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労働災害(労災)コラム

労災保険はパートでも請求できる? 勤務中にケガを負った際の対処法

更新: 2023年10月02日
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労災保険はパートでも請求できる? 勤務中にケガを負った際の対処法

仕事中や通勤中にケガをしたり、病気にかかったりした場合、パートやアルバイトの方でも労災保険給付を申請できます。

会社が労災保険給付の請求に協力してくれない場合もありますが、必要に応じて労働基準監督署などに相談のうえで手続きを進めましょう。

この記事では、パート・アルバイトの方に労災(労働災害)が発生した場合の対処法などを中心に、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、パートなどの非正規雇用でも労災保険は適用される

正社員に限らず、パートやアルバイトなどの非正規雇用の方でも、仕事中や通勤中のケガや病気については、労災保険の適用を受けられます

  1. (1)労災(労働災害)とは?

    「労災(労働災害)」とは、労働者が業務上、または通勤中に負傷し、疾病にかかり、障害を負い、または死亡することをいいます。
    以下は労災(労働災害)に該当する典型例です。

    • 工場で機械に巻き込まれて指を切断した
    • 工事現場で高所作業中に転落して死亡した
    • 他の従業員が操作する機械に巻き込まれて怪我をした
    • 過酷な労働が原因でうつ病をわずらった
    • 通勤中に交通事故に遭ってケガをした
  2. (2)労災保険とは?

    労災(労働災害)による労働者の負傷等に対しては、会社に法的責任(使用者責任・安全配慮義務違反)がある場合には、本来会社が損害賠償を行うべきです。

    しかし、必ずしも会社に法的責任が認められるとは限らないうえ、仮に会社の法的責任が認められても、会社に賠償する資金(資力)がない場合もあります。

    ただし、労災(労働災害)が発生した場合には、被災労働者は労災保険から給付金を受け取ることができます

  3. (3)労災保険は全労働者に適用される

    労災保険は、パート・アルバイトなどを含む全労働者に対して適用されます

    したがって、パート・アルバイトの方が労災(労働災害)に遭った場合にも、正社員と同様に労災保険給付を請求することが可能です。

    なお、法人の代表権・業務執行権を有する役員や、業務委託を受けている個人事業主などは、労災保険の適用対象外となります。

  4. (4)労災保険料は全額会社負担

    労災保険料は、以下の計算式によって求められます。

    労災保険料=従業員の平均給与×従業員数×保険料率


    保険料率は0.25%~8.8%の間で、事業の種類によって異なります(平成30年4月1日以降)。
    (参考:「令和4年度の労災保険率について~令和3年度から変更ありません~」(厚生労働省)

    労使折半の健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料とは異なり、労災保険料は事業者の全額負担です。

2、労災保険の補償対象となる業務災害・通勤災害とは?

労災保険による補償の対象は、「業務災害」と「通勤災害」の2種類です。

  1. (1)業務災害とは?

    「業務災害」とは、労働者の業務上の負傷、疾病、障害、または死亡のことをいいます。

    業務災害の認定には、「業務遂行性」と「業務起因性」の二つの要件を満たすことが必要です。

    ① 業務遂行性
    労働者が使用者の支配下にある状態で、負傷等が生じたことを意味します。
    オフィスや現場での勤務中であれば、基本的に「業務遂行性」が認められます。
    また在宅勤務中でも、勤務時間中の負傷等であれば、業務遂行性が認められるケースが多いでしょう。

    ② 業務起因性
    業務と負傷等との間に、合理的な因果関係があることを意味します。
    仕事、つまり業務そのものが原因で負傷や病気等が発生した場合には、基本的に業務起因性が認められます。
    これに対して、仕事とは全く関係がない原因(同僚とのケンカなど)により負傷等を生じた場合には、業務起因性が認められません。
  2. (2)通勤災害とは?

    「通勤災害」とは、通勤中に労働者が被った負傷、疾病、障害、または死亡のことをいいます。

    「通勤」とは、合理的な(会社に申請している)経路・方法等による通勤や出張移動などを意味し、それを外れると、原則として通勤災害が認められなくなります。
    具体的には、以下の①~④の要件をすべて満たすことが、通勤災害の認定を受けるために必要です。

    ① 以下のいずれかの移動中に負傷等が生じたこと
    • 住居と就業場所の間の往復
    • 就業場所からほかの就業場所への移動
    • 単身赴任先住居と帰省先住居の間の往復

    ② ①の移動が、業務と密接に関連していること(以下の要件を満たすこと)
    • (a)「住居と就業場所の間の往復」「就業場所から他の就業場所への移動」
      →被災当日の就業が予定されていたこと、または現実に就業したこと
    • (b)「単身赴任先住居と帰省先住居の間の移動」
      →就業日の前日、当日または翌日の移動であること

    ③ 合理的な経路・方法による移動であること(寄り道や遠回りは原則認められない)

    ④ 移動が業務の性質を有するものでないこと(移動が業務の性質を有する場合は「業務災害」に当たる)

