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労働災害(労災)コラム

本人が労災申請するデメリットとは? 労災保険を使うべき理由を解説

更新:2025年02月06日
公開:2025年02月06日
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本人が労災申請するデメリットとは? 労災保険を使うべき理由を解説

仕事中や通勤中に傷病を負ってしまった場合には、労働基準監督署の労災認定を受けることで労災保険から補償が支払われます。

労災申請は、労働者本人で行うことができますが、申請書類の作成や資料の収集の負担が大きいため、自分で対応するのが難しいと感じる方もいるかもしれません。また、労災保険を使うとデメリットがあるのではないかと思い、労災保険の申請を躊躇してしまう方もいるようです。

労災保険を使用することで得られるメリットにはさまざまなものがありますので、労災保険に関する不安や誤解を解消して、しっかりと手続きを行うことが大切です。

今回は、本人が労災申請するデメリットと労災保険を使うべき理由などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、労災申請の流れと本人が手続きを行うことによるデメリット

以下では、労災申請の基本的な流れと本人が労災申請の手続きを行うことによるデメリットを説明します。

  1. (1)労災申請の基本的な流れ

    仕事中や通勤中に傷病を負ってしまった場合には、労災申請をすることで一定の補償を受けることができます。労災申請の基本的な流れは、以下のとおりです。

    ① 労災が発生したことを会社に報告
    会社は、労災が発生すると労働基準監督署に対し、「労働者死傷病報告」を提出する必要があります。そのため、労災が発生したときは、まずはその旨を会社に報告するようにしてください。

    ② 病院を受診して治療を行う
    労災により傷病を負った場合、治療のために病院を受診します。
    労災による傷病の治療は、労災保険指定医療機関を受診するのがおすすめです。なぜなら、労災保険指定医療機関であれば、労災保険から病院に直接医療費が支払われますので、労働者本人が窓口で医療費の負担をする必要がないからです。
    他方、労災保険指定医療機関以外の病院でも労災の治療を受けることができますが、一旦は労働者本人が窓口で医療費(健康保険を利用することができないため、10割負担となります)の負担をし、後日労災保険から還付を受けるという手間がかかります。

    ③ 労災申請書類の作成
    労災申請をする際には、補償に応じた申請書を作成する必要があります。労災申請に必要となる書類としては、以下のようなものがあります。

    労災保険指定医療機関を受診する場合
    ・「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」(業務災害の場合)
    ・「療養給付たる療養の給付請求書(様式16号の3)」(通勤災害の場合)

    労災保険指定医療機関以外を受診する場合
    ・「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)」(業務災害の場合)
    ・「療養給付たる療養の費用請求書(様式16号の5)」(通勤災害の場合)
    ・治療費などの領収書

    休業(補償)給付を受ける場合
    ・「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」(業務災害の場合)
    ・「休業給付支給請求書(様式第16号の6)」(通勤災害の場合)
    ・賃金台帳、出勤簿の写しなど

    障害(補償)給付を受ける場合
    ・「傷害補償給付支給請求書(様式第10号)」(業務災害の場合)
    ・「傷害給付支給請求書(様式第16号の7)」(通勤災害の場合)
    ・後遺障害診断書、レントゲン写真など


    ④ 労災申請書類の提出
    労災申請書類の作成ができたら、その書類を労働基準監督署に提出します。
    なお、労災指定医療機関を受診した場合、療養補償給付の申請書は、労働基準監督署ではなく病院の窓口に提出します。

  2. (2)労災申請の手続きを本人が行うデメリット

    労災申請は、労働者本人で行うことができる手続きです。
    しかし、労災による傷病を負い、療養をしている状況で労災申請書類の作成や資料の収集をしなければならないのは労働者にとっては大きな負担となります。また、提出する書類や資料に不足や誤りがあると適切な補償を受けられないリスクもあります。
    このような負担やリスクを回避するには、労災申請の手続きを弁護士に依頼するのがおすすめです。弁護士に労災申請の手続きを依頼すれば、適切な補償が受けられ、労働者本人は治療に専念することが可能になります。

