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労働災害(労災)コラム

建設現場で起こった労災事故。 責任の所在と、損害賠償の請求方法は?

2021年12月16日
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建設現場で起こった労災事故。 責任の所在と、損害賠償の請求方法は?

建設現場においては、発注する工事の種類や規模によっては、工事に関係する業者が複数存在することがあります。そのような状況で事故が起きた場合には、責任の所在が複雑になり、誰がどのような責任を負うかについて曖昧になるおそれがあります。

労災事故については、労災保険から補償を受けることができますが、多くの場合、それだけでは十分な補償になりません。適切な補償を受けるためには、労災事故に関して責任のある事業者に対して損害賠償請求をすることも必要となります。

本コラムでは、建設現場で起こった労災事故について損害賠償を請求するための方法や注意点について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、建設現場の事故が「労働災害」に認定される基準とは?

労災保険(労働者災害補償保険)から補償を受けるためには、労働基準監督署によって当該事故が「労働災害」であると認定される必要があります。労働災害は、どのような基準で認定されるのでしょうか。
以下では、労働災害が認定される基準について解説いたします。

  1. (1)労働災害とは?

    労働災害とは、簡単にいえば、業務中や通勤中に発生した病気や怪我のことを指します。このうち業務中の病気や怪我のことを「業務災害」と呼び、通勤中の病気や怪我のことを「通勤災害」と呼びます。
    本コラムでは、建設現場での業務中の事故、すなわち業務災害を中心に解説します。

  2. (2)労働災害の認定基準

    労働災害のうち、業務災害とは、労働関係から生じた災害、すなわち労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下において労働を提供する過程で、業務に起因して発生した災害をいいます。そして、業務災害が認定されるには、一般的に、「業務遂行性」と「業務起因性」という2つの要素を満たす必要があると整理されています。

    ① 業務遂行性
    業務遂行性は、労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある場合に認められます。
    そのため、労働者と使用者との間に労働契約関係があることが必要となり、労働契約以外の業務委託契約関係である場合には、基本的に業務遂行性の要件は満たさないことになります。

    ② 業務起因性
    業務起因性は、業務又は業務行為を含めて労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にあることに伴う危険が現実化したものと経験則上いえる場合に認められます。

    これらを踏まえると、労働時間内や残業時間内に職場内において業務中に生じた怪我については、基本的に業務災害にあたるといえます。

2、建設現場の事故における安全配慮義務違反とは?

建設現場においては、複数の業者が関与していることが多いため、事故が起きた際には責任の所在が複雑になることが多いものです。

以下では、下請業者の作業員が労災事故に遭ったケースを前提として、建設現場における責任の所在について解説します。

  1. (1)下請業者の責任

    労働契約法5条では、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と規定されています。このように、使用者は、労働者に対して労働契約上の義務として安全配慮義務を負っているのです。

    たとえば、建設現場などの危険な環境で仕事をさせるときには、危険を防止するための必要な措置や安全対策を講じる義務が課されています。そのため、転落災害や落下災害が生じた原因が下請業者の危険防止措置の不備にあった場合には、下請業者が安全配慮義務違反として損害賠償責任を負うことになります。

  2. (2)元請業者の責任

    元請業者と発注先である下請業者の従業員との間には労働契約関係はありません。したがって、労働契約上の義務としての安全配慮義務を負うことはありません。

    しかし、安全配慮義務とは、直接の労働契約関係がなくても「ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間」において信義則上認められる義務です。したがって、元請業者と下請業者の従業員との間に「特別な社会的接触関係」があるときには、元請業者は、下請業者の従業員に対して、信義則上安全配慮義務を負うことになります。

    下請業者の従業員が元請業者の管理する設備や工具などを使っていたり、あるいは事実上元請業者の指揮監督を受けて働いていたり、作業内容が元請業者の従業員のものと類似していたなどの事情によって、元請業者と下請業者の従業員との間で実質的な使用関係または間接的な指揮命令関係が認められる場合には、作業現場の安全管理を現実にコントロールしていたとして「特別な社会的接触の関係」があると認められる可能性があります。

    したがって、上記のような特別な社会的接触関係がある場合には、元請業者も、下請業者の従業員に対する安全配慮義務違反として損害賠償責任を負うことになります。また、元請業者から事業を請け負った一人親方(労働者ではない個人事業主)についても、「実質的な使用従属関係」があると認められる場合には、元請業者に対して安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求をすることが可能となります。

    また、元請業者の従業員の過失が原因で下請業者の従業員が事故にあった場合であれば、民法715条1項に基づいて、元請会社に対して「使用者責任」を追及することも可能です。

  3. (3)発注者の責任

    発注者についても、労働契約関係のない下請業者の従業員に対しては、労働契約上の義務として、直ちに安全配慮義務が発生するものではありません。しかし、元請業者と同様に特別な社会的接触関係があるときには、信義則上安全配慮義務を負うことになりますので、この場合には、安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求をすることが可能になるのです。

3、責任者に請求できる損害賠償とは?

