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労働災害(労災)コラム

通勤途中に事故! 労災申請すべき理由と受けられる補償について解説

更新: 2023年10月02日
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通勤途中に事故! 労災申請すべき理由と受けられる補償について解説

通勤途中に交通事故に遭った場合、労災事故にも該当する一方で、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)や加害者の任意保険にも請求が可能となるケースがあります。

軽い事故ならともかく、ケガが重く、後遺障害が残りそうなときには判断に迷うでしょう。

本コラムでは、それぞれの手続きによる補償の違い、労災保険を使うメリットについて弁護士が詳しく解説します。

1、通勤途中に事故に遭ったとき労災保険を使うべき理由

労災保険とは、雇用されている立場の人が、通勤途中や仕事中に起きた事故を原因としてケガをしたり病気になったり、または死亡した場合に保険給付を行う制度です。

労災には業務災害と通勤災害があり、通勤中に発生した交通事故は、通勤災害に該当する可能性が高いでしょう。労災と認定されれば、労災保険を使用できます。

交通事故の場合は、労災保険のほかに加害者が加入している自賠責保険や任意保険も利用できますが、労災保険の適用を積極的に考えるべきです

本章では、通勤中の事故で労災保険を使うメリットを解説します。

  1. (1)休業補償が大きい

    交通事故のケガにより仕事を休んだ場合、労災保険では4日目から基礎日額の6割が支払われます。残りの4割分と、最初の3日分は加害者、または加害者が加入している任意保険会社が負担しますので、労災保険を使用して被害者が損をすることは基本的にありません

    また、労災保険を使用するメリットは、特別支給金という制度によって、さらに基礎日額の2割を加算して受け取れるという点です。
    つまり、労災保険からの休業補償が6割、加害者側から4割、さらに労災保険から特別支給金として2割をもらえるのです。これらを合算すると、被害者は休業補償として12割(120%)を受け取れることになります。

    自賠責や加害者の任意保険だけでは、10割を超える賠償を受け取ることはできないので、労災保険を利用するメリットは大きいでしょう。

  2. (2)後遺障害等級も労災の方が高くなりやすい

    事故のあと、治療をしても何らかの障害が心身に残ってしまう場合があります。その場合、自賠責と労災保険の両方に対して残った後遺障害について、等級の認定を求めることができます。

    労災保険と自賠責を比較すると、労災保険のほうが等級認定は緩やかであるといわれています。同じ障害でも労災保険のほうが高い等級が認められる可能性が高いという意味です。

    認定される等級が高ければ高いほど、受け取れる金額は高くなります。また、休業補償と同じように、障害についても労災保険からは障害特別支給金が加算支給されます。

  3. (3)治療期間の制限が緩やか

    入通院にかかる治療費についても労災保険で負担してもらうことができます。

    一般的な交通事故の場合、治療費は加害者の加入する任意保険会社が負担します。この場合のデメリットは、任意保険会社から、一方的に治療費の一括対応の打ち切りをされてしまうケースがあるという点です。

    治療の期間は被害者と医師が治療の状況を見て判断するべきものです。しかし、任意保険会社としては、早く治療を終えてほしいという思いで、かなり早い段階から治療の打ち切りを打診してきます。そして、医師や患者が治療の継続を希望しても、一方的に治療費の支払いを打ち切ってしまうこともあります。

    労災保険では、医師が治療を必要と判断する限り、一方的に治療費の支払いが打ち切られることは基本的にありません。患者は安心して治療に専念することができる点も大きなメリットといえるでしょう。

2、労災を使うときの手続き方法

  1. (1)労災指定病院で治療を受ける

    通勤中に事故でケガをした場合には、まず医療機関で診察を受けましょう。事故から診断までに時間がたつと、事故とケガとの因果関係が争われることがあります。

    たとえ仕事が忙しくても、早めに病院を受診して、診断を受けることを優先してください。そして、可能な限り診断を受ける病院は、労災指定病院から選ぶことをおすすめします。

    労災指定病院であれば、労災の申請をすると、受診時に窓口で治療費を支払わなくて済むようになるからです。労災指定病院ではない医療機関を受診した場合は、医療費を一旦自分で支払い、あとから労災に対して治療費の請求手続きを行うという手間がかかります。

    なお、労災事故の場合、ご自身が加入している健康保険を使って治療を受けることはできませんので注意しましょう。

  2. (2)労災の申請

    労災の申請は、事故に遭った労働者またはその遺族が会社の所在地を管轄する労働基準監督署長に労災保険給付の支給を申請して行うのが原則です。

    労災保険給付を受けるために提出すべき書類としては、次のようなものがあります。いずれも労働基準監督署の窓口で受け取ることができます。

    ① 治療費を請求する場合
    療養(補償)給付たる療養の給付請求書

    ② 休業補償給付を請求する場合
    休業補償給付支給請求書

    ③ 障害補償給付を申請する場合
    障害補償給付支給請求書


    このほかにも、労災の状況によって提出すべき書類が異なりますので労働基準監督署に確認して進めるようにしましょう。

  3. (3)労働基準監督署による審査

    申請を受けた労働基準監督署では、書類審査と労働者への面談などを経て労災に該当するかどうか、労災保険を支給するかどうか審査します。

  4. (4)労災申請は時効に注意すべき

    労災保険は、一般の請求権に比べると短い期間で時効になってしまいます。時効期間を経過すると請求手続きができなくなりますので、申請手続きは早めに行ってください

    給付申請ごとの時効期間は主に以下の通りです。

    <2年で時効となる手続き>
    • 療養(補償)給付
    • 休業(補償)給付
    • 介護(補償)給付
    • 葬祭料(葬祭給付)および二次健康診断等給付

