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労働災害(労災)コラム

業務中の挟まれ事故で会社に責任を問えるケースと損害賠償請求の方法

更新:2024年09月04日
公開:2024年09月04日
  • 挟まれ事故
業務中の挟まれ事故で会社に責任を問えるケースと損害賠償請求の方法

業務中に機械や器具に挟まれたり巻き込まれたりして、負傷または死亡してしまうケースがあります。

このような労働災害の被害にあった場合には、労災保険から補償を受けられるだけでなく、会社に対して損害賠償請求ができる可能性があります。
挟まれ(巻き込まれ)事故による被害をしっかりと補うためにも、会社の責任を問えるケースや損害賠償請求の方法を押さえておくことが大切です。

今回は、業務中の挟まれ事故で会社に責任を問えるケースと損害賠償請求の方法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、挟まれ事故の具体事例

職場における挟まれ事故には、どのようなものがあるのでしょうか。
挟まれ事故とは、身体の一部が機械や装置の固定部分と可動部分の間に挟まれて、負傷する事故をいいます。以下では、挟まれ事故の具体的な事例を紹介します。

  1. (1)トラックの積み荷を降ろす際の挟まれ事故

    一般貨物自動車運送業では、トラックの荷降ろし作業を行う場面が頻繁にあります。
    積み荷を降ろす際の挟まれ事故としては、「傾斜地に後ろ向きでトラックを停めた際に、輪止めを設置しておらず挟まれた」といったケースをはじめ、「後進中に横切ったところ挟まれた」「後退誘導をしていたところ挟まれた」などのケースが挙げられます。

  2. (2)クレーンのつり上げ作業中の挟まれ事故

    資材置き場では、重い資材を異動させる際に、クレーンを用いてつり上げ作業を行うことがあります。
    クレーンのつり上げの場面では、クレーン操作を行う作業員と、玉掛作業を行う作業員の声掛けが重要になりますが、声掛けが不十分な場合、玉掛作業中にクレーンがつり上げられ、手の指がワイヤーと資材の間に挟まれることがあります。

  3. (3)プレス機械に手が挟まれる(巻き込まれる)事故

    製造業では、プレス機械を用いて圧着成型作業を行う場目も多いと思います。
    プレス機から金型を取り出す場合、プレス機が上昇しているときに作業を行うべきところ、プレス機が下降しているときに作業を行ったためにプレス機に手が挟まれることがあります。また、機器の点検の際に巻き込まれるという事例も少なくありません。

2、会社に対して事故を起こした責任を問えるケース

労災により負傷したとしても、それだけでは会社に対して損害賠償請求をすることはできません
業務中に挟まれ事故の被害にあった場合、会社に以下のような法的責任があれば損害賠償の責任を問える可能性があります。

  1. (1)安全配慮義務違反

    会社には、従業員が安全かつ健康に働けるよう配慮する義務があります。このような会社の義務を「安全配慮義務」といいます。会社側が安全配慮義務に違反して、挟まれ事故などの労災事故を発生させてしまった場合には、従業員に生じた損害を賠償する法的責任が生じます
    そのため、会社に安全配慮義務違反があれば、損害賠償責任を問うことが可能です。

    挟まれ事故に関して、会社に安全配慮義務違反が認められるケースとしては、以下のようなケースが挙げられます。

    • 荷降ろし作業における作業標準の策定が不十分だった
    • 安全対策に関する教育が不十分だった
    • 手袋や安全靴の着用を徹底していなかった
    • プレス機の自動停止機能が故障しているにもかかわらず、そのまま放置していた
  2. (2)使用者責任

    使用者責任とは、従業員が業務中等に故意又は過失によって他人に損害を与えた場合、従業員を雇用している会社もその損害を賠償しなければならない責任です。

    安全配慮義務違反は、会社側に安全配慮義務を怠ったという落ち度がある場合に責任が認められますが、使用者責任は、直接的な加害者ではない会社も責任を負うという特徴があります。

    もっとも、使用者責任は、従業員の選任・監督に関して、会社が相当の注意を払っていた場合または相当の注意を払っても損害が生じたといえる場合には、会社の責任が免責される余地があります。
    しかし、このような立証は会社側が行わなければならず、免責されるためのハードルは非常に高いといえます。

    挟まれ事故に関して、会社に使用者責任が生じるケースとしては、以下のようなケースが挙げられます。

    • トラックの運転中に後方確認を怠ったため、従業員がトラックと壁の間に挟まれた
    • 従業員による機械の操作ミスにより、他の従業員の手が機械に挟まれた

3、事故原因が会社にある場合、請求できるもの

挟まれ事故の原因が会社にある場合、以下のような請求が可能です。

  1. (1)労災申請

    業務中に発生した挟まれ事故により負傷した場合は、労働基準監督署に労災申請を行うことができます。
    労災認定が受けられれば、労災保険から以下のような補償が支給されます。

    • 療養(補償)給付
    • 休業(補償)給付
    • 傷病(補償)年金
    • 障害(補償)給付
    • 遺族(補償)給付
    • 葬祭料(葬祭給付)
    • 介護(補償)給付

