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労働災害(労災)コラム

家族が仕事中に倒れる事態が発生! 今後どうすればいい?

更新:2024年06月20日
公開:2024年06月20日
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家族が仕事中に倒れる事態が発生! 今後どうすればいい?

家族が勤務中に過労で倒れた場合、労災認定を受けられます。
また、労災保険給付によってカバーされない損害については、会社(企業)に対して損害賠償を請求することも検討しましょう。

本記事では、家族が仕事中に倒れた場合に、労災認定の対象となるかどうかなどをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、仕事中に倒れると労災認定を受けられる?

労働者が仕事中に倒れてけがをした場合には、労災認定の対象となります。ただし、注意をする点として、労災認定の対象となる「業務上の傷病や疾病」には、何らかの出来事や事故という意味での災害が介在するもの(=事故性傷病)と、そうではないもの(職業病)があります。
労災認定が下りるのは、事故性傷病、つまり、転倒という災害が介在したことによる傷害についてのものであり、転倒の原因となった病気について労災認定が下りるとは限らないということです。

  1. (1)事故性傷病

    労災認定の対象となるのは、業務上の負傷や疾病であるという「業務起因性」が必要です。事故性傷病の場合、「業務起因性」の前提として「業務遂行性」の有無を確認します。業務遂行性が認められなければ、業務起因性が認められないため、労災認定の対象とはなりません。

    ① 業務遂行性
    労働者が使用者の支配下にある状態において災害が発生したことが必要です。
    仕事中に倒れた場合は、通常は業務遂行性が認められます。休憩時間中など業務に従事をしていない場合でも、業務遂行性は否定されませんが、この場合、通常、業務起因性が否定されます。

    ② 業務起因性
    事故性傷病の場合、「業務」と「災害」及び「災害」と「ケガや病気」の二重の因果関係が存在することが必要です。仕事中に転倒したことによるけがであれば、業務起因性は認められます。休憩時間中に災害の場合、業務起因性が肯定されるためには、災害が事業場施設の状況によって発生したものである必要があります。
  2. (2)職業病

    仕事中に倒れたという場合、その原因として、脳血管疾患・心臓疾患・精神疾患が考えられます。これらの疾病については、業務が原因となっている職業病の可能性があります。
    職業病の労災認定については、業務上の負傷や疾病であるのかという業務起因性でのみ判断を行います(業務時間外で倒れても労災認定の支障とはなりません)。

    特に脳血管疾患・心臓疾患・精神疾患については、業務が原因で発症したのか、それとも別の原因により発症したのかの区別が問題になりやすいです。これらの疾患の業務起因性は、厚生労働省の労災認定基準と照らし合わせて判断されます。

    参考:「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」(厚生労働省)
    参考:「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(厚生労働省)

    脳血管疾患・心臓疾患については、長期間の加重業務・短期間の加重業務・異常な出来事のいずれかが認められるかどうかによって、業務起因性の有無が判断されます。

    たとえば、長時間労働(残業)や業務上の重大な事故などが認められる場合は業務起因性が肯定されやすいですが、業務上の大きなストレスが認定できない場合は、業務起因性が否定されやすいです。

    精神疾患については、発病前おおむね6か月間において、業務によって強い心理的負荷がかかったことが業務起因性の要件とされています。たとえば、長時間労働や業務上の重大な事故、上司等による重大なハラスメントが認められる場合は、業務起因性が肯定されやすい傾向にあります。

    また、業務以外の心理的負荷や個体側要因による発病とは認められないことも、精神疾患の業務起因性の考慮要素です。
    発病直前の時期において、プライベートに関する重大な事件(自分の離婚・重病・重傷・流産、身内の死亡・重病・重傷・逮捕、多額の財産の損失・支出、天災・火災・犯罪に巻き込まれるなど)が発生した場合は、業務ではなくプライベートに発病原因が存在するとして、精神疾患の業務起因性が否定される要因となる可能性があります。

    なお、労災であってもなくても、民間の医療保険や傷害保険との兼用も可能ですので、加入している方は保険会社に連絡を取りましょう。

2、労災申請の手続きと補償内容

仕事中に倒れたことでけがを負った場合や、倒れる原因となった疾病について業務起因性が認められる場合、被災労働者(または遺族)は労災保険給付を請求できます。
労災保険給付にはさまざまな種類がありますので、受給が認められる給付は、漏れなく請求しましょう。

  1. (1)労災申請の手続き

    労災保険給付の請求(労災申請)は、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署に対して行います。会社が手続きを行ってくれることもありますが、対応してもらえない場合は被災労働者(または遺族)が自分で請求することも可能です。

    なお、療養補償給付のうち療養の給付(後述)に限っては、労災病院または労災保険指定医療機関の窓口で手続きを行う必要があります。

    労災保険給付の請求に当たっては、請求の種類ごとに請求書を提出しなければなりません。各請求書の様式は、厚生労働省ウェブサイトからダウンロードできるほか、労働基準監督署(または労災病院・労災保険指定医療機関)の窓口でも交付を受けられます。

    参考:「主要要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」(厚生労働省)

