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労働災害(労災)コラム

労災指定病院とは? 受診方法や必要書類、一般病院との違いを解説

更新:2025年07月24日
公開:2025年07月24日
  • 労災指定病院
労災指定病院とは? 受診方法や必要書類、一般病院との違いを解説

労災指定病院とは、都道府県労働局長によって指定された医療機関です。労災による怪我や病気の治療をする場合、労災指定病院を受診すれば、窓口での自己負担なく治療を受けることができるなどのメリットがあります。

被災労働者にとっては、労災指定病院を受診した方が手続き的な負担も小さいため、労災の被害に遭ったときは、最寄りの労災指定病院を探して受診するとよいでしょう。

本記事では、労災指定病院の仕組みや、一般病院との違い、労災指定病院に切り替える手続きなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

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1、労災指定病院とは?

労災指定病院とはどのような病院なのでしょうか。以下では、労災指定病院の特徴と役割、労災病院との違いについて説明します。

  1. (1)労災指定病院の特徴と役割

    労災指定病院(正式名称:労災保険指定医療機関)は、都道府県労働局長が指定した医療機関です。
    労災で負った傷病の治療を受ける際、労災指定病院であれば、労災保険による療養(補償)給付を現物給付(医療行為)という形で受けられるため、窓口で自己負担をする必要がありません。
    なお、病院や診療所が労災指定病院になるには、都道府県労働局にその旨の申請する必要があります。

  2. (2)労災病院との違い

    労災指定病院と似た病院に「労災病院」というものがあります。名称が似ているため、両者を混同してしまうことも多いです。これらは運営元や指定の仕組みに違いがあります。
    労災指定病院は、一般の病院や診療所が都道府県労働局長の指定を受けたものですが、労災病院は、独立行政法人労働者健康安全機構が運営する、労働者の健康管理や労災治療を専門とした病院になります
    どちらも無償で労災の治療を受けられますので、被災労働者にとっては両者の違いはあまり気にしなくてもよいでしょう。

2、労災指定病院を受診するメリット

労災による怪我や病気の治療で労災指定病院を受診すると、以下のようなメリットが得られます。

  1. (1)治療費の全額一次負担(立て替え)が不要

    労災指定病院では、労災保険による療養(補償)給付を現物給付(医療行為)という形で受けられるため、窓口で治療費を自己負担する必要はありません
    一方、労災指定病院以外の医療機関では、一度、被災労働者が窓口で治療費を立て替えなければなりません。その際は、健康保険が使えないため10割負担の金額となりますので、一時的とはいっても高額な治療費の負担が必要になります。
    このように労災指定病院を受診すれば、被災労働者の経済的な負担を軽減できるというメリットが得られます。

  2. (2)労災補償の手続きが簡単にできる

    労災指定病院を受診する場合、「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」または「療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3)」を提出するだけで、無償で治療を受けることができますので、手続き的な負担はほとんどありません

    一方、労災指定病院以外の医療機関では、病院で支払った治療費の領収書などを添付して、「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)」または「療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5)」を病院及び事業主に提出して証明を受けた後、労働基準監督署に申請し、後日払い戻しを受ける必要があります。
    このように労災指定病院を受診すれば、労災指定病院だけで手続きが完結しますので、簡単に手続きを終えることができます。

3、労災指定病院で治療を受ける方法

労災指定病院で治療を受けるには、どのようにすればよいのでしょうか。以下では、労災指定病院で治療を受ける方法について説明します。

  1. (1)必要書類を用意する

    労災指定病院で治療を受けるには、まずは、以下の書類を用意する必要があります。

    • 療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号:業務災害の場合)
    • 療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3:通勤災害の場合)


    これらの書類は、事業主(勤務先)を通じて取得するか、厚生労働省のウェブサイトからダウンロードすることができますし、労災指定病院に用意があることも多いでしょう。
    なお、上記書類には、事業主の証明が必要になりますので、労災医療病院に提出する前に、事業主に提出して証明を受けるようにしてください。

    また、精神疾患(適応障害、うつ病、PTSDなど)の治療を労災指定病院で受けるためには、通常の傷病の療養給付請求書に加えて、診断書や労災認定のための追加資料が必要です。
    うつ病などの精神疾患で労災認定を受ける要件や申請方法について詳しくはこちらをご覧ください。

    【関連記事】
    うつ病等の精神疾患の方
  2. (2)窓口で伝えること

    労災指定病院を受診する場合には、窓口で労災治療であるということを必ず伝えるようにしてください。
    労災指定病院では、労災以外の怪我や病気の治療のために多くの患者がやってきます。病院側では、患者の怪我の原因が労災かそれ以外かはわかりませんので、患者側から労災治療であるということを伝えなければなりません。
    労災の治療では、健康保険が使えませんので、労災治療であることを伝え忘れて健康保険を利用してしまうと労災保険への切り替え手続きが必要になりますので注意しましょう

  3. (3)労災保険が適用できる費用の範囲

    労災による怪我や病気の治療で、労災保険が適用される費用には、以下のようなものがあります。

    • 診察代
    • 手術費用
    • 投薬費用
    • リハビリテーション費用
    • 入院費用
    • 食事代
    • 交通費(移送費)


