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労働災害(労災)コラム

仕事中の事故で意識不明に! 入院費は補償される? 労災のルールを解説

更新:2024年08月21日
公開:2022年09月29日
  • 意識不明
  • 入院費
仕事中の事故で意識不明に! 入院費は補償される? 労災のルールを解説

労働災害によって脳などに深刻なダメージが発生し、意識不明の状態となった場合、ご家族の方は精神的・肉体的・経済的に大きな負担を抱えてしまうでしょう。

被災労働者(患者)ご本人は治療に、ご家族は介護などに注力する中で、入院医療費などの出費についてもケアしておく必要があります。特に意識不明の場合は働けなくなってしまうため、回復するまでに必要となる資金を確保しなければなりません。

労働災害によって意識不明になった場合、労災保険給付の申請や、会社に対する損害賠償請求によって、生活資金を確保することが可能です。

この記事では、労災で意識不明になった場合において、被災労働者が受けられる補償の内容を中心に、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、意識不明状態が続く場合に発生する労災関係の手続き

業務中または通勤中の事故によって意識不明状態になってしまった場合、労災保険給付の対象となります。

労災保険とは、一般的な健康保険制度とは別に、労働災害に遭った労働者の損害を補償するために設けられている保険制度です。

もし労災によって意識不明状態になってしまったら、以下の手続きに沿って労災保険給付の申請を行いましょう。

● 成年後見人選任の申し立て
意識不明状態の方は、ご自身で労災保険給付の申請を行うことができません。
そこで、ご本人を代理して法律行為をする「成年後見人」の選任を家庭裁判所に申し立てましょう(民法第7条)。

家庭裁判所により後見開始の審判がなされた場合、それ以降は成年後見人がご本人に代わって、労災保険給付の申請手続きを行えるようになります。

● 労働基準監督署に対する労災申請
被災労働者は、所属する事業場の所在地を管轄する労働基準監督署に申請を行うことで、労災保険給付を受給することができます。

労働基準監督署の所在地は、厚生労働省や各都道府県の労働局のホームページで確認してください。

(参考:「都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧」(厚生労働省)
(参考:「労働基準監督署の管轄地域と所在地一覧」(東京労働局)

また、労災保険給付の申請書様式と記載例は、以下の厚生労働省のホームページから確認できます。
(参考:「労災保険給付関係請求書等ダウンロード」(厚生労働省)

申請書の作成方法などに不安がある場合には、管轄の労働基準監督署にアドバイスを求めてみましょう。

● 労災認定・労災保険給付の開始
労災保険給付の申請を受理した労働基準監督署は、労災の事実および内容について審査を行い、労災の認定を行います。

労災認定の結果に従い、被災労働者は各種の労災保険給付を受給することができます。

2、意識不明時に生じる損害をカバーできる労災保険給付の内容

労災によって意識不明状態に陥った場合、治療費の支出や働けなくなることなどによって、被災労働者にはさまざまな損害が発生します。

意識不明となった被災労働者の損害を穴埋めするために、以下の通り労災保険給付が用意されています。
それぞれの給付要件をチェックして、漏れのない給付申請を行いましょう。

① 療養(補償)給付
「療養(補償)給付」は、労災による疾病などの治療にかかった実費を穴埋めするものです。

労災保険指定医療機関を受診すれば、入院費を含めた医療費・療養費が無料になります
(参考:「労災保険指定医療機関検索」(厚生労働省)