  2. (2)労災保険給付の種類と補償内容

    労災保険給付には、以下の種類があります。受給可能な給付を漏れなく請求しましょう。

    ① 療養補償給付
    労災病院または労災保険指定医療機関において、治療を無料で受けられます(=療養の給付)。
    その他の医療機関で治療を受けた場合には、治療費等の実額が補償されます(=療養の費用の支給)。

    ② 休業補償等給付
    労災に当たるケガや病気の治療・療養のために休職した場合、休業4日目から平均賃金の80%相当額が補償されます。

    ③ 障害補償等給付
    労災に当たるケガや病気が完治せずに後遺症が残った場合、障害等級に応じた額の年金または一時金が支払われます。障害等級は、主に医師の診断書を基に認定されます。
    参考:「障害等級表」(厚生労働省)

    ④ 遺族補償給付等
    被災労働者が死亡した場合に、遺族に対して支払われます。

    ⑤ 葬祭料等
    被災労働者が死亡した場合に、葬儀費用の補償として支払われます。

    ⑥ 傷病補償等年金
    傷病等級3級以上のケガや病気が1年6か月以上治らない場合に、休業補償給付から切り替えて支払われます。
    参考:「傷病等級表」(厚生労働省)

    ⑦ 介護補償等給付
    傷病等級1級または2級の精神・神経障害および腹膜部臓器の障害により、被災労働者が要介護状態になった場合に支払われます。

3、仕事中に倒れた場合、会社に対する損害賠償請求も検討すべき

労災保険給付は、実は被災労働者または遺族が受けた損害の全額を補填するものではありません。逸失利益(労災にあわなければ得られるはずだった利益)の補償は実損害に及ばないケースが多いほか、慰謝料は全額が労災保険給付の対象外とされています。

労災による損害について全額を請求したいなら、会社に対して損害賠償請求を検討しましょう

  1. (1)損害賠償を請求できるケース|安全配慮義務違反・使用者責任

    会社の安全配慮義務違反または使用者責任のいずれかが認められる場合には、労災について会社に損害賠償を請求できます。

    ① 安全配慮義務違反
    会社には、労働者が生命・身体等の安全を確保しながら労働できるように、必要な配慮をする義務があります(労働契約法第5条)。
    会社が安全配慮義務を怠った結果として労災が発生した場合には、会社は被災労働者に対して損害賠償責任を負います。

    ② 不法行為責任・使用者責任
    会社の故意または過失によって労災が発生した場合、会社は不法行為責任を負います(民法第709条)。
    また、会社が雇用する従業員の故意または過失によって労災が発生した場合、行為者に加えて、会社も原則として使用者責任を負います(民法第715条第1項)。
  2. (2)損害賠償請求の方法

    会社に対する損害賠償請求は、主に示談交渉・労働審判・訴訟を通じて行います。いずれの手続きによる場合も、弁護士を代理人として対応するのが安心です。

    ① 示談交渉
    損害賠償について会社と話し合います。合意ができたら、その内容をまとめた和解合意書を締結します。

    ② 労働審判
    地方裁判所で開催される、労使間の紛争を解決するための手続きです。非公開で行われ、調停(話し合いによる合意)または労働審判(裁判官と労働審判員の決定)によって解決が図られます。

    審理が原則として3回以内で終結するため、早期解決が期待できますが、労働審判に対して異議が申し立てられると訴訟に移行します。

    ③ 訴訟
    裁判所の公開法廷で行われる紛争解決手続きです。労働者側が損害賠償請求権の存在を立証しなければなりません。
    判決が確定すれば紛争解決の結論が確定します。

4、長期間働けない場合、どこまで補償を受けられるのか?

労災によって長期間働けない場合には、労災保険給付を適切に受給することが重要になります。

各労災保険給付の受給期間は、以下のとおりです。
特に一生涯受給できる労災保険給付は、生活に当たって大きな支えとなるので、忘れずに請求しましょう。

労災保険給付の種類 受給期間
療養補償給付 医師から治ゆ(症状固定)の診断を受けるまで
休業補償給付 医師から治ゆ(症状固定)の診断を受けるまで、または傷病補償年金に切り替わるまで
障害補償等年金 一生涯
遺族補償等年金 失権するまで
傷病補償等年金 医師から治ゆ(症状固定)の診断を受けるまで
介護補償等給付 一生涯(介護を受けている期間)

なお、労災に当たるケガや病気の治療中は、使用者が被災労働者を解雇することは原則として禁止されています(労働基準法第19条第1項)。

ただし、療養開始後3年を経過してもケガや病気が治らない労働者に対して打切補償(=平均賃金の1200日分)を行った場合は、例外的に被災労働者の解雇が認められる点にご注意ください。

5、まとめ

労働者が仕事中に倒れてけがをした場合や、倒れる原因となった病気について業務起因性が認められる場合、労災保険給付を受給できます。また、会社に対して損害賠償を請求できることもあるので、弁護士に相談してアドバイスを受けましょう。

ベリーベスト法律事務所は、労災の損害賠償請求に関するご相談を随時受け付けております。家族が仕事中に職場で倒れてしまった場合は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。

※記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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