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労働災害(労災)コラム

足場の倒壊事故でケガをしたら、補償される? 会社に責任追及できる?

更新:2024年07月03日
公開:2024年07月03日
  • 足場
  • 倒壊事故
足場の倒壊事故でケガをしたら、補償される? 会社に責任追及できる?

厚生労働省が公表している「令和5年労働災害発生状況の分析等」によると、令和5年における建設業での労災死傷者数は、1万4414人でした。そのうち、「崩壊・倒壊」が原因で発生した災害の死亡者数は、21人でした。

建設現場などで足場の倒壊事故が発生すると、足場にいた作業員が転落するだけでなく、重い部材が大量に落下するため、落下した部材にあたり死亡または重大な障害が残るなど多数の死傷者が生じるおそれがあります。このような足場の倒壊事故が発生した場合には、どんな補償がなされるのでしょうか。

今回は、足場の倒壊事故で負傷した場合の、労災保険からの補償や会社への損害賠償請求などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、足場の倒壊事故にあった場合の治療の流れを、注意点とともに解説

足場の倒壊事故が発生した場合には、どのような流れで治療などを進めていけばよいのでしょうか。以下では、注意点とともに説明します。

  1. (1)労災に遭遇

    足場の倒壊事故が発生した場合には、二次災害のおそれがありますので、すぐに現場を離れて、安全なところに避難します。
    そして、余裕があるようであれば足場の倒壊事故の状況を確認し、写真や動画などで証拠を残しておくとよいでしょう。

  2. (2)労災が発生したことを会社に報告

    足場の倒壊事故が発生した場合、事故処理や労災の申請などの手続きが必要になりますので、労災が発生したことを会社に報告するようにしましょう。

    一般的には、労災申請の手続きは、被災労働者に代わって会社が行ってくれますが、労災隠しをするような会社では申請してくれないこともあります。そのような場合は、労働者自身で労災申請をしなければなりませんので、まずは労働基準監督署で相談してみるとよいでしょう。

  3. (3)病院で治療を行う

    足場の倒壊事故によりケガをした場合は、すぐに病院を受診して、治療を行うようにしましょう。その際は、労災保険指定医療機関を受診するのがおすすめです。なぜなら、労災保険指定医療機関であれば、窓口での医療費の負担なく治療を受けられるからです。

    なお、労災保険指定医療機関以外の病院であっても労災によるケガの治療は受けられますが、いったん窓口で医療費を支払い、後日還付の手続きをしなければなりません。

  4. (4)症状固定後に障害が残った場合は障害等級認定の申請を行う

    病院での治療は、医師から完治または症状固定との診断が出るまで続けます。症状固定後も何らかの障害が残っているようであれば、障害等級認定の申請を行いましょう。

    障害等級認定が受けられれば、症状に応じて労災保険からさまざまな補償を受けることができます。

  5. (5)必要であれば会社に請求する

    足場の倒壊事故について労災認定が受けられれば、労災保険から補償が出ますが、それだけでは、被災労働者に生じたすべての損害をまかなうことはできません。
    会社に足場の倒壊事故の責任がある場合には、会社に損害賠償請求をすることも検討しましょう。

2、労災保険とは何か? どこまで補償されるのか?

労災保険とはどのような制度なのでしょうか。また、労災保険からはどのような補償を受けられるのでしょうか。以下で詳しく説明します。

  1. (1)労災保険の目的

    労災保険とは、労働者の保護を目的とした国が運営する社会保険制度のひとつです。

    労働者が業務上の事由または通勤中に傷病等を負った場合には、労災保険から必要な保険給付を受けることができます。
    労災保険は、正社員、アルバイト、パートなどの雇用形態にかかわらず、労働者をひとりでも雇用している事業所には加入が義務付けられており、被災労働者に対する補償は、加入事業主が負担している保険料によって、まかなわれています。

  2. (2)労災と認められるための条件

    足場の倒壊事故について労災と認められるためには、「業務災害」の要件を満たす必要があります。業務災害とは、業務上の負傷、疾病、障害、死亡をいい、「業務遂行性」と「業務起因性」が要件となっています

    ① 業務遂行性
    業務遂行性とは、労災事故がa)事業主の支配・管理下で業務に従事しているとき、b)事業主の支配・管理下で、業務には従事していないとき、c)事業主の支配下ではあるが、管理下を離れて業務に従事しているときに発生したことを指しています。すなわち、仕事中に発生した傷病かどうかです。

    足場の倒壊の場合は、当然作業現場で仕事をしていますので、a)やc)の場合として業務遂行性が認められます。また、休憩中であっても作業現場で行動していれば、b)の場合として業務遂行性が認められます。

    ② 業務起因性
    業務起因性とは、業務と傷病との間に因果関係があることを指します。すなわち、仕事が傷病の原因になったかどうかです。

    足場の倒壊事故で負傷した場合には、基本的には業務中に事故に巻き込まれたといえますので、業務遂行性および業務起因性が認められるケースが多いでしょう。

  3. (3)給付の種類

    労災保険から支給される補償には、以下のような種類があります。

    ① 療養(補償)給付
    療養(補償)給付とは、傷病が治癒あるいは症状固定となるまで無料で療養を受けられる制度です。
    労災保険指定医療機関であれば窓口での医療費の負担はありませんが、労災保険指定医療機関以外の病院だと、いったんは窓口で医療費の支払いが必要です。

