、遺族(補償)年金または遺族(補償)一時金が支払われます。

    ⑤ 葬祭料(葬祭給付)
    労災により亡くなった労働者の葬儀を行った人に対して、葬祭料(葬祭給付)が支払われます。葬祭料(葬祭給付)は、以下のうちいずれか高い方の金額が支払われます。

    • 31万5000円+給付基礎日額の30日分
    • 給付基礎日額の60日分


    ⑥ 介護(補償)給付
    傷病(補償)年金または障害(補償)年金の受給者のうち、傷病・障害等級が1級または2級で実際に介護を受けている場合には、介護(補償)給付が支払われます。

3、労災事故発生の原因が会社にあるときすべきこと

労災事故の原因が会社にある場合には、以下のような対応を検討する必要があります。

  1. (1)弁護士に相談する

    労災事故発生の原因が会社にある疑いがある場合には、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

    労災により怪我や病気になった労働者には、労災保険から一定の補償が支払われますが、労災保険からの補償には慰謝料が含まれないなど一部補償されないものがあります。労災保険からの補償で支払われない部分については、当該労災事故に責任がある会社に対して請求することが可能です。

    ただし、会社への損害賠償請求の可否については、法的判断が必要な事項となりますので、まずは弁護士に相談して、そもそも会社への請求が可能なのか、どのような請求ができるのか、証拠はどのように集めればよいのかなどのアドバイスを受けるとよいでしょう。

  2. (2)労災事故の原因について証拠を集める

    会社に労災事故の原因があるということは、労働者の側で証明しなければなりません。そのため、会社への損害賠償請求をする前に、会社の責任を立証できる十分な証拠を集めることが重要です。

    たとえば、長時間労働による疲労の蓄積で労災事故が発生したような難しいケースでは、タイムカード、業務日報などの労働実態を把握する資料が証拠となります。また、機械の整備不良により労災事故が発生したようなケースでは、機械の整備記録や点検記録などが証拠になります。

    どのような証拠が必要になるかは、労災事故の態様によってケース・バイ・ケースですので、ご自身で判断できない場合には、弁護士に相談するようにしましょう。

  3. (3)会社に対して損害賠償請求をする

    会社に労災事故の責任がある場合、慰謝料などの損害賠償を請求できる可能性があります。その際、主に「使用者責任」と「安全配慮義務違反」という2つの法律構成によって請求をしていきます。

    使用者責任とは、簡単にいえば、労働者が不注意で他の労働者に怪我をさせてしまった場合は、その労働者を雇用する会社も責任を負うというものになります。これは、会社が労働者を使用して利益を得ている以上、業務中に発生するリスクについても負担すべきという考え方に基づいています。

    安全配慮義務とは、会社が労働者に対して負っている義務のひとつであり、労働者の生命および安全を危険から保護するよう配慮すべき義務をいいます。労働者に対して必要な安全措置を講じることなく危険が業務に従事させた結果、労災事故が発生したようなケースでは、会社に安全配慮義務違反が認められる可能性があります。

4、会社に損害賠償を請求するとき弁護士を依頼するメリット

会社に対する損害賠償請求をお考えの方は、弁護士に依頼することをおすすめします。

  1. (1)あなたの代理人として交渉から訴訟まで対応可能

    弁護士に依頼すると、弁護士が労働者本人に代わって会社との交渉や訴訟まで対応することができます。

    労働者本人の交渉では、責任を否定されたり、労働者側の落ち度を指摘されたりするなどされると、どのように対応すればよいかわからず、不利な条件で示談に応じてしまうリスクが高くなります。そのようなリスクを回避し、精神的負担を軽減するためにも、会社との対応は弁護士に任せるのが安心といえるでしょう。

  2. (2)不当解雇などの不利益を回避できる

    労災により仕事を休んでいると「休みすぎ」などと言われて、会社を解雇されてしまうケースもあるようです。

    しかし、労働基準法では、業務災害による療養期間中の解雇は禁止されています。そのため、法的根拠を示して交渉をすることで解雇などの不利益を回避できる可能性があります。

    弁護士に依頼をすれば、労災対応のほかにも、会社からの不利益処分の対応も任せることができます。

  3. (3)適切な慰謝料等を請求できる

    会社への損害賠償請求にあたっては、労災保険からの休業(補償)給付では足りない部分の給与、障害等級に応じた慰謝料、リハビリ代などの請求をすることができますが、正確な金額を算定するには、弁護士のサポートが不可欠といえます

    複雑な損害額の計算を適切に行うためにも、損害賠償請求をお考えの方は、弁護士に依頼することをおすすめします。

5、まとめ

たとえ会社から「休みすぎ」といわれても、労災により怪我や病気になった場合には、労働者は療養のために仕事を休む権利があります。療養中は、労災保険から休業(補償)給付が支払われますので、長期間の療養になっても治療を続けることができます。

もっとも、労災保険からの補償は、あくまでも一定程度の補償に過ぎませんので、労災保険からの補償で補われない部分については、会社への損害賠償請求を検討する必要があります。その際には、実績ある弁護士のサポートが重要です。まずは、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

※記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

同じカテゴリのコラム

労働災害(労災)コラム一覧はこちら