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労働災害(労災)コラム

労災保険の申請で必要な診断書や費用などを弁護士がわかりやすく解説

更新:2024年08月21日
公開:2022年11月14日
  • 労災申請
  • 診断書
労災保険の申請で必要な診断書や費用などを弁護士がわかりやすく解説

労働災害(労災)にあった場合には、労災申請をして労災認定を受けることによって、治療費や休業補償などの労災保険給付を受けることが可能です。

その際、労災保険給付を受ける種類に応じて診断書を取得する必要があります。また、請求内容によって申請書も異なってきますので、適切な申請書を提出して労災申請を行わなければなりません。

今回は、労災保険の申請に必要な診断書や申請の期限、費用などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士がわかりやすく解説します。

1、まず知っておきたい、労災保険給付の種類

労災保険給付にはどのような種類の給付があるのでしょうか。以下では、労災保険給付の基本的な給付内容について説明します。

  1. (1)療養補償給付

    療養補償給付とは、労働者が労災により負傷したり病気になったりしたときに、病院での治療費や入院費などが支給される制度のことをいいます。指定医療機関で療養を受けた場合には、労働者本人の負担なく無料で治療を受けることができます。

  2. (2)休業補償給付

    休業補償給付とは、労災によって療養のため休業したときに、休業4日目から休業1日あたり給付基礎日額の60%相当額の支給を受けることができる制度のことをいいます。このほかにも給付基礎日額の20%が特別支給金として支給されますので、結果的に合計80%の収入が補償されることになります。
    なお、給付基礎日額は、原則として、労災が発生した日以前の3か月分の賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額となります。

  3. (3)障害補償給付

    障害補償給付とは、労災によって病気やケガが治った後、身体に一定の障害が残ったときに、障害等級に応じて年金または一時金の支給が受けられる制度のことをいいます。後遺障害等級が第1級から7級のときは年金の支給、第8級から14級のときは一時金が支給されます。

  4. (4)遺族補償給付

    遺族補償給付とは、労災によって労働者が亡くなったときに、労働者の死亡当時に労働者の収入で生計を維持していた遺族に対して、年金または一時金が支給される制度のことをいいます。遺族補償年金の対象となる遺族がいない場合には、一定の範囲の遺族に遺族補償一時金が支給されます。

2、労災保険の申請で医師の診断書は必要?

労災保険の申請にあたって、医師の診断書が必要になる場合があります。以下では、どのようなケースで診断書が必要になるのかを説明します。

  1. (1)障害補償給付の申請

    治療を継続したものの、これ以上改善が見込めずに障害が残ってしまった場合には、労災保険から障害の程度に応じた障害補償給付を受けることができます。その際には、症状固定時点の障害の有無および程度について医師に診断書を作成してもらう必要があります。

  2. (2)傷病補償年金の申請

    療養開始後1年6か月を経過してもケガや病気が治っていない場合は、1か月以内に「傷病の状態等に関する届(様式第16号の2)」を所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。「傷病の状態等に関する届」の提出の際には、医師の診断書の添付が必要になります。

  3. (3)遺族補償給付の申請

    労災によって労働者が死亡した場合には、遺族補償給付を受けることができます。その際には、労働者が死亡したことを証明するために、医師作成の死亡診断書の添付が必要になります。

  4. (4)葬祭料の申請

    労災によって労働者が死亡し、葬祭を執り行った場合には、葬祭料が支給されます。葬祭料を申請する場合には、所轄の労働基準監督署に、「葬祭料請求書」(様式第16号)と医師作成の死亡診断書を提出する必要があります。

  5. (5)介護補償給付の申請

    介護補償給付の申請をするときには、所轄の労働基準監督署に、介護補償給付・介護給付支給請求書(様式第16号の2の2)を提出する必要があります。その際には、医師作成の診断書を添付しなければなりません。ただし、傷病補償年金の受給者および障害等級第1級3号・4号または第2級2号の2、2号の3に該当する場合は、診断書の添付は不要です。また、継続して2回目以降の介護補償給付を申請する場合にも、診断書は不要です。

3、診断書の作成にかかる費用や期間は?

