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労働災害(労災)コラム

弁護士が解説! 労災の休業補償の期間や打ち切り条件とは

更新:2022年12月22日
公開:2022年12月08日
  • 労災
  • 休業補償
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弁護士が解説! 労災の休業補償の期間や打ち切り条件とは

仕事中の病気や怪我によって働けなくなった場合には、労災認定を受けることによって、休業期間中の補償を受けることができます。このような休業補償は、休業中の生活を補償するための重要な制度です。

しかし、病気や怪我がなかなか治らず、休業期間が長期化している方の中には、いつまで休業補償をもらうことができるのかについて不安に感じている方もいらっしゃるでしょう。

本コラムでは、労災の休業補償の期間や打ち切りの条件について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、労災の休業補償に期間はある?

労災の休業補償はいつまでもらうことができるのでしょうか。以下では、休業補償の概要と期間について説明します。

  1. (1)休業補償とは

    休業補償とは、仕事中に病気や怪我をして、会社を休むことになった場合に、休業中の収入を補償するために労災保険から支給されるお金です。

    労災保険の休業補償としては、以下の3つの要件を満たす場合に、休業補償給付と休業特別支給金が支給されます。

    • ① 業務でまたは通勤によって負った、ケガや疾病による療養のためであること
    • ② 労働することができないこと
    • ③ 賃金をもらっていないこと


    なお、休業補償の支給額は以下のとおりです。

    • 休業(補償)給付=(給付基礎日額の60%)×休業日数
    • 休業特別支給金=(給付基礎日額の20%)×休業日数
  2. (2)休業補償はいつからいつまで支払われるのか?

    労災保険の休業補償の支払いは、休業4日目からスタートします。休業初日から3日目までは、待機期間とされており、休業補償および休業特別支給金は支払われませんので注意が必要です。

    もっとも、業務災害については、上記待機期間中の賃金を支払わない場合、会社は労働者に対して、平均賃金の60%の金額を休業補償として支払わなければならないとされています(労働基準法76条1項)。

    また、休業補償をもらうことができる期間については、上限はありません。病期や怪我の治療が継続し、仕事を休んでいる限り、ずっと休業補償をもらうことができます。しかし、怪我や病気が治った等、休業の必要性がなくなった場合には、たとえ仕事に復帰していないとしても休業補償はストップします。

2、症状固定になると打ち切りとなるの?

休業補償は、治療が継続している限りは支給されますが、病気や怪我が完治していなくても打ち切りになることがあります。それが「症状固定」の時点です。

  1. (1)症状固定とは

    症状固定とは、医学上一般に承認された医療を行っても、その効果が期待できなくなった状態で、かつ、残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態に達したときをいいます。なお、労災の場合、同様の状態を「治癒」ともいいます。

    まだ痛みが残っている状態であったとしても、これ以上治療しても効果が期待できない状態になったときには、症状固定と判断され、休業補償は打ち切られてしまいます。

    労災保険では、療養開始から1年6か月を経過してもまだ傷病が治癒していない場合には、「傷病の状態等に関する届」を提出することによって、休業補償の支払いを継続することができます。
    もっとも、1年6か月を経過した時点で、傷病等級に該当する傷病があるときには、以下の傷病(補償)年金に切り替わることになります。

  2. (2)傷病(補償)年金とは

    傷病(補償)年金とは、労災によって傷病を負い、療養開始後1年6か月を経過しても治癒せず、その傷病による障害が傷病等級にあてはまる場合に、労災保険から支払われるお金です。

    休業補償をもらっている方が、療養開始後1年6か月を経過した時点で、傷病等級第1級から第3級に該当する場合には、休業補償から傷病(補償)年金に切り替わります

    他方、傷病等級の認定がなく症状固定にも至っていない場合には、引き続き休業補償の支給を受けることができます。

    ① 障害の状態
    傷病(補償)年金の支給を受ける条件として、傷病等級第1級から第3級に該当する必要があります。傷病等級第1級から第3級までの具体的な障害の状態としては、以下のとおりです。

    傷病等級第1級
    傷病等級第2級
    傷病等級第3級

    ② 傷病(補償)年金の金額
    傷病(補償)年金の金額としては、傷病等級に応じて以下のとおり決まっています。

    傷病(補償)年金の金額

3、慰謝料などは会社に請求を

労災保険から休業補償をもらうことができたとしても、十分な補償とはいえないという場合もあるでしょう。さらに、慰謝料などは労災保険からもらえることはありません。別途、会社に請求する必要があります。