2、労災保険を使用することで得られるメリットは多い

労災保険を使用することで得られるメリットにはさまざまなものがあり、労災保険を使用して労働者本人にデメリットや不利益が及ぶことはありません。そのため、労災による傷病を負ったときは、必ず労災保険を使用しましょう。

  1. (1)労災保険を使用するメリット

    労災保険を使用するメリットには、さまざまなものがありますが、代表的なメリットを挙げると以下のようなものがあります。

    ① 労災保険から手厚い補償が受けられる
    労災保険から受けられる補償には、以下のようなものがあります。

    • 療養(補償)給付
    • 休業(補償)給付
    • 傷病(補償)年金
    • 障害(補償)給付
    • 遺族(補償)給付
    • 葬祭料(葬祭給付)
    • 介護(補償)給付


    傷病で通院するときの治療費、会社を休んだときの給料、障害が残ってしまったときの補償などさまざまな補償があり、非常に手厚い内容となっています。このような補償が受けられることで安心して治療に専念することができるでしょう。

    ② 労働者に落ち度があっても過失割合の影響を受けない
    たとえば、通勤中の交通事故であれば加害者の任意保険からも補償を受けることができます。
    しかし、交通事故の発生に関して被害者にも過失がある場合、過失相殺が行われ、被害者の過失割合に相当する金額が賠償額から控除されてしまいます。
    交通事故被害者救済を目的とし、最低限の補償をしてくれる自賠責保険も、被害者の過失が大きい(7割以上)と、保険金が減額されてしまいます。
    これに対して、労災保険からの補償は、被害者に過失があったとしても過失相殺は行われませんので、過失割合の影響なく補償を受けることができます。
    そのため、通勤中の交通事故に遭った場合に労働者本人の過失が大きいときは、相手方の任意保険や自賠責保険ではなく労災保険を優先的に利用するのが望ましいでしょう。
    また、労災保険の他に相手方の任意保険や自賠責保険からの補償を受ける際は、同一の補償項目を二重、三重で補償されるわけではありませんので調整が必要となります。

    ③ 治療費の自己負担がない
    一般的に傷病の治療をする場合、病院の窓口で健康保険を利用することで、治療費の自己負担を1~3割に抑えることができます。
    しかし、労災による傷病であれば労災保険を利用することで、治療費の自己負担なく治療を行うことができます。労災保険の療養(補償)給付は、診察、薬剤の投与、手術、自宅での看護なども対象となっていますので、幅広い補償を自己負担なく受けることができます。

  2. (2)労災保険からの補償だけではすべての損害は回復できない

    労災保険からの補償は、上記のとおりさまざまなものがあり非常に手厚い内容となっています。
    しかし、労災保険の補償には、労働者本人が労災事故により被った精神的苦痛に対する慰謝料が含まれておらず、障害が残った場合の補償(逸失利益)も十分なものとはいえません。また、会社を休んだときの補償も支払われますが、給料の全額ではありません。
    このように労災保険からの補償だけではすべての損害は回復できませんので、労災保険からの補償だけで満足してはいけません。労災事故に関して会社に責任がある場合には、会社に対する損害賠償請求が可能ですので、労災保険からの補償だけでは足りない部分については、会社に請求していくようにしましょう。

完全成功報酬
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初回相談料・着手金0
ご相談の流れ
  • 労災保険への不服申立てを行う場合、訴訟等に移行した場合は別途着手金をいただくことがあります。
  • 事案の内容によっては上記以外の弁護士費用をご案内することもございます。
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3、会社との示談交渉・損害賠償請求を被災者本人が行うときの注意点

以下では、労災保険からの補償だけでは足りない部分を会社に請求する際の流れと被災労働者本人で行うときの注意点を説明します。

  1. (1)労災保険の不足分を会社に請求する流れ

    労災保険からの補償では足りない部分を会社に対して請求する場合、以下のような流れで進めていきます。

    ① 会社側の責任の検討
    会社に対して損害賠償請求をするには、会社に労災事故の発生の責任があるといえなければなりません。労災認定を受けただけでは足りず、会社側に「安全配慮義務違反」または「使用者責任」があるかどうかの検討が必要になります。