    ② 休業(補償)給付
    休業(補償)給付とは、労災による傷病により仕事を休んだ場合に補償を受けられる制度です。給付基礎日額(自分に支払われた直前3か月の給料の平均)の60%が、休業(補償)給付として支給され、給付基礎日額の20%が特別支給金として支給されますので、合計で80%の収入が補償されます。

    ③ 傷病(補償)年金
    傷病(補償)年金とは、一定期間傷病が治癒しない場合に年金の支払いが受けられる制度です。
    療養開始後1年6か月経過後も傷病が治癒しない場合で、傷病等級1級~3級に該当する場合には、その等級に応じて、給付基礎日額(自分に支払われた直前3か月の給料の平均)の313日~245日分の年金や特別年金、114万円から100万円までの特別支給金が支払われます。

    ④ 障害(補償)給付
    障害(補償)給付とは、症状固定後に障害が残った場合に補償が受けられる制度です。
    障害等級が1級~7級の場合は、障害(補償)年金が支給され、障害等級が8級~14級の場合は、障害(補償)一時金が支給されます。

    ⑤ 遺族(補償)給付
    遺族(補償)給付とは、労災により労働者本人が死亡した場合に、遺族に対して補償が支払われる制度です。遺族(補償)給付の対象となる遺族は、労働者の収入により生計を維持していた家族になり、受給権者について順位と条件が定められています。

    ⑥ 葬祭料(葬祭給付)
    葬祭を行った場合、以下の金額のうちどちらか高い方の金額が葬祭料(葬祭給付)として、支給されます。

    • 31万5000円+給付基礎日額の30日分
    • 給付基礎日額の60日分


    ⑦ 介護(補償)給付
    介護(補償)給付とは、傷病(補償)年金、または障害(補償)年金が支給されている労働者のうち第1級または第2級の等級を有している者が現に介護を受けている場合に受けられる補償です。

3、足場の倒壊事故の責任を会社に追及できるのか

会社に足場の倒壊事故の責任を問うためには、会社に以下のような法的責任が認められる必要があります。

  1. (1)安全配慮義務違反

    安全配慮義務とは、労働者が安全かつ健康に働ける職場環境の提供および配慮をするよう会社に課せられた義務です。会社の安全配慮義務違反により労災が発生したといえる場合、会社に損害賠償請求ができます。

    足場の倒壊事故に関して会社の安全配慮義務違反が認められる例としては、以下のようなケースが挙げられます。

    • 工事現場の足場の組み立てが不十分で足場が倒壊した
    • 強風が予想できたにもかかわらず、足場のネットを外さなかったため足場が倒壊した
    • 建設現場の足場の安全点検が不十分であったため、足場が倒壊した

  2. (2)使用者責任

    使用者責任とは、被用者が事業の執行につき第三者に損害を生じさせた場合の賠償責任をいいます。つまり、会社が直接不法行為をした場合でなくても、会社が雇用する労働者が第三者に損害を与えた場合には、会社も賠償責任を負わなければならないことをいいます。

    会社に使用者責任があると認められる場合には、会社に損害賠償請求ができます。足場の倒壊事故に関して会社の使用者責任が認められる例としては、以下のようなケースが挙げられます。

    • 同僚が足場の筋交いの取り付けを怠ったために足場が倒壊した
    • 同僚が解体作業中の足場にトラックを衝突させてしまい足場が倒壊した

4、弁護士にできること

労災事故があった場合、弁護士であれば以下のようなサポートをすることができます。

  1. (1)労働者に代わって会社との交渉から裁判まで対応可能

    会社に対して損害賠償請求をする場合、まずは会社と交渉を行わなければなりません。しかし、一般の方では交渉に慣れておらず、どのように進めればよいか、どのような条件で示談をすればよいかなどわからないことも多いと思います。

    弁護士であれば、労働者の代理人となって会社と交渉ができますので、不慣れな交渉をしなければならないというストレスから解放されるでしょう。また、会社との交渉が決裂した場合でも引き続き裁判の対応も任せることができますので安心です。

  2. (2)後遺障害等級認定のサポートができる

    治療を続けても症状が改善せず、障害が残ってしまった場合には、障害等級認定の申請を行わなければなりません。障害等級認定は、労災保険から補償を受けるためだけでなく、会社に対して損害賠償請求をする際にも重要な手続きになりますので、適正な等級認定を受けられるよう手続きを進めていく必要があります。

    弁護士であれば、診断書の依頼のアドバイスや申請のやり方の説明などにより障害等級認定のサポートを行うことができます。専門家である弁護士がサポートすることで、適正な障害等級が認定される可能性が高くなるでしょう。

5、まとめ

足場の倒壊事故が起きた場合、労災保険から補償が受けられますが、労災保険でもまかないきれないほどの損害が生じたときは、会社へ損害賠償請求をするか検討しましょう。
会社へ損害賠償請求するにあたっては、弁護士のサポートが必要になりますので、まずは、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。

※記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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