ベリーベスト法律事務所
労働災害(労災)コラム

アルバイトで労災にあった場合、保険は使える? 労働者のとるべき対応

更新:2024年05月09日
公開:2023年01月10日
  • 労災
  • アルバイト
アルバイトで労災にあった場合、保険は使える? 労働者のとるべき対応

労働者のなかには、正社員以外にも、アルバイト、パート、契約社員といった「非正規雇用労働者」がいます。

仕事をしていると、業務中にケガをしたり、業務が原因で病気に罹患したりすることがあります。仕事が原因のケガや病気は「労働災害(労災)」と呼ばれます。正社員の場合には、労災保険によって補償を受けることができます。では、アルバイトが労災にあった場合には、労災保険から補償を受けることができるのでしょうか?

本記事では、アルバイト労働者と労災保険の関係についてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、アルバイトでも「労災」の被害にあう可能性はある

「労災」とは労働災害の略語です。アルバイトであっても労災被害にあう可能性はあります。まず、労働災害の種類や定義から解説します。

  1. (1)労働災害とは

    労働災害とは、業務中や通勤中の出来事が原因となって、労働者が負傷、疾病、障害、死亡することをいいます。
    労働災害によって傷病を負った労働者は、労働基準監督署から「労災認定」を受けることによって、労災保険からさまざまな保険給付を受けることができます。
    なお、労災保険は、個々の労働者が加入するものではなく、労働者を雇用する事業主に加入が義務付けられているものです。労災保険料も、事業主が全額を負担します。

  2. (2)労働災害の種類

    労働災害には、「業務災害」と「通勤災害」の2種類があります。

    ① 業務災害
    業務災害とは、業務上の出来事が原因となって負傷・疾病・障害を負ったり、死亡したりすることをいいます。業務災害を原因として労災保険給付を受けるためには、「業務遂行性」と「業務起因性」という2つの要件を満たす必要があります。
    業務災害の例としては、アルバイトが品出し中に脚立から転落してケガをした場合や、工場の機械に腕を挟まれて障害が残ったような場合があります。

    ② 通勤災害
    通勤災害とは、通勤中の出来事が原因となって負傷・疾病・障害を負ったり、死亡したりすることをいいます。
    通勤災害の例としては、「通勤途中に交通事故に巻き込まれる」というものが典型的なケースとなります。
    なお、通勤災害として認定されるためには、「合理的な経路および方法によって移動している際に、災害にあった」ということが要件となります。したがって、たとえば「職場からの帰宅中に私用で居酒屋に寄った後に、災害にあった」という場合には、通勤災害とは認められません。

2、アルバイトでも労災保険は使える

アルバイト労働者でも労災保険が適用されるのかどうかについて、解説します。

  1. (1)アルバイト労働者も労災保険の適用対象

    労災保険は、事業に従事する労働者に適用される保険です。ここでいう「労働者」とは、事業に使用されて、賃金を支払われている者のことをいいます。そのため、正社員以外のみならず、アルバイト、パート、契約社員といった非正規労働者に対しても労災保険は適用されることになるのです。
    また、労災保険は、労働形態によって給付内容を区別していません。したがって、アルバイト労働者であっても、正社員と同様の給付を受けることができます

  2. (2)労災保険と「雇用保険・健康保険・社会保険」の違い

    公的保険制度としては、労災保険以外にも雇用保険、健康保険、社会保険などがあります。以下では、労災保険以外の各保険の内容と、労災保険との違いについて説明します。

    ① 雇用保険
    雇用保険とは、労働者が失業した場合などに、労働者の生活や雇用の安定を図り、早期に再就職を目指すことを目的とした保険です。
    雇用保険の代表的な給付内容としては、「基本手当」の支給があります。これは、一般的には、「失業手当」と呼ばれるものであり、雇用保険の被保険者期間や離職理由などによって支給額が異なります。基本手当が支給される目的は、「労働者が、失業後の生活費の不安なく再就職を目指すことを可能にすること」です。

    雇用保険は、失業後の補償を主な内容としています。したがって、失業者の生活の保護と再就職の促進を目的としているという点で、労災保険とは異なっています。

    ② 健康保険
    健康保険とは、病気、ケガまたはそれらによる休業などが生じた場合に利用することができる、公的医療保険制度です。
    ケガをしたときに病院の窓口で健康保険証を提示して、治療費の支払いが自己負担分のみで済んでいるのは、この健康保険を利用しているからです。

    健康保険の対象は、私生活における病気やケガなどです。一方で、労災保険は、仕事中や通勤中の病気やケガを対象としています。そのため、健康保険と労災保険では、保険が適用される場面が異なってきます。

    ③ 社会保険
    社会保険とは、健康保険、介護保険、厚生年金保険をまとめた総称です。これに対して、雇用保険と労災保険をまとめた総称が、労働保険です。社会保険と労働保険(労災保険)の違いは、分類の枠組みの違いとなります。

3、労災保険から支払われる補償の種類は?