    <5年で時効となる手続き>
    • 障害(補償)給付
    • 遺族(補償)給付

3、会社の対応や補償内容に納得いかない場合にすべきこと

  1. (1)会社が労災に協力してくれないとき

    労災申請のために労働基準監督署に提出する支給請求書には、事業主の証明欄があります。勤務先で記入してもらう欄があるということです。そして、会社は、被災した従業員から労災の給付手続きに必要な証明を求められた場合には、応じなければならないと定められています。

    しかし、実際には、会社が労災申請に協力してくれない場合があります。会社としては労災事故が起きたこと自体を認めたがらないことがあるのです。このような場合でも、労災の申請ができないわけではありません。

    会社が対応してくれない場合は、ご自身で申請することができますので、労働基準監督署に相談してみましょう。あきらめずに労災申請を行うことが大事です。

  2. (2)労災認定がされなかったとき

    労災申請をしても労働基準監督署に労災として認定されないこともあり得ます。

    その場合は、労働局に「審査請求」ができます。審査請求を希望する場合は、労災保険給付の決定があったことを知った日の翌日から3か月以内に各都道府県労働局に書面を提出する必要があります。

  3. (3)障害等級の認定結果に納得できないとき

    労災事故であること自体は認定を受けられたとしても、その後残った障害についてもスムーズに認定を受けられるとは限りません。予想よりも低い等級しか認定されないこともありますし、そもそも障害認定自体がなされなかったということもあります。

    この場合、その認定結果に対して審査請求で不服を申し立てることができます。ただし、障害等級の認定に対する不服を申し立てる際には、医学的な根拠とともに主張をしっかりと行う必要があります。等級認定に不服がある場合は、弁護士に相談し、等級認定が適したものであるかどうか、アドバイスを求めてから不服申し立てを行うべきか検討することをおすすめします

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4、弁護士に依頼すべきケース

  1. (1)障害が残ったとき

    労災保険が支給されたとしても、被害者に生じたすべての損害が補償されるわけではありません。労災保険で賄えるところはしっかりと賄い、それでも足りないところは、会社側に賠償を求めていくことになります。

    特に、障害が残った場合には、労災保険だけでは十分な補償が得られないケースが多いです。障害等級に見合った賠償を受け取るためには、弁護士に依頼して、会社側への請求を行いましょう

  2. (2)慰謝料を請求したいとき

    労災保険では、慰謝料に相当する補償内容が認められていません。しかし、事故に遭ったことによる精神的な打撃は大きく、慰謝料を請求することは被害者の正当な権利です。

    慰謝料の請求を弁護士に依頼することで、過去の裁判例から導き出された計算方法に基づいた高い水準での賠償請求を行うことが可能となります。慰謝料には、ケガをしたこと自体に関する傷害慰謝料と、障害が残ったことに対する後遺症慰謝料などがあります。

    いずれについても、労災保険だけでは賄うことができませんので、弁護士に依頼して会社側へしっかりと請求すべきです。

  3. (3)事故によるケガや休業を理由に解雇されそうなとき

    労働者が労災により以前と同様には働けない状況になると、そのことを理由に辞めさせようと働きかけてくる会社もあります。通勤災害によって労働者がケガをしたという場合、業務上の負傷ではないので、労働基準法19条の解雇制限には該当しないことが通常です。だからといって、直ちに解雇が認められる場合に当たるわけではありません。

    法律上はそうであっても、実際に労働者自身が会社から退職を迫られた場合、自分でどう対応すればいいのかわからない場合も多いでしょう。しかし、会社からの圧力に屈して自主退職してしまうと、後から後悔することにもなりかねません。

    まずは会社からの退職勧奨に合意してしまう前に、弁護士に相談してください。必要に応じて対応を依頼すれば、法的な根拠に基づいて弁護士が会社と交渉を行います。

5、まとめ

労災で障害が残ると、今後の仕事や生活に不安を感じるものです。労災保険は労働者にとって大切な補償です。多少面倒であってもしっかりと申請を行い、できるだけの補償を受けましょう。

ただし、労災保険だけでは安心できない場合もあります。特に、障害が残る場合には、労災保険以外の賠償についても積極的に検討すべきです。ベリーベスト法律事務所では、労災についての知見が豊富な弁護士が親身になってアドバイスを行います。ぜひ一度ご相談ください。

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※記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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