  1. (1)労災保険からの補償は損害の一部のみ

    労災保険から支給される補償としては、休業補償以外にもさまざまな補償がありますので、休業中の賃金補償だけでなく、治療費や障害が残った場合の補償などを受けることができます。

    しかし、労災保険からの補償は、労災被害者が被った損害のすべてを回復するものではなく、その一部に限られます。そのため、労災保険から補償を受けていたとしても、それだけですべての損害が回復されるわけではありません。

    たとえば、労災保険からは、精神的苦痛に対する慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料)の支払いはなく、休業補償についても、給付基礎日額の80%しか補償されません(うち20%は休業特別支給金)。また、障害が残った場合の補償としても、将来得られるはずであった収入を補償するものとしては不十分な金額です。

  2. (2)労災保険で不足する部分は会社に請求を

    上記のように労災保険では、十分な損害の回復を図ることができません。そのため、労災保険では不足する部分については、会社に対して、損害賠償請求をすることによって損害の回復を図ることになります。

    ただし、労災の認定を受けたからといって、常に損害賠償請求をすることができるとは限りません。民事上の損害賠償請求をするためには、労働者の側で、労災の発生について会社に落ち度があったことを証明していかなければなりません。会社は、労働者に対して労働契約上の義務として安全配慮義務を負っていますので、労働者は、会社がこの安全配慮義務に違反して労災事故を生じさせたことを、証明していくことになります。

    もっとも、労働者個人と会社とでは、圧倒的に会社が優位な立場にあり、安全配慮義務違反を証明するための証拠も不足していることが通常です。証拠の有無によって請求の可否が左右されますので、会社への損害賠償請求を検討している場合には、早めに弁護士に相談をし、弁護士の協力を得て進めていくことをおすすめします

4、労災の被害に遭った場合に弁護士ができること

労災の被害に遭った方に対して、弁護士は以下のようなサポートをすることができます。

  1. (1)会社との交渉で代理人になれる

    労災保険の補償を受ける際には、労働基準監督署に申請すれば足りますが、損害賠償請求は、会社に請求するだけで自動的に支払われるというものではありません。労働者側で会社の落ち度を主張立証し、被った損害額を正確に算定して請求し、会社との間で交渉をしていかなければなりません。

    会社との交渉は、ただでさえ負担が大きいにもかかわらず、労災事故に遭った被害者の方は、心身ともに多大な苦痛を被った状態ですので、そのような状態で会社と満足いく話し合いを進めていくことは困難です。

    そのようなときには、弁護士を依頼することで、弁護士が代理人として会社と交渉を進めることが可能です。弁護士であれば、会社と適切に交渉を進めることができるだけでなく、損害の算定など複雑な手続きをすべて一任することができます

  2. (2)裁判や調停になっても安心

    会社との交渉で解決しない場合には、調停や裁判に発展するということも珍しくありません。

    裁判所の調停員を交えて話し合いを行う調停は、話し合いの手続きであるとはいっても、慣れていなければ、適切に進めていくことは難しいといえます。

    また、裁判は、手続きの流れや主張立証方法など、極めて専門的な知識が必要になってきますので、法律に詳しくない方では、十分な主張立証ができず、本来得られるはずであった賠償金を失ってしまう危険性もあります。

    弁護士に依頼をすることによって、交渉だけでなく調停や裁判といった専門的な手続きまですべて任せることができます。弁護士は、事件が解決するまで、労災被害者の味方となって最後までサポートいたします。

5、まとめ

労災保険の休業補償は、治癒または症状固定となるか傷病(補償)年金に切り替わるまでは期限なく支払われるため、仕事を休んでいる期間も安心して治療に専念することができます。まずは、労災保険から補償を受けながら、症状固定まで治療を継続しましょう。

もっとも、労災保険からの補償はすべての損害を回復するものではありませんので、最終的には、弁護士のサポートを受けながら会社に対して損害賠償請求をしていくことが考えられます。その際には、労災案件を豊富に扱っているベリーベスト法律事務所までご相談ください。

※記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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