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労働災害(労災)コラム

墜落・転落災害による労災申請や会社に対する損害賠償請求について

更新: 2023年09月28日
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墜落・転落災害による労災申請や会社に対する損害賠償請求について

建設業の工事現場などでの墜落・転落は、労働災害(労災)の原因となりやすい事故類型の一つであり、死亡災害に発展してしまうこともあります。

墜落・転落によって労災が発生した場合、労災保険給付を申請するほか、会社に対する損害賠償請求も併せて検討しましょう。

この記事では、墜落災害・転落災害が発生した際の労災申請、および会社に対する損害賠償請求について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、労災の原因で転倒の次に多いのが「墜落・転落」

労働災害(労災)とは、業務上または通勤中に労働者が負傷し、または疾病にかかることをいいます。

特に工事現場などでの危険な作業中は「墜落・転落」が発生しやすく、実際にも数多くの「墜落・転落」による労災が発生しています。

  • 墜落:身体が完全に宙に浮いた状態で落下すること
  • 転落:階段や坂などに接しながら落ちること


  1. (1)令和2年の墜落・転落による労災は20,977件

    厚生労働省の統計によると、令和2年(2020年)における「墜落・転落」を原因として労働災害の発生件数は20,977件でした。
    「墜落・転落」による労働災害は、同年中の全労働災害件数131,156件に対して約16.0%を占め、「転倒」(30,929件)に続いて2番目に多い事故類型となっています。

    (出典:「「労働者死傷病報告」による死傷災害発生状況(令和2年確定値)」(厚生労働省)

  2. (2)よくある墜落・転落の事例

    墜落・転落事故は、典型的には高所における作業中に発生します。

    • 屋根の上での作業中に、足場を踏み外して墜落、転落した。
    • 脚立の上での作業中に、脚立が倒れて墜落、転落した。
    • トラックの積み荷を整理している最中に、積み荷の崩落に巻き込まれて墜落、転落した。


    また、階段を移動している最中も、墜落・転落事故が発生しやすい場面と言えるでしょう。

    • 書類をチェックしながら階段を降りている際に、足を踏み外して転落した。
    • 多くの商品を抱えながら店舗の階段を降りようとした際に、バランスを崩して転落した。

2、墜落・転落災害の労災認定について

業務中の墜落・転落災害について、「業務起因性」と「業務遂行性」の2つの要件が認められれば、労災認定が行われ、「労災保険給付」が受給できるようになります。

  1. (1)「業務起因性」と「業務遂行性」

    「業務起因性」とは、負傷や疾病が業務を原因として発生したことをいいます。
    「業務遂行性」とは、労働者が使用者の指揮命令下にある状態で、負傷や疾病が発生したことをいいます。

    仕事における作業中や移動中に発生した墜落・転落事故であれば、基本的には問題なく、業務起因性と業務遂行性の両方が認められるでしょう。

  2. (2)墜落・転落災害で受給できる労災保険給付の種類

    墜落・転落によって労災が発生した場合、状況に応じて以下のような労災保険給付を受給できます。

    ① 療養(補償)給付
    入通院費・治療費など、医療機関に支払うべき費用の実額が補償されます。

    ② 休業(補償)給付
    労災に当たる病気やケガを理由として仕事を休んだ場合、4日目以降の休業に対して、トータルで平均賃金の80%が補償されます。

    ③ 障害(補償)給付
    労災による負傷や疾病が治りきらず、残った障害に対して障害等級の認定が行われた場合、等級に応じて給付が行われます。
    詳しくは後述します。

    ④ 遺族(補償)給付
    労災に当たる病気やケガによって被災労働者が亡くなった場合、遺族の生活保障などを目的として一定の給付が行われます。

    ⑤ 葬祭料・葬祭給付
    労災に当たる病気やケガによって被災労働者が亡くなった場合、葬儀費用を補填する目的で一定の給付が行われます。

    ⑥ 傷病(補償)給付
    労災によって生じた障害等級第3級以上に当たる重度の病気やケガが、1年6か月以上治らずに残っている場合に支給されます。
    なお、症状固定後は「障害(補償)給付」へと移行します(症状固定については後述)。

    ⑦ 介護(補償)給付
    第1級または第2級の障害等級に該当する精神・神経障害または腹膜部臓器の障害によって、被災労働者が要介護の状態になった場合、介護費用を補填する目的で毎月支給されます。
  3. (3)労災申請の手順

    労災申請の基本的な流れは、以下のとおりです。

    ① 労働基準監督署に申請書を提出する
    以下の厚生労働省のホームページに掲載されている様式を用いて申請書を作成し、事業場を管轄する労働基準監督署に提出します。
    (参考:「労災保険給付関係請求書等ダウンロード」(厚生労働省)

    ② 労働基準監督署による調査
    業務起因性および業務遂行性の要件を満たしているかどうか、ならびに負傷や疾病の状況について調査が行われます。
    調査の過程で、申請者や職場などに対して、追加で書類の提出などが要請されるケースもあります。

    ③ 労災保険給付の支給決定・支払い
    労働基準監督署による調査の結果、労災が認定されれば、認定内容に従って労災保険給付が行われます。

3、墜落・転落災害で後遺症(後遺障害)が発生してしまったら?