労災事故に関して責任のある事業者に対しては、どのような損害賠償を請求することができるのでしょうか。以下では、損害賠償の内訳と損害賠償を請求する方法について、解説いたします。

  1. (1)損害賠償請求をする理由

    建設現場の事故で労災認定を受けた労働者は、労災保険から一定の補償を受けることができます。

    しかし、労災保険からの補償には、慰謝料や休業損害の一部などが含まれていないため、労災保険からの補償のみでは、被災労働者の被った損害のすべてについて補填されません。特に、建設現場の事故では土砂の崩壊や高所からの落下などで重傷となる可能性が高いため、労災保険からの補償のみでは実際に発生した損害を補填するのには足りないケースが多くあります。

    そのため、自身に生じた損害をしっかりと補填するためには、労災保険からの補償のみでは不足する部分について、責任のある事業者に対して損害賠償請求をしていくことが必要になるのです。

  2. (2)損害賠償の内訳

    ① 積極損害
    積極損害には、治療費、入院雑費、通院交通費などが挙げられます。後述する逸失利益とは異なり、現実に支出すべき損害のことをいいます。

    ② 逸失利益、死亡逸失利益
    逸失利益とは、労働災害の結果として障害が残ったときや死亡した場合に、将来得られるはずであった収入の減収分をいいます。逸失利益については、労災保険において障害補償給付または遺族補償給付によって補償されることになりますが、補償額は十分なものとはいえません。そのため、労災保険の不足分については、責任のある事業者に対して請求をすることが必要になるのです。

    一般的に、逸失利益の計算方法としては「基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」が用いられます。障害の程度が重ければ重いほど、労働能力喪失率は高くなりますので、逸失利益の額は高額になるのです。
    また、死亡逸失利益の計算方法は「基礎収入額×就労可能年数に対応するライプニッツ係数×(1-生活費控除率)」となります。

    ③ 休業損害
    労災の認定を受けた方は、労災保険から休業補償給付を受けることができます。しかし、休業後3日目までの部分と、4日目以降の給付基礎日額の8割を超える部分については、労災保険による休業補償給付の対象外となります。そのため、責任のある事業者に対しては、労災保険の対象外となった不足分について請求していくことになるのです。

    ④ 慰謝料
    慰謝料とは、「精神的な苦痛」に対する賠償金です。慰謝料は、労災保険からは補償されません。したがって、責任のある事業者に対して請求する必要があります。

  3. (3)損害賠償を請求する方法

    ① 交渉
    労働災害の原因のある事業者に対して損害賠償請求するときには、まずは、事業者と交渉を行うことになります。労働者側としては、労働災害の発生が事業者の安全配慮義務などが原因であることを主張して、それによって被った損害を請求していくことになるのです。

    しかし、建設現場の事故では、責任の所在が複雑となるために、それぞれの事業者が責任逃れの主張をする事態になる可能性もあります。

    そのような場合には、交渉での解決が難しくなる場合もあります。

    ② 労働審判
    「労働審判」とは、労働者と事業主との間の労働関係のトラブルについて、原則として3回以内の期日によって解決を目指す手続きのことです。

    審判は、裁判とは異なり、迅速かつ簡易な手続きで労働問題を解決できることが特徴となっています。

    しかし、労働審判は、「労働契約関係にある、労働者と事業者間のトラブル」のみが対象となります。そのため、労働契約関係のない元請業者や発注者との間のトラブルについては、原則として労働審判では扱うことができないのです。

    これらの事業者に対して責任を追及する場合には、労働審判ではなく、裁判を提起することが必要になります。

    ③ 裁判
    裁判では、労働者側のほうが、事業者側に使用者責任や安全配慮義務違反があったことを主張・立証しなければいけません。事業者に責任が存することを立証できなければ敗訴してしまうことになるため、それらを立証する証拠の有無が勝敗を左右する重要なものとなります。

    建設現場の労災事故については、責任の所在が複雑であり、各事業者の責任を立証することは困難をきわめることが少なくありません。そのため、裁判の手続きをすすめるにあたっては、法律の専門家である弁護士に依頼することが最善であるといえます。

4、建設現場で起きた事故は、弁護士に相談するべき理由

建設現場で労働災害の被害にあわれた方には、以下の理由から、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)労災保険からの補償のみでは不十分な場合も

    先述した通り労災保険からの補償だけでは、労働者が被った損害を補填するものとして十分ではないことが多いです。

    特に建設現場での労災事故では、重度の障害が残るような怪我を負う可能性も高いために、損害額も多額となるケースが多いです。

    そのため、建設現場での労災事故については、責任のある事業主に適切な損害賠償請求をすることが特に重要となります。

    しかし、災害によって生じる損害額は、誰でも一律に計算できるというわけではありません。個々の被害状況や労働状況に応じて算定する必要があり、その計算は複雑なものとなるため、専門知識を持った弁護士によって適切に計算される必要があります。
    また、弁護士に依頼することによって、損害の計算だけでなく、事業者との交渉なども含めてすべてを代理させることが可能になります。したがって、被災労働者としては、治療や再就職先を探すなどの日常生活に専念することができるようになるのです。

  2. (2)建設現場の事故は責任の所在が複雑

    建設現場の労災事故については、複数の事業者が関与することになるため、責任の所在が複雑になります。

    もし雇用関係のある事業者のみに対してすべての損害賠償を請求することができれば、被害者としても、複雑な状況に悩まされることはないでしょう。しかし、雇用関係のある事業者に十分な資力がないような場合には、元請業者や発注者の責任を追及しなければ、損害を十全に回復できなくなるのです。

    そのような場合には、どのような法律構成でどのような事実関係に基づいて損害賠償請求をしていくのかなどの専門的な判断が必要となります。そのため、適切な損害賠償請求をするためには労災分野に詳しい弁護士のサポートが必要となるでしょう。

5、まとめ

建設現場での労災事故においては、重傷を負うケースも多く、通常の労災事故に比べて損害額が高額になる傾向があります。しかし、建設現場での事故は責任の所在が曖昧になりがちであるため、適切な賠償額を獲得するためには、弁護士のサポートを受けて進めることをおすすめします。

建設現場で労災事故の被害に遭われて、お悩みの方は、ベリーベスト法律事務所にお気軽にご相談ください。

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※記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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