    ② 証拠収集
    会社側に労災事故発生の責任があることは、労働者側で立証していかなければなりません。証拠がなければ、労災の責任を否定する会社から賠償金の支払いを受けるのは困難ですので、会社に請求する前にしっかりと証拠を集めておくことが大切です。

    ③ 会社との交渉
    証拠が集まった段階で会社との交渉を行います。会社が労災の責任を認めているのであれば、損害額や支払い方法などの詳細を決めていくことになりますが、会社が責任を否定している場合には、証拠に基づいて会社側に責任があることを説得していく必要があります。

    ④ 労働審判・裁判
    会社との交渉では解決が難しいときは、裁判所に労働審判を申し立てたり、損害賠償請求訴訟を提起します。労働審判や訴訟では、裁判所が証拠に基づいてどちらの言い分が正しいかを判断し、労働者側の言い分が認められれば、賠償金の支払いを命じる審判や判決が出されます。

  2. (2)会社への損害賠償請求をお考えの方は弁護士に相談を

    示談交渉や損害賠償請求を被災労働者本人が行うことは可能です。しかし、労働者個人で会社を相手にしなければならないとは大きな負担となりますし、会社によっては誠実に対応してくれない可能性もあります。また、会社側の責任の有無を判断するには、法的知識や経験が不可欠となりますので、労働者本人では正確な判断は難しいといえるでしょう。
    そのため、会社への損害賠償請求をお考えの方は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば法的観点から会社の責任の有無を判断することができ、会社への責任追及が可能な事案であれば労働者の代理人として、会社との交渉や裁判手続に対応することが可能です。
    ご自身の負担を最小限に抑えつつ、適切な賠償金の支払いを受けるには、弁護士のサポートが必要になりますので、まずは弁護士にご相談ください。

4、労災保険の給付を受けるにあたって、よくある質問

労災保険を使うと「何か不利益があるのでは?」と考える方も少なくありません。そこで、以下では労災保険の給付を受けるにあたってよくある質問とその回答を紹介します。

  1. (1)会社からの評価が下がることはある?

    労災保険を使用するのは労働者としての当然の権利ですので、そのことを理由に評価が下がることはありません。もし、労災保険を使用したことで評価を下げられてしまったら、不当な処分といえますので争っていくことが可能です。

  2. (2)ボーナスの金額に影響が生じる?

    労災保険を使用したこと自体でボーナスが減るということはありません。
    しかし、労災による傷病の治療のために会社を休んだことで、ボーナスの支給条件である出勤日数・出勤率が減少した場合には、ボーナスが減額される可能性があります。

  3. (3)他の補償が受けられなくなるおそれはある?

    補償の二重取りはできませんので、他の補償が労災による補償と同趣旨の物である場合には、二重取りを防止する目的で、すでに受けた労災からの補償の分について他の補償を受けることはできなくなります。
    しかしながら、趣旨が違う補償については、労災保険を使用したことで、補償が受けられなくなるということはありません。

  4. (4)弁護士に相談すべきと言われる理由とは?

    労災が発生した場合、労災保険の申請だけではなく、会社への損害賠償請求も問題となります。会社への損害賠償請求をするためには、会社側の法的責任の有無を検討しなければならず、それには法律の専門家である弁護士のアドバイスやサポートが不可欠となります。
    そのため、労災により傷病を負った場合には、早めに弁護士に相談した方がよいでしょう。

5、まとめ

労災保険を使用するとさまざまな補償が受けられますので、労災保険を使用することによるデメリットはほぼありません。労災保険の申請は、労働者本人で行うこともできますが、書類の作成や収集の負担がありますので、治療に専念するためにも弁護士に対応を委ねるのがおすすめです
労災申請や会社への損害賠償請求をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
外口 孝久
外口 孝久
プロフィール
外口 孝久
プロフィール
ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士
所属 : 第一東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 49321

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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