墜落・転落災害による負傷は重症化することも多く、場合によっては完治せずに一定の障害が残ってしまうこともあります。

その場合は、労災保険給付の一つである「障害(補償)給付」を申請しましょう。

  1. (1)障害(補償)給付とは?

    「障害(補償)給付」とは、労災を原因とする障害によって失われた労働能力に対応した、将来得られるはずだった収入(逸失利益)を補填するための労災保険給付です。

    墜落・転落災害のケースでは、身体のまひなどの重篤な障害が発生することも多く、その場合には高額の障害(補償)給付が支給されます。

  2. (2)障害(補償)給付は「症状固定」後に申請する

    障害(補償)給付を申請する際には、事前に医師によって「症状固定」の診断が行われていることが必要です。

    症状固定とは、「これ以上治療しても症状が改善しない状態」を意味し、医師が判断を行います。
    もし墜落・転落災害によってケガをした場合には、受傷後から症状固定の診断が行われるまで、継続的に通院を行いましょう

  3. (3)障害等級について

    労災によって生じた障害の内容や程度に応じて、労働基準監督署により「障害等級」の認定が行われます。
    (参考:「障害等級表」(厚生労働省)

    障害(補償)給付の金額は、認定される障害等級によって、以下のとおり定められています。

    障害等級 障害(補償)給付※1 障害特別支給金 障害特別年金 障害特別一時金
    第1級 給付基礎日額※2の313日分 342万円 算定基礎日額※3の313日分
    第2級 〃277日分 320万円 〃277日分
    第3級 〃245日分 300万円 〃245日分
    第4級 〃213日分 264万円 〃213日分
    第5級 〃184日分 225万円 〃184日分
    第6級 〃156日分 192万円 〃156日分
    第7級 〃131日分 159万円 〃131日分
    第8級 〃503日分 65万円 算定基礎日額※3の503日分
    第9級 〃391日分 50万円 〃391日分
    第10級 〃302日分 39万円 〃302日分
    第11級 〃223日分 29万円 〃223日分
    第12級 〃156日分 20万円 〃156日分
    第13級 〃101日分 14万円 〃101日分
    第14級 〃56日分 8万円 〃56日分

    • ※1:第1級から第7級までは年金、第8級から第14級までは一時金
    • ※2:原則として労働基準法上の平均賃金に相当する額
    • ※3:労災発生前1年間における、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金の総額

4、墜落・転落災害に遭った場合、会社への損害賠償請求は可能?

労災発生について会社に責任が認められる場合には、会社に対して損害賠償を請求できます
精神的損害を補填する「慰謝料」は労災保険給付の対象外であるため、会社に対する請求が慰謝料を得る唯一の手段となります。また、その他にも労災保険では補填しきれない損害もあるため、これらを会社に対して請求すべきこととなります。

会社に対する損害賠償請求の法的根拠は、「安全配慮義務違反」と「使用者責任」の2つです。

① 安全配慮義務違反
使用者は、労働者が生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるように配慮すべき義務を負っています(労働契約法第5条)。
たとえば高所の作業であれば、墜落防止・転落防止用の安全対策として、墜落制止用器具(安全帯など)を準備し、装着方法を適切に指導することは、使用者の安全配慮義務の一環といえるでしょう。
もし会社が、労働災害防止のための安全配慮義務を怠った結果として、墜落・転落災害が発生したといえる場合には、会社に対して損害賠償を請求できます。

② 使用者責任
同僚の従業員のミスなどによって墜落・転落災害に巻き込まれた場合、その従業員の使用者である会社も、被災労働者に対して「使用者責任」(民法第715条第1項)を負います。この場合でも、会社に対して損害賠償を請求できます。


会社への損害賠償請求を行う際には、会社の責任を基礎づける事実について、証拠による裏付けをする必要があります。
会社との交渉や裁判所における手続きを進める際には、弁護士に相談することで負担軽減につながりますので、お早めに弁護士までご相談ください

5、まとめ

墜落・転落災害のケースでは、被災労働者が重傷を負い、または亡くなってしまうこともあります。
そのため、労災保険給付や会社からの損害賠償を通じて、ご家族の方を含めた生活保障が速やかに実現されなければなりません。

もし墜落・転落災害に巻き込まれてしまった場合には、お早めにベリーベスト法律事務所までご相談ください。
ご本人やご家族のご状況に合わせて、適切な対応策をアドバイスいたします。

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※記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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