3、労働災害が発生した場合の対応手順

労働者の方が労働災害に遭った場合には、速やかに医療機関で治療を受けるとともに、会社に対して労災の事実を報告し、労災保険給付の申請に備えましょう。

  1. (1)医療機関で治療を受ける

    まずはケガや病気を治すことが先決ですので、医療機関で診察・治療を受けましょう。

    なお、労災保険の適用を考えると、「労災保険指定医療機関」を受診することをおすすめします。
    労災保険指定医療機関での治療費は、医療機関の窓口で手続きをすれば、立て替えも含めて自己負担が一切発生しません(それ以外の医療機関の場合、いったん治療費を立て替える必要があります)。

    労災保険指定医療機関については、以下の厚生労働省ホームページ(HP)から検索できます。
    (参考:「労災保険指定医療機関検索」(厚生労働省)

  2. (2)会社に労災の事実を報告する

    労働災害に遭ってしまうと、ケガや病気の治療などのために、仕事を休まなければいけないことがあります。そのため、労働災害によってケガをした・病気にかかったこと場合には、必ず会社に報告しましょう

    後に労災保険給付の請求を行う際に、会社の協力を得るためにも、早めに報告することが肝心です。

  3. (3)労災保険給付の請求を行う

    ケガや病気の治療が一段落したところで、「労災保険給付の請求」を行いましょう。
    請求先は、被災労働者が所属する事業場の所在地を管轄する労働基準監督署です。

    請求できる労災保険給付には、以下の種類があります。

    ① 療養(補償)給付
    治療費・入院費など、治療にかかった医療費の実費が補償されます(労災保険指定医療機関での無償治療も、療養(補償)給付の一種です)。

    ② 休業(補償)給付
    病気やケガが原因で休業した期間につき、休業4日目から平均賃金の合計8割が補償されます。

    ③ 障害(補償)給付
    病気やケガが治りきらずに後遺症が残った場合、症状に応じて認定される「障害等級」に応じて給付されます。
    (参考:「障害等級表」(厚生労働省)

    ④ 遺族(補償)年金
    被災労働者が死亡した場合に、遺族に対して給付されます。

    ⑤ 葬祭料・葬祭給付
    被災労働者が死亡した場合に、葬儀費用の補塡(ほてん)として給付されます。

    ⑥ 傷病(補償)年金
    障害等級第3級以上に該当するケガや病気が、1年6か月以上治らない場合に支給されます。

    ⑦ 介護(補償)給付
    障害等級第1級または第2級に該当する精神・神経障害または腹膜部臓器の障害が残り、要介護となった場合に、介護費用として給付されます。


    請求書類は以下のページからダウンロードできますので、該当する給付に関する様式にそって作成してください。
    (参考:「労災保険給付関係請求書等ダウンロード」(厚生労働省)

4、会社の「労災隠し」に遭ったらどうする?

正式な手続きを踏んだ上で、労災保険給付を請求しようとしても、会社が労災の事実を隠そうとし、書類の準備に協力しなかったり、給付請求を止めさせようとしたりするケースがあります。

会社がこのような「労災隠し」を行った場合、労働者はどのように対処すべきでしょうか。

  1. (1)「労災隠し」とは?

    社内で労働災害が発生した場合、会社は労働基準監督署長に対して「労働者死傷病報告」を提出して、その事実を報告しなければなりません(労働安全衛生法第100条第1項、同施行規則第97条第1項)。

    しかし、労災保険料の上昇や労働基準監督署の調査を恐れて、会社が労災の事実を隠匿しようとすることがあります。

    これが「労災隠し」です。

  2. (2)労災隠しへの対処法

    会社により「労災隠し」が行われた場合でも、労働者の方は構わず労働基準監督署に相談して、労災保険給付の請求を行いましょう。

    請求書類の中で、会社の協力を得られなければ記載できない項目も存在しますが、いずれも以下のとおり、代替的な方法が用意されています。

    労働保険番号:公共職業安定所(ハローワーク)に調べてもらう
    事業主の証明:「会社の協力が得られなかった」旨の書面および医師の診断書を添付する


    また、万が一会社が労災保険に未加入の場合でも、労働者は労災保険給付を受けることが可能です(労災保険料は、後から会社に対して請求されます)。

    労災保険給付の申請を阻止しようとする会社の圧力に屈することなく、正当な補償を受けるため、堂々と労災保険給付を請求してください。

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5、まとめ

労災保険給付は、パート・アルバイトの方でも請求できます。

会社が非協力的なケースもありますが、労働者の正当な権利として、業務上・通勤中のケガや病気になった場合には、躊躇することなく労災保険給付を請求してください
請求についてわからないことがあれば、労働基準監督署に相談してみましょう。

さらに、会社側に労災発生の責任がある場合には、労災保険給付とは別に、会社に対して慰謝料等を請求できる可能性があります

ベリーベスト法律事務所では、労働問題の対応経験豊富なチームが、会社に対する損害賠償請求などをサポートいたします。
パートやアルバイトで労災によるケガや病気にお悩みの方は、お早めにベリーベスト法律事務所にご相談ください。

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※記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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