    労災申請は、労災で被災した労働者に代わって会社が申請してくれるのが一般的です。しかし、会社によっては「労災発生を知られたくない」「手続きが面倒」などの理由で労災申請を行ってくれないこともあります。

    このような場合は、労働者自身でも労災申請をすることができますので、まずは労働基準監督署に相談してみるとよいでしょう

  2. (2)損害賠償

    労災認定が受けられれば、上記のように労災保険からさまざまな補償が支給されます。
    しかし、労災保険からの補償には、慰謝料が含まれておらず、休業時の補償や障害が残った場合の逸失利益の補償も十分なものとはいえません。

    そのため、労災保険から支給を受けていたとしても、労災保険から補填されない部分については、会社に対して損害賠償請求をすることができます。ただし、会社に対して損害賠償請求をするためには、上記2章で説明したとおり、安全配慮義務違反や使用者責任が認められる必要があります。

  3. (3)その他請求できること

    労災による怪我の治療のために仕事を休んでいると、会社から人手不足などを理由に早期に職場復帰するよう求められることがあります。

    しかし、職場復帰の時期は、医師と相談して決めるべき事柄ですので、職場復帰が難しいと考えられる場合には、医師の診断書などを提出して、引き続き休業することを求めていきましょう。

    また、労災による休業が長期に及ぶ場合、会社から解雇を言い渡されることも少なくありません。しかし、労働基準法19条1項では、労働者が業務上負傷した場合、療養のために休業する期間およびその後30日間は解雇が禁止されています。そのため、この期間に解雇を言い渡された場合には、解雇無効を主張することができます

    さらに、労災により障害が残ってしまうと以前の職種や部署に復帰するのが困難な場合があります。そのような場合に、会社には配置転換などにより引き続き労働者が働けるような環境を整備する義務がありますので、状況に応じた配慮を求めていくことが可能です。

4、損害賠償を会社へ請求する方法

会社に対し損害賠償請求をする場合、どのような方法で行えばよいのでしょうか。

  1. (1)請求の手順

    会社に対し損害賠償を請求する場合、以下のような方法で行います。

    ① 証拠収集
    会社に対して損害賠償請求を行うためには、会社に安全配慮義務違反または使用者責任が認められることを、労働者の側で主張立証していかなければなりません

    そのため、まずは、会社側の責任を立証するための証拠収集が必要となります。十分な証拠がない状態で交渉や裁判を行っても有利な結果を得ることはできませんので、事前の準備が重要になります。

    もっとも、挟まれ事故が発生した場合、どのような証拠により会社の責任を立証できるかわからない場合も多いと思います。
    事故の内容や状況に応じて必要になる証拠は異なってきますので、どのような証拠を集めればよいかわからないという場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。

    ② 会社との交渉
    証拠収集ができたら、次は会社との交渉により損害賠償の支払いを求めていきます。
    会社が労災による事故の責任を認めているのであれば話し合いはスムーズですが、責任を否定していたり、賠償金の金額で争いになったりしている場合には、交渉での解決は難しい場合もあります。

    ③ 訴訟
    会社との話し合いでは解決に至らないときは、労働審判の申立てや民事訴訟の提起を行います。
    民事訴訟では、労働者側が証拠に基づいて会社側の責任と損害の発生を主張立証していかなければなりません。法律の知識がなければ適切に訴訟を進めることは難しいといえますので、労災トラブルの実績がある弁護士にサポートを求めましょう。

  2. (2)弁護士に対応を依頼すべき理由

    以下のような理由から、会社への損害賠償請求をご検討の方は、弁護士に相談することをおすすめします。

    ① 会社への損害賠償請求の可否を判断できる
    挟まれ事故などの労災事故は発生したとしても、常に会社に対して損害賠償請求ができるわけではありません。会社への損害賠償請求にあたっては、会社側に安全配慮義務違反や使用者責任が認められる必要があります。

    弁護士であれば、具体的な事故状況や経緯などを踏まえて、会社側の法的責任の有無を正確に判断することができます。今後の方針を明確にするためにも、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。

    ② 会社との交渉や裁判などの対応を任せることができる
    労災事故により負傷した労働者やそのご家族では、会社と交渉をするのが難しいこともあります。そのような場合には、弁護士に依頼することで、会社との交渉をすべて任せることができます。

    弁護士が窓口となり対応することで、不利な条件で示談に応じてしまうリスクを回避できますし、交渉の精神的負担も大幅に軽減されます。
    また、交渉で解決できない事案であっても、引き続き弁護士が訴訟対応を行うことができますので安心して任せることができます。

5、まとめ

業務中に挟まれ事故が発生した場合には、労災保険からさまざまな補償が支給されます。しかし、労災保険からの補償には慰謝料が含まれておらず、その他の補償も十分なものとはいえません。そのため、労災保険から補填されない部分については、会社への損害賠償請求を考える必要があります。

もっとも、会社に対して損害賠償請求をする場合、労働者側で労災に関する会社側の法的責任を立証しなければなりません。そのためには、労災トラブルの解決実績がある弁護士のサポートが重要です。まずは、ベリーベスト法律事務所 労働災害専門チームの弁護士までご相談ください。

この記事の監修者
外口 孝久
外口 孝久
プロフィール
外口 孝久
プロフィール
ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士
所属 : 第一東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 49321

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

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