診断書の作成にかかる費用や期間はどのくらいになるのでしょうか。

  1. (1)診断書の作成費用

    労災の療養のために労災指定病院を受診した場合には、労災指定病院から直接所轄の労働基準監督署に診断書が送られるため、被災労働者が診断書の作成費用を負担する必要はありません
    他方、労災指定病院以外の病院を受診した場合には、被災労働者が一旦立て替えたうえで、後日労災保険に費用請求をすることになります。
    なお、労災指定病院での受診かどうかを問わず、障害補償給付の申請時に添付する診断書については、一旦被災労働者が立て替えて支払う必要があります。領収書を添付して請求をすることによって労災保険からは、4000円が診断書費用として支給されます。

  2. (2)診断書の作成期間

    診断書の作成期間については、病院によって異なりますので、一概にはいえません。一般的には、2週間程度の期間がかかることが多く、後遺障害診断書の作成には、さらに時間がかかることがあります。
    そのため、診断書を取得しようとする場合には、時間に余裕をもってお願いするようにしましょう

4、労災保険の申請で必要となる書類・提出先

労災保険の申請にあたっては、申請する給付内容に応じて提出すべき書類が異なってきます。各書類の記入例については、厚生労働省のサイトを参考にするとよいでしょう。記入方法でわからないことがあれば、最寄りの労働基準監督署に相談をしましょう

  1. (1)受診した医療機関に提出する書類

    労災指定病院を受診した場合には、以下の書類を受診した医療機関に提出します。

    療養補償給付
    • 療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)
  2. (2)所轄の労働基準監督署に提出する書類

    所轄の労働基準監督署に提出する必要がある書類は、以下のとおりです。
    療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)については、労災指定病院以外の病院を受診した場合には、受診した医療機関ではなく、管轄する労働基準監督署に提出する必要があります。

    療養補償給付
    • 療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)
    休業補償給付
    • 休業補償給付支給請求書(様式第8号)
    障害補償給付
    • 障害補償給付支給請求書(様式第10号)
    遺族補償給付
    • 遺族補償年金支給請求書(様式第12号)
    • 遺族補償一時金支給請求書(様式第15号)
    葬祭料請求
    • 葬祭料請求書(様式第16号)
    傷病補償年金
    • 傷病の状態等に関する届(様式第16号の2)
    介護補償給付
    • 介護補償給付・介護給付支給請求書(様式第16号の2の2)

5、労災保険申請の流れ・手順

労災保険のうち療養補償給付の申請から支給までの流れは、以下のとおりです。

  1. (1)労災指定病院を受診する場合

    労働災害が生じた場合には、治療のために病院を受診します。労災指定病院を受診した場合には、事業主から「療養補償給付たる療養の費用請求書」(様式第7号)に証明をもらい、労災指定病院に提出します。
    「療養補償給付たる療養の費用請求書」(様式第7号)は、労災指定病院から労働基準監督署に送られ、労災保険から直接労災指定病院に治療費などが支払われます。そのため、被災労働者が治療費などの費用を負担する必要はありません。

  2. (2)労災指定病院以外を受診する場合

    労災指定病院以外の病院を受診した場合には、一旦は被災労働者が治療費などを立て替える必要があります。
    その後、事業主と病院から「療養補償給付たる療養の費用請求書」(様式第7号)に証明をもらい、労働基準監督署に提出します。
    労働基準監督署では、提出された書類の内容を踏まえて、労働災害である旨の認定をした場合には、被災労働者の指定口座に立て替えて支払った治療費などが支払われます。

6、労災保険の申請でよくある質問

労災保険の申請でよくある質問とその回答についていくつかご紹介します。

  1. (1)誰が労災保険の申請を行うのか?

    労災保険の申請は、被災労働者本人の負担を軽減するために、会社が行うことが一般的です。もっとも、会社にお願いをしたものの手続きを行ってくれない場合には、被災労働者本人が労災保険の申請を行っても問題ありません。会社が事業主証明を拒否するなどの場合には、事業主の証明がなくても労災保険の申請を受理されます。
    被災労働者に労災によって重度の障害が残っていたり、死亡したりしている場合には、本人に代わって、家族や遺族が労災保険の申請をすることになります。

  2. (2)労災保険の申請に期限はあるのか?