    ただし、労災による治療で支出したお金であったとしても、以下のような費用は労災保険の対象外です。

    • 個室の入院代
    • タオルやテレビカードなどの物品代、備品の利用料
    • 診断書の作成費用(一部の場合を除く)
  4. (4)労災認定を受ける前に受診したい場合

    労災認定前でも、緊急の応急処置が必要な場合には、労災指定病院で治療を受けられることがあります。ただし、労災認定が確定する前に治療を受けた場合、労災が認定されなかった際には自己負担(健康保険の適用)となる可能性があり注意が必要です。
    事前に労災指定病院や労働基準監督署に、労災申請中であることを伝え、保険対応可能かどうかを確認しましょう。

4、一般病院との違いや切り替え方法

労災指定病院ではなく、一般病院を受診している方は、労災指定病院に切り替えることもできます。ここでは、労災指定病院と一般病院との違い、一般病院から労災指定病院に切り替える方法について説明します。

  1. (1)労災指定病院と一般病院との違い

    労災指定病院と一般病院の主な違いとしては、以下のようなものがあります。

    労災指定病院 一般病院
    治療費の負担 不要 一時的に全額の立て替えが必要
    手続方法(必要書類の様式) 直接病院で完結
    • 療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号:業務災害の場合)
    • 療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3:通勤災害の場合)
    労働基準監督署への申請が必要
    • 療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)
    • 療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5)
    給付方法 現物給付(医療行為) 費用給付(後日払い戻し)
    病院の選択肢 狭い 広い


    ① 治療費の負担
    労災指定病院であれば、現物給付(医療行為)という形で労災保険から補償が受けられますので、病院の窓口において治療費を負担する必要はありません。
    他方、一般病院だと費用給付という形になります。健康保険が使えませんので、いったんは被災労働者が治療費全額を負担しなければなりません。

    ② 手続き方法(必要書類の様式)
    労災指定病院を受診する場合に必要になる請求書の様式は、以下のとおりです。

    • 療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号:業務災害の場合)
    • 療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3:通勤災害の場合)


    手続きは、病院内で完結します。
    一方、一般病院を受診する際に必要になる請求書の様式は、以下のとおりです。

    • 療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)
    • 療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5)


    こちらの手続きは、労働基準監督署への申請が必要になります。

    ③ 給付方法
    労災指定病院は、現物給付という方法で労災保険から補償が受けられますが、一般病院は、立て替えて支払った治療費が後日支給される費用給付という方法になります。

    ④ 病院の選択肢
    労災指定病院は、一般病院のうち都道府県労働局長による指定を受けた医療機関ですので、労災指定病院と一般病院を比較すると、労災指定病院の方が数は少ないため、選択肢が狭くなります。

  2. (2)一般病院から労災指定病院に切り替える方法

    労災の治療を受けている病院を一般病院から労災指定病院に切り替えることは可能です。そうすることで窓口での治療費の負担がなくなりますので、特別な理由がなければ労災指定病院に切り替えるのがおすすめです。

    なお、一般病院から労災指定病院に切り替えるには、変更後の労災指定病院に「療養補償給付たる療養の給付請求書」(様式第5号)または「療養給付たる療養の給付請求書」(様式第16号の3)を提出する必要があります。

  3. (3)労災指定病院から別の労災指定病院に変更する方法

    労災指定病院から別の労災指定病院に治療先を変更することも可能です。帰郷などの理由で治療先を変更する必要がある場合に活用できます。

    労災指定病院から別の労災指定病院に切り替えるには、変更後の労災指定病院に「療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届」(様式第6号)または「療養給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届」(様式第16号の4)を提出してください。

5、近くの労災指定病院の探し方

以下では、近くの労災指定病院の探し方について説明します。

  1. (1)厚生労働省の検索ツールを利用する

    労災指定病院は、厚生労働省のホームページにある「労災保険指定医療機関検索」を利用すれば、簡単に調べることができます

    労災保険指定医療機関検索ツールでは、以下の項目から労災指定病院を検索することが可能です。

    • 医療機関の名称から検索
    • 所在地から検索
    • 診療科目から検索


    なお、傷病の症状によっては長期間の通院が必要になることもありますので、通いやすい場所にある労災指定病院を選んだ方がよいでしょう。

  2. (2)直接医療機関へ問い合わせる

    労災の治療でかかりつけの病院を受診したい場合は、直接かかりつけの医療機関に労災指定病院であるか問い合わせてみましょう。

6、まとめ

労災指定病院であれば、労災の怪我や病気の治療を無償で受けられますので、窓口で治療費を負担する必要がありません。また、労災指定病院に所定の書類を提出するだけで足りるため、手続き的な負担もほとんどありません。
そのため、労災の治療を受けるなら、できる限り労災指定病院を選択したほうが得策です。その際には、通いやすい場所にあるか、労災の治療実績が豊富であるかという観点から選択するとよいでしょう。

労災により生じた損害は、労災保険からの補償だけでなく、会社に対して損害賠償請求が可能なケースもあります。会社への損害賠償請求を検討中の方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者
外口 孝久
外口 孝久
プロフィール
外口 孝久
プロフィール
ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士
所属 : 第一東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 49321

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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