労働基準監督署による労災認定を受けることによって、労災保険から以下の保険金が給付されることになります。

  1. (1)療養(補償)給付

    療養(補償)給付とは、労働者が労働災害により傷病を負ったときに、無償で治療を受けることができる制度です。労災指定病院で治療を受けた場合には、窓口での治療費の支払いは不要になります。
    一方で、労災指定病院でなかった場合には、通常、一旦は労働者が治療費を支払い、後日に労災保険から立て替えた分の支払いを受けることになります。

  2. (2)休業(補償)給付

    労働災害によって仕事を休んだ場合には、休業4日目から休業1日につき、給付基礎日額の60%相当額の金額を休業(補償)給付として受けることができます。また、このほかにも給付基礎日額の20%が特別支給金として支給されることになりますので、合計80%の収入が補償されます
    なお、給付基礎日額とは、労働災害の発生日以前の3か月間の賃金総額を、その期間の総日数で除した金額です。

  3. (3)障害(補償)給付

    障害(補償)給付とは、労働災害によって障害が残った場合に、障害(補償)年金または障害(補償)一時金を受けることができる制度です。
    給付内容が年金になるか一時金になるかは、障害の内容・程度によって異なり、後遺障害等級が第1~7級のときは年金が支給され、第8~14級のときは一時金が支給されます。

  4. (4)遺族(補償)給付

    遺族(補償)給付は、被災労働者が死亡した場合に、該当する遺族に対して、遺族(補償)年金または遺族(補償)一時金が支払われる制度です。
    遺族(補償)年金の対象となる遺族は、労働者の死亡当時、労働者の収入で生計を維持していた遺族ですが、対象となる遺族がいない場合には、一定の遺族に遺族(補償)一時金が支給されます。

  5. (5)傷病(補償)年金

    労働災害で負った傷病が療養開始後1年6か月を経過しても治癒しない場合、一定の重い傷病については、傷病等級に応じて、傷病(補償)年金が支給されます。

  6. (6)介護(補償)給付

    現に介護を受けており、傷病(補償)年金または障害(補償)年金を受給している場合には、介護(補償)給付が支給されます。

4、アルバイト労働者が労災保険からの給付を受け取るためにするべきことは?

業務中または通勤中に傷病を負ったとしても、それだけでは、労災保険からの給付を受けることはできません。
アルバイト労働者が労災保険から給付を受けるためには、以下の手続きが必要になります。

  1. (1)労働基準監督署に労災申請をする

    労災保険から給付を受けるためには、労働基準監督署に労災申請を行い、労災認定を受ける必要があります。労災申請は、一般的には、労働者自身の負担を軽減するために、労働者を雇用する事業主が代わりに行ってくれます。まずは、職場の担当者などに労災申請をお願いしてみるとよいでしょう。

    もっとも、会社が「アルバイトには労災が適用されない」などと言って、どうしても労災申請を行ってくれないというケースもあります。このような場合には、労働者の側から積極的に働きかけてみることが必要になり、労働者自身で、労災申請の手続きをすすめることもできます。労災申請に必要な書類は、労働基準監督署にありますので、労働基準監督署の窓口で書類の記入方法などを相談しながら手続きをすすめるとよいでしょう

  2. (2)労災保険では不十分な場合には会社に損害賠償請求も可能

    労災認定を受けることができた場合には、労災保険からさまざまな保険給付を受けることができます。
    しかし、労災保険からは、精神的苦痛に対する賠償金である慰謝料の支払いはありません。また、障害が残った場合の逸失利益の補償も十分といえないことがあります。そのため、労災保険からの保険給付だけでは、労働者が被った損害に見合わない補償しかなされない可能性が高いのです。

    労災保険による補償では十分でないと考えるなら、労働災害が発生したことについて責任のある会社に対して、損害賠償請求をすることが可能です。
    しかし、法律に関する専門的な知識がなければ、会社に対する損害賠償請求を適切に実施することは困難です。したがって、会社に対して損害賠償請求を検討している方は、早めに弁護士に相談をすることをおすすめします

5、まとめ

アルバイト従業員であっても、労働災害によって病気やケガをした場合には、労災保険から一定の補償を受けることが可能です。
しかし、労災保険からの補償だけでは、被災した労働者が負った損害に対して十分な内容の補償がなされないおそれがあります。

労災保険からの補償が十分でない場合には、会社に対して損害賠償を請求することもできます。その際には、労働問題についての実績豊富なベリーベスト法律事務所までご相談ください。

※記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

同じカテゴリのコラム

労働災害(労災)コラム一覧はこちら