    労災保険の申請には、時効がありますので一定の期間が経過した場合には権利を行使することができなくなります。労災保険の給付内容によって、以下のとおり時効期間が異なりますので、期限が過ぎてしまわないように注意しましょう

    ① 療養補償給付
    療養費用を支出した日ごとに請求権が発生しますので、その翌日から2年で時効になります。

    ② 休業補償給付
    賃金を受けない日ごとに請求権が発生しますので、その翌日から2年で時効になります。

    ③ 葬祭料
    被災労働者が死亡した日の翌日から2年で時効になります。

    ④ 障害補償給付
    傷病が治癒した日の翌日から5年で時効になります。

    ⑤ 遺族補償給付
    被災労働者が死亡した日の翌日から5年で時効になります。

    ⑥ 介護補償給付
    被災労働者が介護を受けた月の翌月の1日から2年で時効になります。
  3. (3)申請するタイミングは?

    労災保険の給付内容に応じた申請のタイミングとしては、以下のとおりです。

    ① 療養補償給付
    労災発生後、労災指定病院での受診または労災指定病院以外の医療機関で受診をして治療費支払い後のタイミングで申請します。

    ② 休業補償給付
    給料の支払い期間ごとに1か月分ずつ申請します。

    ③ 葬祭料
    被災労働者が死亡して、葬儀を執り行った後に申請します。

    ④ 障害補償給付
    症状固定後も障害が残っている場合に申請します。

    ⑤ 遺族補償給付
    被災労働者が死亡した後に申請します。

    ⑥ 介護補償給付
    被災労働者が介護を受けた場合には、介護に要した費用をまとめて1か月ごとに申請します。

7、ベリーベストでサポートできる3つのこと

ベリーベスト法律事務所では、労災によって被災した労働者に対して、以下のようなサポートを行っています。

  1. (1)適切な後遺障害等級認定を受けるためのサポート

    労働災害によって障害が残ってしまった場合には、労働基準監督署の後遺障害等級認定を受けることができます。被災労働者の障害の程度に応じて、認定される後遺障害等級は変わり、補償額も等級によって異なってきます。そのため、適切な労災保険から適切な補償額を得るためには、障害の程度に応じた適切な後遺障害認定を受けることが重要となります。
    ベリーベスト法律事務所では、適切な後遺障害認定を受けるために、認定経験の豊富な医療コーディネーターが被災労働者一人ひとりの傷病、症状に合わせて、後遺障害診断書の記載方法や提出する画像などに関して有効な戦略を考えます。

  2. (2)会社との交渉をサポート

    労災保険からの補償は、被災労働者が労働災害によって被った損害のすべてをカバーするものではありません。労災保険からの補償では不足する部分については、会社に対して請求をすることが可能です。
    被災労働者個人では、労災事故による傷病の影響もあり、会社との間で適切に交渉を進めていくことが困難な場合があります。弁護士に依頼をすることによって、弁護士が被災労働者の代理人として、会社と交渉を進めていくことが可能です。被災労働者の負担を軽減しながら、不利な交渉内容にならないようにサポートします。

  3. (3)適切な損害賠償額獲得のためのサポート

    労働基準監督署から労災認定を受けたとしても、直ちに会社に対する損害賠償請求が可能になるわけではありません。会社に対して損害賠償請求をするためには、労災事故の発生について、会社に過失、簡単にいうと落ち度があることが必要になります。
    事業主には、労働者の生命や身体の安全を確保するという安全配慮義務が課されています。被災労働者としては、事業主に安全配慮義務があったことを証拠に基づき立証していくことによって、労災保険からの不足分について請求をすることができるようになります。しかし、労働者個人では、どのような証拠が必要なのか、どのように証拠を収集すればよいのかわからないことも多いでしょう。弁護士に依頼をすることによって、証拠収集から具体的な請求までサポートしてもらうことができます

8、まとめ

労働災害にあった場合には、労災申請をすることになりますが、申請にあたっては労災保険の給付内容に応じて必要となる書類も異なりますし、診断書の添付が必要になることもあります。
また、請求にあたっては、給付内容に応じて期限が設けられていますので、期限を徒過することのないように申請手続きを行うようにしましょう。

なお労災保険の申請手続きはとても複雑なため、難しい場合は、労働基準監督署へ相談しながら進めていただくことをおすすめします。

この記事の監修者
外口 孝久
外口 孝久
プロフィール
外口 孝久
プロフィール
ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士
所属 : 第一東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 49321

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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