また、それ以外の医療機関を受診した場合にも、後日労働基準監督署に療養(補償)給付の申請を行えば、支払った費用相当額の給付が受けられます。

② 休業(補償)給付
「休業(補償)給付」は、労災によって意識不明となり働けなくなった場合に、休業4日目から支給されます

なお、意識不明状態が1年6か月以上継続し、後述する「傷病(補償)給付」の給付要件を満たす場合には、傷病(補償)給付に切り替えられます。

③ 障害(補償)給付
「障害(補償)給付」は、労災に起因する病気やケガが治りきらず、一定の症状が残った場合に支給されます。

意識不明状態が継続している場合、「第1級第3号」の障害等級に該当し、年金や一時金の給付対象となる可能性があります

④ 傷病(補償)給付
「傷病(補償)給付」は、第3級以上の障害等級に該当する重い傷病などが、1年6か月以上完治していない場合に支給されます

意識不明状態が症状固定されていれば「障害(補償)給付」、依然として治療が継続中であれば「傷病(補償)給付」というように区別がされています。

⑤ 介護(補償)給付
「介護(補償)給付」は、第1級または第2級の精神・神経障害または腹膜部臓器の障害がある被災労働者が、要介護状態の場合に毎月支給されます

被災労働者が意識不明状態の場合、要介護であることが通常なので、介護(補償)給付を受給できる可能性は高いです。

⑥ 慰謝料は労災保険で穴埋めされないことに注意
上記のように、労災保険給付によってさまざまな損害の穴埋めを受けることができますが、精神的損害に当たる「慰謝料」については、補償の対象外とされていることに注意が必要です。

被災労働者が精神的損害の補償を受けるためには、会社に対する損害賠償請求を行う必要があります

3、労災で意識不明になった場合に、会社に生じる責任とは?

慰謝料をはじめとして、労災によって被災労働者に生じた損害の中には、労災保険給付によっては補償されないものがあります。
その場合には、不足分を会社に対して請求できます。

会社に対して、労災に関する損害賠償を請求するための根拠としては、「安全配慮義務違反」と「使用者責任」の2つが考えられます。

① 安全配慮義務違反
使用者は、労働者が生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるように、必要な配慮をする義務を負っています(労働契約法第5条)。

使用者が安全配慮義務を尽くさなかった結果、労災が発生して意識不明となった場合には、被災労働者は使用者に対して、債務不履行(民法第415条第1項)又は不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償を請求できます。

② 使用者責任
他の従業員のミスによって労災が発生した場合、行為者である従業員とともに、使用者も「使用者責任」を負担します(民法第715条第1項)。

この場合、被災労働者は会社に対して、使用者責任に基づく損害賠償を請求できます。

4、労災により意識不明になったら弁護士に相談を

労災により意識不明となった場合、発生している損害の額がかなり大きくなることが予想されます。
正当な補償を受けるためには、弁護士にご相談のうえで対応することをおすすめいたします

労災に関する対応を弁護士に依頼するメリットは、以下のとおりです。

  1. (1)会社との交渉の代理を依頼できる

    意識不明となった被災労働者の方の介護などをしながら、会社との損害賠償に関するやり取りや交渉を行うのは、心身ともに大きな負担となってしまいます。

    弁護士には、会社とのやり取りや交渉を全面的に依頼できるので、被災労働者のご家族のご負担は大きく軽減されるでしょう。

  2. (2)法的根拠に基づいた正当な損害賠償を請求できる

    会社に対し労災に関する損害賠償を請求するためには、安全配慮義務違反または使用者責任を基礎づける事実や証拠を主張する必要があります。

    弁護士に依頼をすれば、会社に対する主張の構成や必要となる証拠の収集などについて、法的な観点からアドバイスを受けられます
    その結果として、正当な金額による損害賠償を受けられる可能性が高まるでしょう。

  3. (3)労災申請の結果に対する不服申し立てもサポート可能

    労災保険給付の申請が認められなかった場合、都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官に対して審査請求を行うことができます。

    もし労災保険給付に関する審査結果に不服がある場合には、弁護士が改めて資料を確認したうえで、審査請求のサポートを行います

5、まとめ

労働災害によって意識不明に陥ってしまった場合、ご家族の方の精神的なご負担は計り知れません。

意識不明状態から回復するまでの間、経済的な不安を少しでも解消するために、まず労災保険給付の申請をご検討ください。
労災保険給付にはさまざまな種類があり、労災に関連して生じた損害の多くが、いずれかの給付によって穴埋めされます。

それに加えて、被災労働者やご家族の精神的損害を穴埋めする慰謝料や、その他労災保険給付ではカバーしきれない損害については、会社に対して損害賠償を請求しましょう。

ベリーベスト法律事務所は、被災労働者やご家族のご不安・ご負担を和らげるため、会社に対する損害賠償請求を全面的にサポートいたします

業務中・通勤中の事故により、ご家族が意識不明状態に陥ってしまった場合には、お早めにベリーベスト法律事務所にご相談ください。

この記事の監修者
外口 孝久
外口 孝久
プロフィール
外口 孝久
プロフィール
ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士
所属 : 第一東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 49321

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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